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『W.A.R.』  作者: sethy
ENDING
326/332

 まず、撃沈は免れたが大破し、曳航され、大がかりな改修が必要となった原子力空母『ジョージ・ワシントン』。金銭的な面で言えば、米軍の世界戦略を支える屋台骨、海軍第七艦隊の中核的存在であるこの艦の長期戦線離脱が、この損失の大半を占めている。艦船自体の修理費用。ポジションを埋めるための配置転換に伴う費用。新しい人員確保、育成のための人的費用まで考えると、巨額の投資が必要になる。


 もう一つの問題は対中戦略だ。『X計画』の進行中、《X―1》はアメリカの国旗を振りかざして中国空軍の防空戦闘機を撃墜した。それを中国が見過ごすはずがない。撮影された写真と共に、公に遺憾の意が表明され、彼の国内では大規模な反米活動が勃発。人口増大が顕著な東アジアをターゲットに進出していた米企業は大打撃を受けている。このまま開戦やむなし、という気運が高まれば、それを回避することができるのかは微妙だった。


 決していいとは言えない今のアメリカの経済事情で、これらの問題を完璧に補い、事件以前の世界を取り戻すことが可能なのか。そう問われれば、ロバートは首を傾げてしまう。


『X計画』を立案し、実行に移させたDARPA長官や国防総省の一部勢力は、事件の責任を負って処罰された。結局『生まれながらの権力者層』と呼ばれるほんの一握りの上院議員たちにまでは手が及ぶことはなかったが、例え事件を裏で組織したすべての人間が罰せられたとしても、到底補い切ることのできない損失が、世界の盟主を自負する国家に重く圧しかかっていた。この事件を契機に、第二次世界大戦後に形成された世界の勢力図は大きく変化するのかもしれなかった。


 グレイグの言った通りになろうとしていた。彼の望んだ世界かどうかは別として、少なくとも世界の様相は変わりつつあった。


 だが、そんな喧噪もこの部屋には届かない。グレイグは黙ったまま、遠くを見ている。

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