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満寵  作者: 涼風隼人


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第9回 満寵、栄転を重ねる

「守りの満寵」という名前を知らない者は、もういない。


 曹丕は即位後の軍制改革において、満寵を抜擢した形となったのである。

 

 満寵は任地に赴く前に、洛陽により、文帝と会うことを命じられていた。

 

 地方防衛の最前線にいた満寵にとって、曹丕と面と向かって顔を合わすのは初めて出会った。文帝が言う。

 「伯寧。お前とこうやって話すことを、私は楽しみにしていた。お前の若かりし頃からの功績の話を聞いていると、まるで自分でもそうする、と言う様な話が多かったからな。」


 「帝と私の行動が・・・。恐れ多く、辟易致します。」


 「ふふふ。まあ、よい。これからも、今までの姿勢で職務に励んでくれればよい。しばらくは、久々のこの中原と北方の風を味わうとよい。南に動きがあれば、また、行ってもらうことになるであろうからな。」


 「かしこまりました。どの様なご命令にも、随時、動けるようにしておきます。」

 

 満寵は拝礼して、退出した。

 

 退出する満寵の背中を見ながら、文帝は心の中で呟いた。

 「見立てどおり。こいつは、使える。決して、手放してはならぬ。」

 

 陽武将軍として、満寵は徹底的な巡察を行った。

 

 その範囲は、常識を超える広範囲であり、満寵の慎重な性格が伺えるものであった。

 

 巡察を行う兵の規律も非常に整っており、悪さをする者もいないことから、民からも人気となった。

 

 満寵の巡察が行われるようになって以来、盗賊、山賊の類がほとんどその姿を見せることは無くなったのである。

 

 文帝の想定以上の成果を素早くあげる満寵に、文帝も素早く対応をする。陽武将軍から、伏波将軍への栄転である。

 

 「陽武将軍」が「守りの満寵」にふさわしい呼び方であるのに対し、「伏波将軍」は主に「外征や討伐」を担当する者がつける将軍号であり、曹丕は既に「守りの満寵」だけでなく、「攻めの満寵」の能力もある、と見出したのであろう。

 

 実際、伏波将軍就任直後、小規模ではあるが反乱の報告が入った。満寵は、

 「三日もかかるまい」

 と言って、出陣した。ところが、なんと三日どころか、その日のうちに反乱を鎮圧し、その日の夜に帰任したのである。

 

 これには周囲の者は驚きを隠さなかったが、当の本人は最短の道程で最速で攻めればこうなることはわかっていた、と言う顔であり、全く誇っている様子さえなかった。


 そして、将軍職として順調に功績を積み重ね、次なる栄転が待ち構えていたのである。

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