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満寵  作者: 涼風隼人


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第8回 満寵、曹操の死を見送る

 一つの時代が終わりを告げる。

 

 西暦二二〇年、魏王となっていた曹操がこの世を去った。

 

 享年、六六歳であった。

 

 しかし、既に「魏王」を名乗っていた時点で、この漢の魂の炎が消え去って、その後の事は全て考えられていた。ここが、曹操に滅ぼされ、歴史から消えていた一族との大きな違いと言えよう。

 

 跡目を継いだ「曹丕」は、漢の献帝の禅譲を「受け入れる」形で、正式に「魏」の国を造り、帝位に就いた。「文帝」という。ここに、「後漢」の歴史は、正式に終了したのである。

 

 曹操は、死に際に、地方の軍に対しては喪に服すことや任地を離れることを徹底的に禁じていたため、大きな混乱は起こらなかった。

 

 曹仁は人知れず夜空に向かい、一筋の涙を流した。そして、彼の曹操に対する喪は終わったのである。

 

 満寵は、この衝撃的な報せにも、普段と変わることなく淡々と任務をこなし、必要以上に悲しみに暮れる者や浮つく者には厳しく接した。

 

 曹仁は満寵の頼もしさに、諸事任せることが増えてきたが、やはりその様な人物は中央も気付くようで、満寵は「陽武将軍」に進み、主に北方、中原の防衛を担当することになった。

 

 もちろん、栄転である。

 

 別れの日、曹仁が言う。

 「伯寧、お前には本当に助けられた。お前がいなければ、この子孝、万世に汚名を残すところであった。本当に、感謝する。」

 

 「何をおっしゃいますか。この伯寧こそ、私如きの進言を幾度も取り上げて頂き、心より感謝申し上げます。」

 

 「私もいい年だ。これが最後の別れになるかもしれん。しかし、もしそうなったら、荊州の守りはお前に担ってもらいたいと考えている。」

 

 「何をおっしゃいますか。まだまだご健勝ではございませぬか。私の任地も中原と言っても、荊州みたいなものです。また近い日に、お会いすることになるでしょう。」

 

 「うむ。伯寧、それでは元気でな。」

 

 満寵は拝礼した。

 

 こうして、満寵は曹操の死を見送り、新たな任地へと赴くのである。

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