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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 悪夢と悪夢 ――ウロボロス本部――
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第82話 暗躍の元総帥

 【ウロボロス本部 内周エリア 市街地】


[レベル6の緊急事態を感知。セキュリティ・システム作動。危機の排除を奨励]


 私たちの進もうとする道が、黄色の電磁シールドで塞がれる。


「う、うぅあぁ……」


 黄緑色をしたサイエンネット・モンスターが、うめき声を上げながら私たちに向かって走ってくる。ボルカが電撃を纏った槍で、複数体の怪物を斬り殺す。

 内周エリアはどこもサイエンネット・モンスターで溢れていた。その怪物たちを敵とみなし、防衛系セキュリティ・システムが作動する。

 いつの間にか土砂降りになった雨が、私たちの身体から体温を奪う。ウロボロス本部は北方大陸の東海上という位置にある。この氷のような雨は、いつ雪に変わってもおかしくはない。


「ヤバイね、ちょっと体力減ってきたかもっ」


 ホノカが弱音を漏らす。無理もない。彼女は炎のイノベーション。氷のように冷たいこの雨は、彼女から刻一刻と力を奪う。

 すでにミズカは戦闘不能で、ブリュンヒルデに背負われている。ヒュンドラの巨大化も、こう複雑に入り組んだ路地では使えない。


「小型戦闘機か、ガンシップ、もしくは飛行ユニットを奪った方がいいかも知れないな」


 私は襲ってきた怪物を真っ二つに斬り倒しながら提案する。もう何十回と襲われただろうか。小道の多くは封鎖され、メインストリートは怪物と機械で溢れている。こうなると、残る道は1つしかない。――空の道だ。


「ヒュンドラ、この辺りに小型機のプラットホームはあるか?」


 真っ赤な血を振り払いながら聞く。コマンダー・ライジングを名乗っていたVクローンは、やや離れた建物を指さす。なるほど。あの建物が小型機プラットホームか。今、小型の飛行ユニットが数機飛び出していった。


「行くぞ」


 私は建物を目指して足を進める。だが、――


「ワたし、……ぁあ」

「邪魔だ!」


 私は黄緑色の人型モンスターを斬り捨てる。変異しかかった彼女の身体は、斬り口から血を噴いて階下へと落ちていく。


「フィルドさん!」

「…………!」


 階下から3体の怪物が飛び出す。いずれも両腕が翼と化した浮遊タイプのサイエンネット・モンスターだ。


「ブリュンヒルデ、ヒュンドラ、先に行け! パトラー、2人の援護を頼む!」

「イエッサー!」


 ミズカを抱きかかえるブリュンヒルデとパトラー、ヒュンドラを先に行かせた私は、バスターソードを銃に変形させる。


「来たか」


 黄緑色の翼を持つ3体のサイエンネット・モンスターは、その双翼に電撃を纏い、身体を素早く回転させる。彼女の翼から電撃を帯びた斬撃が飛ぶ。

 私の前にボルカが飛び出し、電気エネルギーを有する斬撃を受ける。斬撃は彼女の身体に吸収される。そして、そのエネルギーを電撃弾として放出する。輝く雷の魔法弾が怪物の1体に着弾する。雷鳴が轟き、そのモンスターは倒れる。黒く焦げていた。


「ほら、おいでよ!」


 ボルカが飛ぶサイエンネット・モンスターを挑発する。その言葉の意味を理解できる知能や理性は持ち合わせてはいないだろうが、2体の怪物は身体に激しい電撃を纏い、突っ込んでくる。普通の人間やクローンなら、感電して即死だろう。

 だがボルカは、勢いよく突っ込んできた怪物を素手で受け止める。そしてその怪物の頭にナイフを突き刺す。


「…………!」


 最後に生き残った1体が狙うのは私だった。私はバスター・ソードの銃口を迫る怪物に向け、白色をした衝撃波を纏う銃弾を数発飛ばす。発砲した途端、やや強い反動を自身の腕に受けながらも、白い弾丸は正確に怪物の頭や肩を砕く。怪物が私の側に転がる頃には、命も電撃も失われていた。


「行こう」


 サイエンネット・モンスターを始末した私たちは、ブリュンヒルデの後を追おうとする。だが、急に私たちの前に誰かが飛び降りてくる。黒地に紫色のローブを被った――人間だ。


「……あら、奇遇ね」

「誰だ?」


 私はバスター・ソードの銃口を突きつける。声からして女であろうは人間は、そんな私の行動に恐れを抱くことなく、口端で声もなく笑う。


「安心しなさい。私は神聖レナトゥスの人間じゃないわ」

「ならなぜここに?」

「秘密」


 そう言うと、女は私たちの後ろ――さっきまで私たちが行こうとした方向へと足を進める。道をふさぐ黄色い電子ゲートの前まで進むと、ゲート右側にある管理パネルに触れる。パスコードを入力すると、電子ゲートは姿を消す。


「ごきげんよう……」


 女は去り際に、ふと私たちを振り返る。深く被られたローブの端にオレンジ色の髪の毛が見えた。まさか、この女は――。


「神聖レナトゥス総帥ローリングの殺害。それがお前の目的か?」

「…………」


 女は答えずに去っていく。私も彼女に背を向け、ブリュンヒルデたちの元へと足を向ける。


「知り合いですか?」

「……会ったのは初めてだが、知らない人間ではない。あの女も私のことは知っているだろう」


 私は彼女が誰なのか見当はついていた。ウロボロス本部にいる神聖レナトゥス所属ではない女。パスコードの解除。オレンジ色の髪の毛。

 彼女は恐らく、ローリングのクーデタによって崩壊した神聖レナトゥスの前身組織「ビリオン=レナトゥス」のヒライルー総帥だろう――。

 シュニーの言ったことが蘇る。――あの人は死んでなんかいない。なるほどな。確かにまだ生きているようだ。

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