Episode76 書写
同日、僕たちは街の風景に目を奪われながら、試験参加者専用のホテルにチェックインし、特に、何も起こらないに無理についた。そして、僕たちは小鳥のさえずりのない初めての朝を迎える。
試験1日目。まずは、呪文の書き写しから始まる。とても、単純で、つまらない作業なうえ、一瞬でも手が止まれば失格だという。もちろん、ご丁寧に魔法無効化の結界が張られていたため、魔法は使えない。1日目から中々の厳しさだ。僕はそんな思いで、会場であるアルカディア宮殿の中に入った。
大理石で出来た壁に、黄金の装飾。天井には絵画。僕は、その美しさに見とれながら、歩いていく。
やがて、木で出来た巨大な扉が見えてきた。それが、開くと、その奥には、墨と硯と小筆、書写用の冊子と、呪文辞書。その、5
点セットが、長机の上にズラリと並んでいた。僕はその量に驚きながら、
「そういえば、小さい頃もやらされたな。確か、5分くらいで投げ出した気が...。」
と、ため息をつく。
そして、全員が席につくと、「始め」の合図が出た。これから、2時間、書き取りを続けなけねばならない。考えるだけで、気が遠くなる。しかし、やらねば!僕は、そう自分に言い聞かせ、墨を磨り、白紙の冊子に筆を入れた。
体感では、もう1時間は経っている。しかし、壁の時計を見てみると、まだ30分余りしか経っていない。僕はまた、書き写しに戻った。そして、この頃、失格者が増え始める。
やっと、1時間。すでに、体感では2時間を越えている。それでも、懲りずに僕は、呪文を書き綴る。中には、とても長い呪文があったが、それらも何とか書き続ける。
開始から、約1時間30分。残っている者は僕を含めて、20人余り。ここまで、減るとやる気が失せてくるが、あと30分書き続ければ終わる。僕は、自分にそう言い聞かせて、呪文を書き続けた。
そして、ついに2時間が経った。残ったのは、僕と、14人の人々。ちなみに、失格者は、転送装置から地上に戻されたと言う。そっちの方が楽だったかもな。そんな未練を持ちながら、僕は部屋を立ち去った。
しかし、1日目から厳しすぎないか?初めは、100人近くいたのに15人まで減ってしまう第1試験というのは、どうなのだろか?そんな、疑念を覚えるが、最終的に、聖剣士にはそれだけの信念が必要なのだと思い至った。明日はもっと厳しくなるだろうな。そう思うと、何だか腰が引けてくる気がした。




