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肋骨の痛みを感じていた。焼けるような痛みだ。
だがそれだけだった。痛みはある一定で抑えられている。それ以上痛むことはなく、またそれ以下になることもなかった。
俊哉は《X―2》の状態に目をやる。その脳の動きに合わせてコクピット画面に表示される自機ステータスは、損傷個所を示す赤い表示が目立っていた。
先ほどの無理な機動が、機体限界を超えていたのだろう。元々発進前から三割減だった機体ステータスは、特に各翼部に損傷個所が見られ、速度限界と機動限界が下方修正されている。
機体も自分も、満身創痍。だがそれを客観視する頭だけが、冷静に働いていた。これからすべきこととできることを検討し、何の問題もない、十分にやれるはずだ、と俊哉は判断を下した。
その瞬間、自機ステータスに〝WARNING〟の文字が重なって表示された。コクピット内部が赤く明滅し、自機ステータスが画面上から消える。入れ替わりで索敵レーダーが展開した。
六機。俊哉はそれだけを確認した。敵機の予想機種、その情報などが、矢継ぎ早に画面を埋めたが、それは必要としなかった。必要ない。そう考えた瞬間、『B・M・I』はその脳波を受け取り、情報を画面から退かせた。
〝ライオンハート〟の気配は、先ほどよりも数が多く感じられた。六機もいればそうなるだろう。レーダーを見る前から感じ取っていた事実に納得し、俊哉はスロットルレバーを押し込むようにイメージした。
左手を乗せたスロットルが自動で動き、機体の速度が上がる。今の限界がどこなのか。俊哉は《X―2》に問いかけながら、その最大値を探してイメージを続けた。
《X―1》を撃墜する直前にあった、世界の動き全てが緩慢に見える感覚は、今はなかった。だが『B・M・I』の動作の良さは、そのまま継続されていた。今は完全にイメージするだけで飛べる。その事実を俊哉は驚きもなく、ただ、受け入れていた。




