ドキドキ!空のお届け大作戦!!
空にもルールがある!
トコとアノイは空に向かって飛び立った!
トコの始めての旅の始まりだ!!!
アノイのナビと重ね掛けた魔法の調整で、順調な滑り出しになった。
が!
陸路と同じで検問やルールがあった。
空を飛ぶ種族や魔法使いや飛行馬車は陸路ほど多くないので、混み合うということはないが規定の高さで飛び、高さに応じて行きと帰りに変わる。
検問ではギルドカードの提示や空路使用の理由を聞かれたりする。しかも街の上ごとにある。領空域というやつらしい。
「結構ルール厳しいんだね!」
「このルールのおかげで揉め事や事故が起きにくいのだと思いますよ。」
「はえ~!考えられてるんだね。」
検問所の脇には休憩所や宿屋もあり、いろんな空を飛ぶ種族や飛行馬車が休憩をしている。
鳥の獣人族や飛行魔法で飛ぶ人や馬車。
なんと!グリフォンやヒポグリフ、ハーピーや背中に羽のある人もいることが判明した!
ぐふふ!いやあ、トコの場合はオニオオハシを応用した魔法だけど、仲間がいる気がして嬉しくなった。
トコはニヤニヤしながら【ライドフォーム】のままストローでちゅーちゅードリンクを飲む。
アノイはマジックボックスもとっても広くて大きい。旅の荷物はアノイが全部しまってくれてるのだ。なんて便利なんじゃ…!ありがたや〜!万能精霊さま!
そんな事を思いながら小休憩をする。
卵の様子はというと時よりほんのり温かく、テラテラと艶めいて今にもという感じだ。急がなきゃ!
その後、2日間は問題なく飛行できた。
3日目の夕方頃…。
トコたちは思いのほか早く目的の街の領空検問所まで来た。
卵の固定の為トコはずっと【ライドフォーム】を保っていた。
そこにダークエルフの身なりの整った男が近づいてきた。
「失礼。そちらの青年…。そのヒポグリフ、実に見事な毛並みと体格だ。よく手が入っている。もし譲る気があるのなら、白金貨120枚で買い受けたいのだが。どうだ?」
正直、悪い取引ではない。1200万円は相当な大金。
しかし!このヒポグリフはトコが魔法で変身している姿なのだ!残念!残念!実に残念だね。
うんうん頷くトコとは対照的にアノイは冷静にダークエルフの貴族に近づいていき、淡々と答えた。
「申し訳ありません。そのお話はお受けできません。」
ダークエルフの貴族は小さく眉を上げる。
「ほう? 何か譲れない理由でも?」
「はい。実はこちらのヒポグリフは、変身魔法によってこの姿となっております、わたくしの主人でございます。生き物として所有しているわけではございませんので、お譲りすることはできないのです。」
「……変身術で姿を変えている、というわけか。なるほど、珍しい。ヒポグリフに変身しようと思うコモンなど、そうそういるものではない。」
その目は、値踏みするというより、愛玩物をかわいがることを思いついた者のそれだった。
「それに、ヒポグリフの姿も見事だが、人間の姿もさぞ美しいのだろう。白金貨百五十枚でどうだ?」
ひょ、ひょえ~キモい〜!!トコは身震いをした。
アノイの表情は崩さないまま、わずかに警戒を強める。
「申し訳ありませんが、やはりお受けできません。」
「そうか。残念だな…。」
貴族はそう言いながらも、諦めた様子はまるでない。むしろ興味を深めたように、細い目を愉しげに細めた。
その言葉に、アノイは礼を崩さぬままトコへ視線を送り、静かに促した。
「では、わたくしたちはこれで失礼いたします。」
トコもまた、軽く頭を下げる。
「どうも。」
二人はそれ以上長居せず、その場を立ち去った。だが、背後からはなおもねっっとりとした視線が追ってきている気がした。
どうやら、あのダークエルフの貴族に目をつけられてしまったらしい。
「だが、ますます気に入った。あの姿も、この姿も美しい。ぜひ、じっくりかわいがってみたいものだ。」
卵はコツコツと殻を蹴るような音が聞こえ始めた。まずいぞ!急がなきゃ!
このまま一昼夜飛び続ければ間に合いそうだ!
