第3回 満寵、曹操に召し出される
西暦一九二年。ある漢が兗州を掌握することになった。
「曹操孟徳」である。曹操は優秀な人材を集めることに躍起になっており、そこに満寵の情報も入ってきた。
若干一八歳ながらの督郵としての実績や、高平県県令代行としての仕事ぶりを聞き、兗州の統治をより強固なものにするため、満寵の様な気骨のある家臣を一人でも多く増やしたいということであろう。
満寵としても、高平県令代行を辞してから数年が経過しており、曹操の勢いは中々のものであるとの話を聞き、仕官することを決定した。
満寵はひとまず、「従事」に任命された。
従事の職務は多岐に渡るが、やはりその中でも満寵に期待されたのは法務や監察といった、督郵時代の実績を活かした仕事であった。曹操は、新しく召し出した者とは、どんなに忙しくとも時間をさいて面と向かって話をすることにしており、実際、満寵とも会った。満寵が挨拶をする。
「満寵伯寧と申します。この度は、お召を頂き、ありがとうございます。」
「伯寧。お前の厳格な過去の仕事ぶりは評判になっている。今回従事に任命したのも、その仕事ぶりを買ってのことだ。
誰にも遠慮することなく、法に従い職務を進めてくれ。」
「わかりました。お言葉胸に刻み、職務に励みます。」
満寵は曹操に言われた通り、督郵時代同様、与えられた職務を淡々とこなしていく。その徹底ぶりは、依然と変わらぬものがあり、その厳格ではあるが公正な仕事ぶりは、曹操の耳にも度々入ってきた。
そして数年間、従事の職務に励み、曹操が「大将軍」になると、それに合わせて栄転し、「西曹属」になり、「西曹掾」を経て、許昌の県令に任命された。
許昌の県令に就任して間もない時、曹操の一族であり、高位に就いている「曹洪」の養っていた食客たちが、略奪行為を行ったことがわかり、満寵は即刻逮捕をした。
曹洪はその食客たちを特別可愛がっており、その処置に手心を加えてくれるよう満寵に手紙を出したが、満寵は聞き入れずに、粛々と法に則っての取り調べを行った。
曹洪は手紙の効果が無いことを知ると、曹操に事情を打ち明け、内々に手を回してもらおうと動き出したが、満寵はその動きを察知すると、どうせ赦免させる気だと思い、既に証拠は出そろっていることから、食客たちを処断した。
曹操はこのことを知ると満寵を直々に呼び出した。そして言う。
「伯寧、久しぶりだな。この度は、何故呼ばれたかわかるか?」
「曹洪様の食客たちの件、と理解をしております。」
「うむ。この度の過ちはやはり、赦免できるものではなかったか?」
「はい。もし、今回赦免をしていれば、ご一族や高位の者に関わる者たちを、特権階級扱いすることになり、今後の法の執行にも影響がございます。それ故、法に照らして処断いたしました。」
「さすがだ、伯寧。今後もその姿勢を貫いて、仕事をしてくれ、頼んだぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
こうして曹洪の食客たちの件は解決し、曹操の満寵への信任は、ますます高まるのである。




