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――私こそが希望だ。私が作る世界こそが認められる。私が……――
もういい。もういいんだ。疲れただろう、そうやって生きるのは。無理をして手を伸ばし、ひたすらに大人であろうとしたのは。俊哉は声の主に呼びかける。
もしかしたら、世界はあんたみたいな大人たちだけでできているのかもしれない。でもそれじゃあ淋しすぎるだろう。あんたももっと、ありのままに、感じたままに生きていい。
――……母さん?――
誰かの声は、完全に子供の声になって途切れた。俊哉は目を見開く。どちらの照準から聞こえていたのだろう。続きを聞きたいと思った。だがもう聞こえなかった。
一度目を閉じる。思わぬ感情が流れ込んできたことに躊躇する。撃っていいのか。あの声を途切れさせていいのか。
あとはお前次第や、相棒。もう遠くへ行ってしまった〝ライオンハート〟の声が駆け抜けた。自分次第。その言葉をイメージした時、FCSは胴体下のウエポンベイを開いていた。
誰の間にでも、希望は見つけられる。直接顔を見なくたって、信じ合えればその間に希望を見つけることができる。誰だって。おれだけではない。あんたもきっと、誰かとの間に希望を見ていたはずだ。
それを断つ。詫びて済むことではないし、世界を守るためだった、なんて偉そうなことを言うつもりもない。それでもおれは守りたい。帰りたい場所がある。帰っていきたい人々がいる。そういう希望が、おれにはあるんだ。
俊哉の脳を、今の自分を支えてくれている存在たちが埋め尽くす。その中にはもちろん、彼女の姿もあった。
空対艦ミサイルがウエポンベイから離れる音を、俊哉は聞いた。