アノイはスピードを上げる魔法と緩衝材を強化する魔法を付与してくれた。
体をギュッと細くして急降下していく…
さながらハヤブサだ!!!
朝日が昇る頃には街の検問所までたどり着いていた。
卵はもうコツコツコツコツ!と音を立てている。
ここからは陸路だ、まちの中をパカラパカラと走る。
ここだ!!
大きな金色の門構えに白い壁、庭には噴水がある。
「すごい豪邸だねえ。」
人間の姿に戻って卵のケースを抱えて届け先の豪邸を見上げる。
門に近づくとゴゴゴゴ!と門が開き、ハーフリングの使用人がぞろぞろとやってきた。
「ギルドの依頼により、ピクシードラゴンの卵お届けに参りました。」
「もう、生まれちゃいそうです!!」
トコは抱えた卵を見せた。
卵はさっきより増してコツコツ言い出している。
使用人達は大慌てで依頼主のハーフリングの令嬢の元へ案内してもらった。
朝食後のティータイム中だった令嬢は待ってましたと言わんばかりにカシャン!少し音を立ててティーカップを置いた。側仕えは咳払いをした。
「ジュリー様、はしたないですわよ。」
そんな言葉は気にならないほど、お待ちかねのピクシードラゴンをトコから受け取った。
「まあ!待ってましたの!この日を!わたくしのピクシードラゴンちゃん!」
受け取った卵に頬ずりをした。その拍子に少し揺れ、パキンと殻に亀裂が入った。
「「生まれる!」」
トコと令嬢の声が重なる。
ケースを開けて膝のうえに乗せ、今か今かと卵のひびを見つめる。
バリッバリバリ!バリバリ!
ピー!ピー!ピー!!
ピクシードラゴン誕生!!
皆がおおと驚いてる中、トコが一番に拍手をした。
パチパチパチパチ!「誕生おめでとうございます!」
釣られて使用人や側仕え達はおめでとうございます!と拍手をした。
「お名前!お名前はきまってるのですか?!」
トコはウキウキしながら聞いてみた。
「そうですわね!お名前…お名前…」
「ミントグリーンのウロコ…スペア!スペアにしますわ!」
「わあ!スペア素敵な名前ですねえ!」
ピー♪ピー♪
心なしかスペアも嬉しそうだ!
ジュリー嬢の上をくるくる跳んでみせる。
「気に入ってもらえたようですわね!」
アノイはジュリー嬢の前で柔らかく会釈した。
「それではわたくし共は報酬をいただいてお暇させていただきます。」
使用人がワゴンに報酬を乗せて持ってきていた。
「待ってくださる?ちょっとお聞きしたいのだけど、さっきの…さっきヒポグリフは貴女ですの!?」
昨晩の事を思い出す。この令嬢も飼いたいと言うのか?トコとアノイ身構える。
「はい、そうです。私の変身魔法で…。」
「素晴らしい!!!」
立ち上がって目をキラキラさせ、トコの手を握る。
「わたくし、美しい動物が大好きなのですがヒポグリフは気性を荒くて、飼うのは難しいとお父様に言われておりましたの!だから!だから!」
強くぎゅっと手を握る。
「わたくしを背中に乗せてほしいのですわ!」
ええ!そんな事〜!?!?
「も、もちろん、報酬は別途お支払いしますわ!どうかしら?」
興奮気味に顔を高揚させるジュリー嬢をみてトコはニコニコ笑ってみせた。
「報酬なんて大丈夫ですよ〜!背に乗せるくらい全然!空も飛んじゃいましょうよ!」
トコもウキウキしだした。
トコは人の役に立つのが好きすぎる。お願いに弱いのだ。
「ただ、お嬢様を乗せる鞍がないのでしっかり捕まってくださいね!」
「それでしたら!」
チリリン♪手元のベルを鳴らした。
「こちらをお使いください。」
使用人から上等な鞍を渡された。
柔らかくてイイ革、伸縮性のある面繋、尻繋(馬具)高級品だ…。
「こんなにいいものお借りしてもいいんですか?!」
「何を言ってるのかしら?報酬代わりよ!もらってちょうだい!」
▼トコは上等な鞍を手に入れた。
お嬢様とのドライブ!!
存分に楽しめるといいね!




