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満寵  作者: 涼風隼人


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第2回 満寵、督郵の張苞を処断する

 李朔は、豪族仲間に満寵と言う督郵は若いが侮れない、目を付けられない様に、細心の注意を払うべきだと助言をした。

 

 太守も満寵の李朔の件の解決には十分満足し、ますます満寵を重用するようになった。

 

 満寵は法の番人として、淡々と仕事をこなす。そして何よりも法を重視し、法の前では身分さえも関係ない、という考えのもと職務をこなした。

 

 ある時、太守に督郵の「張苞」という者が、その職権を濫用して、多くの賄賂を受け取り、行政の秩序を乱しているという報告が入った。

 

 各県の県令には、些細なことやあらぬ出来事をでっちあげて、それを太守に報告すると脅し、身分の低い役人にまで、民から賄賂を受け取っているとの報告があったと脅し、小銭を巻き上げたりもしていた。

 

 張苞が次に監察に入るのは「高平県」であると知っていた太守は、満寵を呼び出して言った。

 「伯寧、一時的にお前を高平県令の代行に任命する。」

 

 「どういったことでしょうか。」

 

 「うむ。お前と同じ督郵の張苞という者が、派手に賄賂を受け取って好き勝手をしていると報告が上がってきている。


 その張苞が次に監察に入るのが高平県だ。そこで、張苞を法に基づいて裁いてもらいたい。」

 

 「・・・。わかりました。」

 

 「この件、厳格に法の運用ができるお前に一任したいのだが、大丈夫か。」

 

 「承知いたしました。法に基づき、処理致します。」

 

 こうして、満寵は高平県の県令代行として、張苞が高平県に入る前に就任した。


―数日後―

 高平県の県令の執務室に張苞が訪ねてきた。


 張苞は満寵を見て、怪訝な顔をする。

 「そなたは確か、私と同じ督郵の満寵殿ではないか?」


 「いえ、今はこの高平県の県令の代理をつとめております。」


 「県令の代理・・・。県令殿は如何いたした?」


 「急病でしばしの療養が必要とのことで、私が代行をつとめている次第です。」

 

 「そうか・・・。その様なこともあるのか・・・。はて、どうしたものか・・・。」


 「張苞殿、如何なされた。」


 「実は、ここの県令は非常に評判がよろしくない。部下には暴力をふるい、民からは賄賂を巻き上げているとか・・・。」


 「私は、その様なことは聞いておりませんが。」


 「満寵殿は、ここの代行と言っても、まだ来られたばかりでしょう?さすがに、そこまでの話は聞くことはないでしょう。」


 「そうですか・・・。それでは、どうされますか?」


 「そうですな・・・。見舞いと言う形で、是非、県令殿に直接お話をさせて頂きたいのですが・・・。」


 「わかりました。県令の方に張苞殿のお話、私の方からさせて頂きます。少し時間がかかりますので、宿舎の方に入られて、しばし旅の疲れを癒しながら、お待ち頂けないでしょうか?」


 「それでは、満寵殿のお心遣いどおり、私はしばし休ませていただきます。お待ちしておりますぞ。」

 

 こうして、張苞は一旦、宿舎で満寵を待つことになった。

 

 満寵は、別室で待たせていた県令に張苞の話をした。

 

 県令は言う。

 「私はその様なことをしておりません。この命を懸けて、誓うことができます。」

 

 「気を悪くしないでいただきたいのですが、私の方でもあなたの身辺調査はさせて頂きましたが、その様な話は全く出てきませんでした。これで、全ては張苞の作り話であることが判明致しましたので、只今より、張苞を拘束します。県令殿、兵の出動許可をお願いします。」


 「わかりました。よろしくお願いいたします。」

 

 こうして満寵は、兵を率いて張苞の待機する宿舎に直行し、その場で張苞の身柄を拘束した。張苞は言う。


 「満寵殿、これは何事ですか!」


 「身に覚えが無いとでも?お前の悪事は、既に太守様の方にも報告が入っている。そなたの件を法に基づいて調べて、処理するように一任されている。早速、一緒に来てもらおう。」

 

 満寵は張苞を取調室に連行した。そして、ここでの件以外でも、報告の上がっている件に関して、事実か否か確認をしていった。その結果、ほとんどは賄賂の為に張苞が捏造したということが発覚した。

 

 満寵は言う。

 「張苞。督郵とは、太守の権力を代行する職務であることはお前自身もわかっておろう。よって、法に照らしてお前を処断、死刑に処す。」

 

 「死刑!ちょっと、待ってくれ!お前に、そんな権限はないであろう、満寵!」

 

 「私は太守様から、厳格な処理をするように一任されている。お前の罪状は死刑に値する。」

 

 「まずは太守様に会わせろ!話はそれからだ!」

 

 「そんなことをしなければいけない法は無い。覚悟致せ。」

 

 満寵は首切り役人に指示を出した。張苞の処断は終わった。


  満寵は書状に本日の全てをしたため、それと合わせて辞表を太守に渡すように下の者に依頼をし、そのまま帰郷した。


 督郵という仕事に嫌気がさしたのだ。


 そして、しばらくは官を離れて暮らすのだが、ある所より、召し出されることになるのである。

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