第三話 龍の体重を知る男
銀山の再掘は慎重に進み、一月後、メルガの街は活気を取り戻し始めていた。
俺は鉱山の計測顧問をしつつ、測り屋も続けていた。
その日、店に来たのは冒険者ギルドのギルドマスター、隻眼の老婆グレンダだった。
「測り屋。折り入って頼みがある。北の山に飛竜が棲みついた。討伐隊を出すが、ここのは田舎冒険者ばかりでな。勝てるかどうか、測ってくれんか」
「勝敗は測れませんよ。……ですが、材料なら測れます」
俺は討伐隊に同行した。山道を登りながら、隊員一人ひとりの装備重量、体力残量、武器の耐久値を測る。そして稜線の向こう、岩山に丸まる飛竜を視た瞬間、数字が滝のように流れた。
「全長十四・二メートル。体重八・六トン。体表の鱗の硬度は鋼の三倍――ただし」
「ただし?」
「左の後脚、古傷があります。骨密度が周囲の六割。それと、あの竜は三日間何も食べていません。飛翔に必要な魔力残量を割っています。……あれは、飛べない」
隊長が息を呑んだ。俺は続ける。
「岩山の斜面、傾斜三十一度。竜の体重なら、左後脚に負荷が乗った瞬間に滑落します。東から矢で挑発して、左を向かせてください。滑落地点はあの谷。落下の衝撃は――計算上、鱗の耐久を上回ります」
作戦は、その通りに進んだ。田舎冒険者の寄せ集めが、一人の死者も出さずに飛竜を討った。谷底で息絶えた竜に矢を放ったのは、たった十二本。
その夜、ギルドの酒場は祭りになった。グレンダは俺に杯を押し付けて笑った。
「あんた、王都で何やってたんだい」
「荷物持ちです。数を数えるだけの、無能の」
「……王都の連中の目は、節穴だね」




