第10回 満寵、豫洲刺史になる
満寵は文帝から、洛陽への招集命令を受けた。
満寵は即座に、洛陽に向かった。
文帝は、満寵の相変わらずの早い登場に満足げに言う。
「伯寧よ、相変わらず早いな。陽武将軍、その後、伏波将軍としてそのつとめ十二分に果たしていると、私の所には報告が入ってきている。」
「当然のことを致したまでです。」
「功を全く誇らぬところが、伯寧らしいところか・・・。そこで、この度、お前には更なる大役を果たしてもらうことにした。」
「・・・。更なる大役、でございますか。」
「ああ。豫州刺史として、この国の安定につとめてもらいたい。」
豫州刺史と言うのは、曹丕が言うように本当に「大役」である。まず、州の土地としての広さはそれほどではないが、人口はかなり多く、都の洛陽と隣接するだけではなく、孫呉との国境も接している非常に重要な地域である。豫洲の全権を任せるということは、言い方を変えれば、国の最重要な一部を満寵に任せる、と言っても言い過ぎではない。
しかし、満寵は文帝の目から見ても、相変わらずいつも通りで、高揚した感じなどは一切出さなかった。そして言う。
「豫州刺史の大役、しかと承りました。この伯寧、死力を尽くして取り組む所存でございます。」
「頼むぞ。豫洲を失うということは、この国が亡くなると同義である。伯寧に言う必要はないことだろうが。」
満寵は拝礼して、退出した。
満寵は文帝の期待通り、豫州刺史の職務に取り組んだ。特に孫呉との国境線の警備にはそこまで備えるかと言うほどの、満寵らしい徹底ぶりを発揮し、その安定につとめた。
満寵にとって、文帝は非常に相性のいい君主だったといえるが、その命の灯は思いの外弱く、間もなく消えいろうとしていたのである。




