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血脈、という概念を、リチャード・グラント大佐は重視していた。
彼のルーツは英国貴族に行き当たる。アメリカ合衆国がまだ新大陸と呼ばれていた時代、開拓に多額の出資をしていた一族だ。その後、本国で事業に失敗し、没落した一族は新大陸へ渡り、そこで再起を果たした。
イリノイ州に居を構える現在のグラント家は、その土地の名士として知られ、一族のものの多くが政財界へ進出している。アメリカ社会に少なからぬ影響力を持つ、まぎれもない名家であった。
そうした家柄、歴史、血の繋がりがあるからこそ、今の自分があるのだ、とグラントは幼い頃から感じていた。いや、それが家訓だった。父にも母にも、そう教えられて育った。
齢五十を過ぎてなお、その教えはリチャード・グラントという人間性そのものとなって、彼の思考を支えていた。




