サーカスとしましまドラゴン!
ジェリーとのお別れ後は【ライドフォーム】で人を乗せたり、物を運んだりしてなを売り始めていた。ある時、サーカスのパレードで出演者を乗せて街を練り歩く依頼を受けた。
ヒポグリフがパレードにいるだけで格好がつくし、アノイのハンサムさは客引きになった。
今回一週間滞在する予定の街を1日かけて練り歩いた。
公演前夜祭としてサーカス団の皆はどんちゃん騒ぎ!
気合いを入れるためにとことん飲むそうだ!
前の体ではお酒なんて飲んだ暁には顔は黄土色になって次の日は寝込んでいたもんだ。
今は全快の体!ガブガブ飲んでぽかぽか酔って、いい気分!!
何度も何度も乾杯をして人間の姿と【フォーム】をコロコロ変えて、机をちょこちょこ走り回ったり楽しんだ。
そんな中、「なんだ…ちゃんと食えよ…。」何人かの飼育係が大きな生き物に声をかけるが「フン…」とそっぽを向いている。
ほかの動物たちも景気づけに好物を食べて楽しんでいる。
大きな生き物は不貞腐れてるようだ。
トコはいい気分なので、檻を越えて、ピタッと大きな体に貼っ付いた。
「はえあ〜!冷たくてきもちぃ〜!」
飼育員たちからはおお!わあ!と声が漏れる。
「ぐーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
いっぱい食べていっぱい飲んだトコは大きな生き物の体に身を任せて眠ってしまった。
飼育員たちの動揺をよそにアノイは
「主人が申し訳ございません。」
「俺たちはいいけどよお…。」
「警戒心が低い人なんです。無害なのでお許し下さい。」
大きな生き物はちらりとトコをみて、フンと目を閉じた。
「う、うーん!」
トコの体はどんな場所でもどんな状態でも全快の体だ。大きな生き物の上でもぐっすり快眠だった。
「目が覚めたのならさっさと檻の外へ出ていけ。」
頭上から静かな声で声をかけられた。
「わっ!?おお!?」
見上げるとライトイエローとミントグリーンとマゼンタカラーの縞模様の美しいドラゴンだった。
「oh....!エキセントリックカラー!あれ?なんでここにいるんだっけ?」
「トコ様コーヒーは飲まれますか。」
目を覚まして騒ぐとこにアノイが声をかけた。
「あ、待って!自分で淹れたい!新しい豆をねえ…」
「お主ら!我の話を聞いておるのか!?出て行けと言っておるのだ!」
「豆乳ってないもんかねえ…」
「大豆から飲み物を作る文化はこの世界にまだないんです。」
「あ、チーズ残り少ないじゃん!コレって高い?」
「そこまで高くないですよ。気に入ったのならまた買い足しましょう。しかし、この地方のチーズもあるのですが見てみませんか?」
「え〜!ハムも見ちゃお〜♪」
ドラゴンの檻の中でトコとアノイは朝ごはんの支度をし始めた。
「お、お主ら!」
怒りでわなわなはするが薙ぎ払ったり、噛まれたりはしなかった。いい子な気がする。
団長は少し困っていた。
「生まれつき、片翼が発達していなくてな、空を飛べないし、炎も吐けないし、見た目が綺麗だから一応客引きにはなっているが、仏頂面で言葉も通じない。」
「え?めっちゃ喋ってましたよ?」
「ん?」
「え?」
しましまドラゴンは人語を解っていた。
あまりにトコが無防備で無害だったため声をかけてしまった用だ。
「我の威厳が…」
しましまドラゴンなりに威厳を示していたらしい。
「しましまドラゴンはなんでずっと不貞腐れてるのさ?」
「し、しま?我はディー!ディー・ペンドラゴンだ!」
「おっけ!ディー!何か困ってることある?」
「え?困ってる?困ってることなどないッ!」
「そうかな?なんか、つまんない〜って顔してるよ?」
キョトンとするトコをみてフン!とそっぽを向いてしまった。
トコはうーんと考えて、じゃあね!と走り去った。
ディーはちょっとさみしい顔をした。
その日からサーカスの手伝いをしながら暇な時間にはディーのところに来ていろいろな事を始めた。
