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『ジョージ・ワシントン』を発した六機との距離が、急速に近づく。六機すべてから〝ライオンハート〟の気配が放たれているのを、俊哉は感じた。《X―1》と同じ。それが六機いる。そう捉えると、現状はあまりにも絶望的だった。
だが、俊哉は絶望を感じなかった。すべてを諦めたからではない。むしろその逆だった。一片たりとも、まだ間に合うという望みを捨てていないからであり、そして何より、頭蓋に反響し続ける『声』のおかげだった。
『声』と六機から発せられる気配とは、あまりにも対照的だった。同じ人間が発しているはずなのに。
――今のお前になら、できるやろ。おれに勝つぐらい。お前は自信がないだけや。何ごとにも、お前は自信を持ってないし、持とうとしとらんかった。お前は自信を持って行動することを、避けてたんや。他人ともめたないし、波風を立てたない。いっつもそう思っとった。だから夢中になれるもんを見つけて、誰にも負けへん思うても、すぐに自分から折れる。諦めてしまう。そうやって、初めから何もなかったことにする。それがこれまでのお前や。そんな生き方、ばっさりここで捨てたれ。誰に遠慮することなんてない。お前の腕は、おれが保証したる――
これは誰の声なのだろう。俊哉は考えていた。いや、答えはわかっている。あいつの声に間違いない。間違いないのだが、ならば彼は画面越し、回線越しに、これほど自分のことを見抜いていたのだろうか。自分の中に蟠る闇を。
――いいんだよ、お前は、そのままで。感じたままに生きていい――
空虚感。虚脱感。何をやってもそれ以上のものがいて、結局頭打ちになる無為、無駄、無意味。そんなものが自分の脳には纏わりついていた。しかもそれに嫌悪を抱くこともなかった。今、こうして命を懸けられる場を見つけ、そこに挑んだ自分の何が変わったのか。俊哉は自分ではまったくわからずにいた。
だが、俊哉は泣いていた。おれはおれのままでいい。感じたままに生きていい。誰に遠慮することもなく、生きていい。自分の中の闇、空っぽでがらんどうの心の内を言い当てられ、そこに突きつけられたその言葉たちは、これまでに聞いたどんな音の並びよりも、鮮明に、鮮烈に、脳の中に広がっていった。
――自信を持て。お前はグリフィス2。おれの、世界でたった一人の、相棒や――
イントネーションの違いが色濃い、西の訛りが消えていく。代わりに響いたのは、レーダー照射を受けていることを知らせる、警報音だった。




