お嬢様を乗せていざ!ライドオン!
スペアはおとなしくお留守番!!
興奮で今にも屋敷お飛び出しそうなジュリー嬢に今日のところは、となんとか納得してもらい。
ライドの日までには準備もあるだろうと日取りを決めて、二日後の昼過ぎからとなった。
朝一がいいとごねるジュリー嬢をなだめるのに1日かかったと使用人達は後に語る。
トコたちは準備期間は人を乗せての飛行練習をアノイで試したり、おもてなし用の道具や準備をする為、市場や商店を回って買い集めた2日間になった。
当日。
ジュリー嬢は乗馬用の衣装身を包み、仁王立ちでトコたちを待っていた。
「待っていましたわ!トコ様!今日こそはお願いいたしますわよ!」
そこには心配そうに今日付き添う侍女のラクレットの姿もあった。
「ジュリー様、はしたないですよ。淑女であればまず挨拶から…」くどくど…。
ラクレットは人差し指を中で動かし、淑女とは何たるかを説いている。しっかり者の教育係のようだ。
人間の姿でお屋敷に出向いたトコもやる気が出てきたのかもちろん!とストレッチをして【ライドフォーム】に変身した。まずはジュリー嬢とラクレットを乗せて屋敷の敷地内をゆっくり歩く。
「すごいわ!」と喜ぶジュリー嬢と「な、なかなか体幹が必要なのですね…!」と驚くラクレット。
おお。ああ。などいろんな声を漏らす使用人たちをみていると親子乗馬体験みたいでおもしろいなあ。とトコは思った。
徐々にスピードをあげ、身体も温まってきたトコは、ジュリー嬢たちに声をかけた
「そろそろ飛びますよ〜!」
ぎゅっと鞍につかまり、ジュリー嬢は頷く。
「待ってましたわ!」
「もうですか?!」
バサリバサリと助走をつけて
空へと飛び立った。
使用人たちはおぉ~と見上げている。
空のドライブの始まりだ!
トコは街の上をゆっくり飛んで見せる。
普段は歩いている街の屋根や広場、教会、豆粒ほどに見える行き交う人々をジュリー嬢たちは眺めた。
「わあ……。ジオラマみたい……。」
ジュリー嬢は目を輝かせてつぶやいた。
アノイの魔法のおかげでお互いの声がクリアに聞こえる、通話みたいな魔法だ。
「ジュリー嬢!もっといいもの見せてあげますね!掴まっててください!」
トコは急上昇して雲を突っ切って雲の上に出た。
一面、雲の絨毯のような景色。
「わあ……!!!」
ジュリー嬢は先ほどより強く目を輝かせている。
「ジュ、ジュリー様…あ、危ないです!高度を下げてもらいましょう…!!」と少し震えてラクレットがお願いしている。
ジュリーはニヤリと笑いトコに言う
「トコ様、急降下でお願いしますわ!!!」
「おーけー!!!!!」
「え゙!?!」
ラクレットの声にならない声を最後に翼をすぼめ急降下した。
目的地にしていた高台に到着する頃にはラクレットは…
「ゼェゼェ…ジュリー様…いつもの仕返しですか?」
膝を折って髪が乱れたラクレットはトホホというようにジュリー嬢をみた。
「だっていつもしっかりしてる貴女が怖がってるんですもの!驚かしてみたいじゃない!」
ジュリー嬢はクククと笑った。
その間にもアノイは席のセッティングをして、魔法が使えないトコのかわりにお湯を沸かした。
トコはよしよしと手をこすった。
前世ではコーヒーをよく淹れていた。
挽いた豆の香り。
お湯を注ぐと膨らむ豆。
落ちる雫。
身体が思うように動かず、何をやってもダメだった時に何も考えなくていい時間。
それがコーヒーを淹れる時だった。
それにコーヒーにはルールがある、豆の量、お湯の温度、注ぐ回数、蒸らす時間…。
これさえ守れば誰でも美味しいコーヒーが飲める。
そんな所にも魅力を感じていた。
ここへ来る少し前のことを思い出しながらコーヒーを淹れる準備をする。
トコはソイラテが好きだが、この世界にソイがないので牛乳で割ったカフェラテにしよう。
まず豆の香りを肺いっぱいに吸ってにやけた。
幸せそうな顔のトコに席で待つジェリーはフフと笑いながら声をかける。
「トコ様ったらそんなにコーヒーお好きなの?」
トコはすかさず、それはもう!と答えた。
コーヒーを淹れながらこの豆を選んだ理由やお店の主人が面白い人で、たくさん試飲させてくれてお腹いっぱいだった事や、お茶請けに合わせても選んだことなどトコは喋り出すと止まらず、アノイは笑いながら目の前に小箱を置いた。
「こちら、本日のお茶請けになります。」
ラクレットは箱のデザインをみた瞬間。
「こ、これは!【フラッフィーヒル】ですか!?」
「ええ。この街で一番有名と聞き、朝から並んで参りました。」
「朝から並んでも買えないって有名なのに…!」
「わたくし達のためにわざわざ買ってきてくださったの!!!?」
「あなた何者ですか!?」
「精霊でございます。」
驚くラクレットと感動するジュリー嬢
コーヒーも入り、お茶会スタート!
