第二話 辺境の街の「測り屋」
王都を離れ、流れ着いたのは辺境の鉱山街メルガ。かつて銀山で栄えたが、鉱脈が涸れて寂れる一方だという。
俺は街の広場に、机ひとつの店を出した。看板にはこう書いた。
『測り屋 なんでも測ります 一件・銅貨五枚』
「にいちゃん、なんだいそりゃ」
最初の客は、市場のおかみさんだった。半信半疑で差し出されたのは、肉屋で買った塊肉。
「二・三キロと言われて買ったんだけどね、どうも軽い気がして」
「一・八キロですね。五百グラム誤魔化されてます。ついでに言うと、その肉屋の秤は錘に鉛が仕込んであります。仕込んだのは二十日ほど前」
「なんで分かるんだい!?」
「錘の摩耗と埃の堆積量で。……測れるので」
おかみさんは肉屋に怒鳴り込み、不正な秤が露見し、俺の店は翌日から行列になった。井戸の深さ、屋根の傾き、荷馬車の積載限界。測って、測って、測りまくった。
三日目、鉱山ギルドの親方が渋い顔でやってきた。
「測り屋さんよ。あんた、地面の下も測れるってのは本当か」
「試しますか」
俺は目を閉じ、街の地下に意識を向けた。数字の奔流。涸れた銀山の坑道、その先――。
「旧坑道の第三支道、行き止まりの岩盤から西へ三十八メートル。銀鉱脈、推定埋蔵量六百トン。ただし手前の岩盤は掘削の振動で崩落します。崩落までの許容振動量も測れるので、掘るなら発破は使わず、こちらが指定する順序で」
親方は口をあんぐり開け、それから俺の手を万力みたいに握った。
「あんた、うちの山の専属になってくれ! 報酬は言い値だ!」
――追放から、まだ五日目のことだった。




