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前進しながらバック転し、目標を飛び越えて背後に占位。戦闘機という物体としての性能的にも、それを操るパイロットの肉体的にも、その他あらゆる面で常識から逸脱した機動を取った《X―2》はしかし、ただそれだけだった。
機体に損傷はなく、パイロットにも問題はない。強い衝撃を受けはしたが、ブラックアウトするには至らなかった。気絶を回避した俊哉はコクピット画面上、逆さに見える《X―1》の排気口に、ロックオンマーカーが重なり、赤い光を放つ瞬間を見た。
攻撃。
そう俊哉がイメージした刹那、《X―2》は動いた。機体をロールさせ、一瞬にして背面飛行から天地を戻すと、機体下部のウエポンベイが扉を開けた。ミサイルをぶら下げたアームが外部へと露出し、そこからAAMが、がこん、という妙に軽い音を残して離れる。直後、自身のロケットモーターに点火したAAMは、白い帯を引きながら《X―1》へと肉薄していった。
『トシヤ! 逃げろ!』
その瞬間、緩慢だった全ての感覚が突然元に戻った。耳を劈くロバートの声がはっきりと聞き取れ、全身を襲う衝撃がそれまでとは比較にならない重さとなって身体に叩きつけられた。うめき声一つ上げられぬほどの重さに押し潰され、全身がぎしぎしと音を立てる。肋骨がみしりと鳴き、あ、折れたな、と俊哉は他人事のようにそれを理解した。頭の血が降下し、意識がゆっくりと闇に閉ざされ始める。
今、意識を失えば、死ぬ。
直感が脳裏を過ぎり、それでも引き戻すには遅すぎた意識を、うっすらとした影のベールが覆い隠した。その瞬間、俊哉は《X―2》から放たれたミサイルが、《X―1》と融合するのを見た。