ジュリー嬢は早速カップケーキをぱくり。
ふわっふわの生地にバターの香り。軽いクリームが控えめでおいしい!
「わっ!これおいしっ!?」
「さすが!有名なだけあるね!」
トコが思わず先に声に出した。
「お客様が先に感想をいうものですよ?」
アノイは人差し指を口に当てた。
「確かにそうだあ…すみません!」
頭をさすってトコが笑った。
つられてわはは!と笑いが生まれた。
お茶会の後はトコのほかの魔法も披露する事になった。
【エンジェルフォーム】
この世界には天使はいないが、背中に羽根を生やす魔法で天使を模倣する人間のグループがいてそれを天使族と言う者もいるらしい。
いつか会えたら会話してみたいものだ。
【マスコットフォーム】
これはとても二人にウケがよかった。
まるでぬいぐるみのようで、かわいいと2人ともうっとりしていた。
ハーフリングの2人にとって自分たちより小さいものは庇護下に置かなくてはいけないという風習でとても愛おしく感じるそうだ。
確かに、使用人の年齢や人数は幅広くて多かった。
皆で支え合って生きていく種族なんだろう。ステキだ!
そんなこんなでトコの魔法お披露目は終わった。
また【ライドフォーム】に変身し、2人を乗せてお屋敷まで帰っていった。
帰り着くとそろそろだろうと使用人たちや父や母も出てきて迎えてくれた。
「ただいま戻ってまいりました。」
ジュリー嬢は父と母に挨拶ハグをした。
「ただいま戻りました。旦那様、奥様。」
ラクレットも挨拶のハグをした。
ハーフリングは耳を擦り合わせてハグをする事でコミュニケーションをするようだ。
まだ、【ライドフォーム】のトコに奥様は近寄り
「本日は娘のわがままに付き合ってくださってありがうございました。」と背伸びをしてハグをしてくれようとした。
トコは気を利かせようとして【マスコットフォーム】に変身した瞬間…!
ぽふん!!!
その場にいたハーフリングたちが全員がワッと沸いて全員がマスコットコに集まった。
ハーフリング達は口々に興奮気味にしゃべりだした。
「なんて小さいの?!」
「たくさん食べさせなきゃいけない!!」
「好きな食べ物あるかい?!」
「このサイズのパジャマあったかしら!?」
「お風呂を湧かさなきゃ!!!」
もみくちゃもみくちゃ。
アノイに助けを求めようとするもニコニコしながら
「トコ様はチーズとハムがお好きで…はい…ええ。」と勝手にハーフリング側になっていた。
アノイ!ちょ…!アノイ…!あ~!あ~〜〜!
マスコットコは屋敷に連れて行かれ…
スタイをつけられて食卓へ…
成人女性だってお腹いっぱいの量を食べさせられた。
そのまま、風呂場に連れて行かれ…
ゴシゴシ洗われ大きな湯船へザブーン!
カポーーーーーーン
ジュリー嬢に抱かれて湯船にゆっくり浸かった。
「ご満足いただいておりますか?トコ様?」
「こ、これがハーフリングのおもてなしか〜!」
「トコ様、わたくしと友達になってくださらない?」
カポーーーーーーン
「人間の姿に戻っていいですか?」
「ええ!」
人間の姿に戻ってジュリー嬢の目を見て手を握った。
「トコでよければ!!」
「嬉しいわ!!わたくし友達が欲しかったの!!」
ジュリーはトコを抱きしめた。
トコを抱きしめ返した。
ジュリーの自室で一緒に眠った。
アノイは…
食事する必要ないが行為として食事を楽しみ。
精霊なので風呂にはいる必要ないが風呂場までついてきていた。
夜の間は睡眠は必要ない本の姿で大人しくしていた。
トコは目一杯動き回って友達を作り、健康な身体を謳歌した1日だった!!
次の日、全く疲れておらず清々しい朝を迎え、デザートまで朝ごはんを楽しんだ。
名残惜しいながらもトコとジェリーは強くハグをした。
「また、会いましょうね?」
「うん!またすぐに会おうね!」
食料や生活用品を使用人や奥様に持たされ送り出された。
芝生を蹴り【ライドフォーム】に変身して空へ飛び立った。
小さくなる屋敷の前で、ジュリー嬢はいつまでも手を振っていた。
ジュリー嬢のファミリーネームはフォンティーナ。




