第四話 暁の剣、四十二層で詰む
――同じ頃、王都。
「くそっ、探知に反応がない! なんでだ!?」
ゼルガ大迷宮四十二層。暁の剣は、立ち往生していた。ヴェラの探知魔法は罠の「位置」しか分からない。作動条件が分からないのだ。
これまでは、いた。位置が分かれば、あとは全部数えてくれる男が。
「その罠の作動重量は六十キロ。ガルドは装備を外して跳べ」「毒矢の射出は三連、間隔は一・二秒」――思えば、あの声を頼りに歩いてきた。
「リノン、回復薬の残りは」
「あと二本よ! 誰かさんが管理してた頃は、切らしたことなんてなかったのに!」
「うるせえ! ……ちっ、引き返すぞ。あの吊り橋を渡って」
吊り橋。全員が、足を止めた。
『三人分の装備重量なら、あと二回で切れる』
「……ハッタリだ。あんな無能の言うことが」
ガルドが先頭で橋に踏み出す。一歩、二歩。橋は軋みながらも耐えた。ほら見ろ、と振り返った、そのとき。
行きで一回。今ので、二回。
主索が、鈍い音を立てて弾け飛んだ。
三人は奈落へ――は落ちなかった。ヴェラの浮遊魔法が間一髪で全員を吊り上げ、代償に彼女の魔力は空になった。魔法も探知も使えない大魔導士と、薬切れの聖女と、青ざめた剣聖が、四十二層に取り残された。
「おい……帰りの罠、誰が数えるんだ……?」
誰も、答えられなかった。
暁の剣が半死半生でギルドに帰還し、「雑用係を追放したせいで壊滅しかけたSランク」の醜聞が王都を駆け巡るのは、その五日後のことである。




