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「艦長……?」
二度目の呼びかけであることはわかっていた。
艦のすべての情報が集まるここ、CDC(戦闘指揮所)に詰める士官の一人が、恐る恐る様子を窺っていることもわかっていた。
周囲のすべてを承知の上で、グラントは返答できずにいた。
軍人は、任務に忠実であればいい。
軍人らしい、上意下達の思考だけで言えば、東洋系アメリカ人である〝乗客〟の腹のうちなど、気にする必要はなかった。それが任務である、と言われれば従い、全うする。それが軍人であるということは、一空母の艦長となるまでに、十二分に思い知らされてきたことだ。
だがそれでも、生来の家訓が、血肉となった教えが、この時だけは自分を軍人である前に一人の人間に立ち返らせていた。




