第一話 追放、そして最初の計測
「ロイド、お前は今日でクビだ」
迷宮帰りの酒場で、リーダーのガルドはジョッキ片手にそう言った。テーブルには剣聖ガルド、大魔導士ヴェラ、聖女リノン。Sランクパーティ「暁の剣」の主力三人。そして俺、雑用係のロイド。
「理由を聞いても?」
「分かってんだろ。お前のスキル【計量】――物の重さと長さが分かる。それだけだ。戦えない、回復できない、魔法も使えない。数を数えるだけの無能に、四分割の報酬は払えねえ」
「ガルド、俺は毎回、罠の作動重量を測って――」
「罠なんざヴェラの探知魔法で十分だ。荷物まとめて出てけ」
ヴェラは目を逸らし、リノンは聖女らしからぬ嘲笑を浮かべた。……十年だ。十年一緒にやってきて、これか。
俺は席を立った。頭を下げる必要は、もう感じなかった。
「分かった。ひとつだけ忠告しておく。次にゼルガ大迷宮に潜るなら、四十二層の吊り橋は渡るな。三人分の装備重量なら、あと二回で切れる」
「はっ、脅しか? 数え屋の忠告なんざ、犬に食わせろ」
――酒場を出ると、冷たい夜風が吹いていた。不思議と、心は軽い。
その夜。安宿のベッドで目を閉じた瞬間、視界が数字で埋め尽くされた。
【スキル【計量】が上限に達しました。十年間・計測回数百万回の条件を満たしたため、進化します】
【計量】→【森羅計量】
跳ね起きて窓の外を見る。世界が、変わっていた。
石畳の一枚一枚に重量が。遠くの城壁までの正確な距離が。通行人の疲労度、大気中の魔力濃度、そして――地面の遥か下、光る鉱脈の埋蔵量までが、数値として視えた。
残り所持金、銀貨三枚。よし、測ろう。この世界の全部を。