「おかゆいところはございませんか〜?」
泡まみれになりながら、トコはディーを洗った。
「我は汚くない!ドラゴンとは汚くならない生き物なんだ!」
「まあまあ、せっかくだからツノも磨いちゃお!」
ゴシゴシ
「……そこは……」
「ん?」
「……もう少し、そこを擦れ。」
「おお!ここ気持ちいいんだ!」
ゴシゴシゴシ
ディーは目を細めた。
「ふう……」
トコがキャッキャと楽しんでいるとサーカスを観に来た子どもたちも一緒になって泡まみれになって水遊びをした。
ディーは少し目を細めた。
それを見ていた団長が、すかさず声をかけた。
「タオル使うなら一枚いくらね!」
いつの間にかタオル代まで取っている。
すごいやり手だ。
また別の日、
美味しそうな香りが檻中に漂い鼻をくすぐる。
少し振り返るとトコとアノイがグリルセットで何かを焼いている。
うちわをぱたぱたしたトコとディーは目が合った。
「ミートオアフィッシュオアベジタブル…!!!」
トングをカチカチとしてトコは肉と野菜を持ってディーに見せた。
ディーは少し面倒くさそうに顔を上げる。
「我は食べれればなんでも良い。好みなどないわ。」
「じゃあ、まず野菜から!!」
ディーの口にカボチャ(に似てる野菜)を放り込んだ。
んぐ…!?もぐもぐ…。
「…うまい。」
ディーは実は甘党のベジタリアンだった。
いえーい!!おお!!!おもしろい!
いつのまにか集まった観客たちは歓声をあげた、いい匂いに集まった観客に肉や野菜、魚が振る舞われたさながらバーベキュー大会になった。
団長はここでもすかさず
「ドラゴンが何が好みか賭けるならはこちらで!」
と声をかけていた。
「団長……」
「いやぁ、せっかくならね!」
ちゃっかりしている。
また別の日。
アノイのバイオリンの音が、ディーの檻の前に静かに響いていた。
最初はアノイのバイオリンとトコの拍手や小躍りだけだった。
それを聞きつけたサーカスの演奏者たちが集まってきた。
一人、また一人と楽器を持って集まってくる。
歌うもの、踊るものも現れ、気がつけば一種の演奏会になっていた。
「わあ!たのしー!踊ろう!」
トコも音楽に合わせて楽しそうに踊っている。
ディーはしばらく黙ってそれを眺めていた。
また、少しだけ目を細めた。
そして団長は、
「チケット代はこちらでーす!」
ここでもしっかり小銭を稼いだ。
すごいやり手だ。
水遊びではタオル代。
バーベキューでは食事代に賭け。
演奏会ではチケット代。
トコとディーが遊んでいると、いつの間にか周りも巻き込んでちょっとした催しになり、そのたびに団長が小銭を稼いでいた。
他にもサーカス団の1週間の滞在中にいろんな方法でディーを楽しませようとした。
ディーはどんどん心を開くようになっていた。
そして千秋楽…。
ディーを喜ばせたい行動がサーカス以外のイベントに繋がっていたらしくえらく儲かったらしい。それもあって報酬も多めだった。
このままサーカスの一員として一緒に来てほしかった団長は少し寂しそうに、トコに語りかけた。
「もう行ってしまうのかい?」
「はい。トコたちの目的は旅なので!」
「そう言われたら、引き留められないな」
トコは檻にいるディーのそば近づいた。
「もう行ってしまうのか…」
ディーはポツリとつぶやいた
と聞いてきた。
「少しは元気でた?」
「ああ、お主らが来て退屈はしなかった…。」
「そっか…」
トコはディーを見つめてから少し考えてタッタっと走り去ってしまった。
「あ…」
ディーは開きかけてたまた心を閉ざしそうになる。
寂しさを隠すように丸くなって、目を閉じた…。
タッタタッタ
「いや~!いいけどねえ?どうやって連れて行くんだい?」
「いや~!ノープランです!ディー!一緒に行こう!」
トコはディーを檻から出してぎゅっと抱きしめた。
サーカスには2度しか言ったことないですが、今でも思い出せるくらいアクロバティックでかっこいいものだった気がする




