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第8話:一極集中②

恐怖の中、必死の形相で作業をするロード。


対して、周りの勇者達は――


黒魔術用の液体を作る5名は、比較的落ち着いたペースで淡々と仕事をしている。


そして、モンスター討伐をしている多数の勇者達は……暇を持て余しているようだ。


通常は、1つのポジションで5種類以上のモンスターを討伐する。


しかし、繁忙期の短期バイト勇者たちは、個別に教育する手間と時間もかけても、すぐ辞めるので無駄になる。


なので、作業内容は極めてシンプル。1種類のモンスターを延々と倒す作業がほとんどだ。


そして、モンスターの行進速度は明らかに遅い。




……俺が、こんなに覚える作業内容が多く、作業量も多いのに?


高速マルチタスクな俺をよそに、ゆっくりシングルタスクな他の勇者達。




入ったばかりの短期バイト勇者たちに 各業務を教えるよりかは、普段から務めている俺一人にそれらの内容をまとめて教える方が、明らかに楽だろう。


教育する対象者も、責任の所在も、一本化できるからだ。


さぞかし楽だろう……部隊長としては。


だが とうぜん、俺に降りかかる労働負荷は、高い……なんてもんじゃない。


人間の性能の限界にチャレンジさせられている気分だ。




俺も、非正規雇用。


短期バイト勇者達と時給は同じなのに、仕事がキツすぎる。


つーか、これ、正規雇用の勇者が複数人でやるべき仕事量と難易度だろ。




ロードは、全体を見渡す。


……違うモンスターが来たら、一秒でも早く動き出さないと…


「おい、手が空いてるなら手伝ってくれよ」


あなたの目は……てめぇの目は!ビー玉なのかァ!?


…………あれ?この男…………


粘着勇者が末席に座ろうとしているグループの一員……?


俺が入社した時には、既にここで働いていた先輩…………!?


複数の短期バイト勇者達を見て、必要に応じて武器の使い方を教えている様だ。


それ以外の時は、ゆっくり武器の手入れをしている……ゆっくりと。




「………………!?」


疑問を抱いたロードは、働いている勇者たちを見渡す。


他にも、同時に大量に非正規雇用された同期勇者たちも、数人いる。


あ、一時的な助っ人としてここに来たけど、本来の部署の業務と違うから、割り当てられる作業は、短期バイト勇者達と同じ内容なのか。


彼らは、短期バイト勇者たちと同じく、労働負荷が明らかに軽い。




――――――――――――――――不公平だろ!


明らかに労働負荷が小さいポジションで 手が空いている同僚勇者たち・短期バイト勇者たちが、手が空いてヒマなのか…………必死こいて作業する俺を注視している。


俺の、一挙手一投足に……ジトッとした視線が注がれる。


…………いや、気にしている余裕はない!


作業に全神経を集中…………。


…………!?


あれ?あそこの2人組、、必死こいて全速力でてんやわんやする俺を見て嘲笑してるのか……!?




「黒魔術の液体調合用のパクチー、もう使わないよ。

早く処分して、代わりにキンマ持ってきて!」


声の主の方へ目をやると、また別の 先輩がいる。


「……わ、わかりました……」


泣きそうな顔で、パクチーを廃棄用の壺にぶち込む。


パクチーを捨てて、キンマを用意すべく武器庫へと向かうロードに向かって、部隊長が、声を張り上げる。


「おい、パクチーが足りないぞ!早く用意しろ!」


あれ、もう使わないのでは?


先程の先輩の方に目をやると……そそくさと去っていく後ろ姿。


「…………」


先輩からの誤情報が原因で、必要物資を届ける事ができない……業務がストップ。


手が完全に空いた短期バイト勇者たちの視線が、一斉に集まる……針のむしろ。




こんなん、非正規雇用うんぬんの次元の話じゃない。


精神の拷問だ。


部隊長は、先輩方は、俺に恨みでもあるのか?心当たりが全くない。


あ……なんだこれ……なんか、精神が…………




――45分休憩。


モンスター達の行進の停止を確認したロードは、倒れる様に 草原に寝転がっていた。


”…………………………………………”


途中から ほとんど記憶がない。何も考えられない。


……飯を食べないと、午後から身体が持たない。


それはわかっているが、その気力すらない。


他の勇者たちが食堂に向かう中、ロードは仰向けに横たわったままだ。




――5分が経過した。


”早くメシ……いや、メシ食ったら眠くなって、動きが鈍る……”


少しだけ、思考力が回復してきたようだ。


”……休憩所の冷蔵庫に入れっぱなしで忘れてたな……サラさんにもらったデーモンエナジー”




――20分後、デーモンエナジーを飲むロードの姿があった。


ごきゅ……ごきゅっ……!


疲れ切った体中に、強烈に甘い炭酸水が行きわたる。


とんでもなく、美味い……。


…………!


体中に少しずつ、エネルギーが湧いてきている。




さらに、2本目のデーモンエナジーに手を伸ばし……缶を傾ける。


……底をついたと思っていたエネルギーが、体中から湧いてきているのを、感じる。


体が……動く。

脳が……動く。


…………ッッ――――




イケる!


俺はまだ、労働可能――!!

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