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「『ジョージ・ワシントン』から艦載機が次々と発艦しています。《F/A―18》のようです!」
《F/A―18》〝スーパーホーネット〟『ジョージ・ワシントン』の艦載戦闘機。レーダー上に現れ始めた赤い点に添えられた敵機の情報は、確かにそのように表示されていた。
だが、そうではない。ロバートは戦慄する。そして理解した。
これが、『切り札』だ。
「トシヤ、戻れ、戻るんだ!」
『あいつが飛んできた方角に、あいつはいる。……ほら、またきたぞ。今度は多い』
別の戦慄が、ロバートの身体を貫いた。
《F/A―18》の発艦にリンクする言葉。
ロバートの理解を先読みしたかのような言葉。
トシヤは本当に、何かを感じ取っているのか?
《X―1》との戦闘で、彼の身に何があった?
「トシヤ、君は、いったい……」
『ロバート、このコクピットに、何かしたのか』
「何?」
『さっき、一瞬……敵の動きが、異常に遅く感じた。それからいろんな声が……聞こえる。あいつの……声……も』
目の前の視界が、真っ白になった。そんな機能、あるはずがない。トシヤは何を言っている?
性能に制限のある有人機で、勝手気ままに飛びまわる無人機の《X―1》を撃墜した空戦機動。敵の動きが遅く感じられたという状況。そして聞こえるという声。ロバートはそれらの情報を瞬時に繋げ、ある一つの虞に行き当たる。
三度、今度も対象の違う戦慄が、ロバートの肌を粟立たせた。
『あんた以外に、できないんだろう…… 感謝するよ、ロバート。おかげでまだ飛べる。後少し、後、少しなんだ。止めてくるよ、あいつを』
ふいに年相応の、この艦で初めて顔を合わせた時の彼を思い出させる声が響いた。虚を突かれた格好になったロバートは、思考の深みから立ち直るのが遅れた。
「トシヤ!」
冷静さは消し飛んでいた。ロバートは力の限り叫んだ。送信マイクがノイズ音を混じらせる。もしロバートの考えている状態にあるのならば、トシヤは戦闘を行う以前に、もう十分危険な状態にあるのだ。
しかし、通信は途絶えていた。
答えはもう、返らなかった。




