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「コクピットの改修を終えたホーネットは六機です。すべて離艦させます」
「システム、正常に作動。各機の制御に異常はありません」
『X計画』において、グレイグ・リーの『B・M・I』が選ばれた理由はいくつかある。無人機であること。有人機を上回る空戦機動が可能なこと。そしてそれらに肩を並べる大きな理由の一つが、コストパフォーマンスだった。
ロバート・ウィーヴァーは、新型機へ『W.A.R.』で安価に育てられたパイロットを搭乗させる方向で開発を進めていた。この結果作られたのが、非侵襲式『B・M・I』とコクピット周囲の耐G装甲を強化した《X―2》だ。
これに対し、グレイグ・リー・シェパード博士は、《X―1》という新型機の雛形を作りはしたが、実際にはこの新型機に対する執着を、ほとんど持っていなかった。むしろ中心的に開発したのは、制御する『B・M・I』の方だった。
人の脳がイメージした通りに機体が動く。そのシステムさえ搭載できれば、機体に対するこだわりはなかったのだ。確かに、そのシステムの性質を前提に開発された新型の機体であれば、機体限界も高く、性能を最大限まで引き出すことができる。だが、既存の機体であっても、コクピットに制御装置を載せることさえできれば、無人で飛ばして敵機との空中戦を行うことも、理論上は可能だった。
上層部はこの部分を重く見た。パイロットだけではない。機体さえも安価に抑えられるシステム。しかも人の死なない、ひいては反戦に転ずる国民感情を煽らない、クリーンで、かつ安価に戦争を行えるシステム。それは『生まれながらの権力者層』や国防総省の官僚たちにとって、最高に理想的な兵器だった。
グレイグは、『ジョージ・ワシントン』に乗艦後、すぐに艦載機への『B・M・I』改装作業を行わせていた。これまでに六機が完成し、今、最後の一機が飛行甲板を滑り出していく音が聞こえた。




