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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 輝けるマナ ――廃都グリードシティ――
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第37話 ビスケットとクッキー

 ビスケットとクッキー。

 私が初めてその名を聞いたのは、前々時代の大戦末期――「国際政府」と「連合政府」が覇権を巡って争った『ラグナロク大戦』の末期だった。

 連合政府は私のクローンを無数に量産して、次々と戦場に投入していた。それはまさに機械兵器と同じだったのかも知れない。クッキーとビスケットはそんな無数に作られたクローンの1人にすぎなかった。


「クッキーです。よろしくお願いします……」

「あ、あたしはビスケットだ……」


 国際政府は「臨時政府」を創設し、連合政府は臨時政府率いる軍勢に大敗。首都防衛を任されていた2人は、クローンを使い捨てにする連合政府をとうに見限っていて、早々に私たち臨時政府に降伏した。


「クラスタ将軍、首都防衛だったクッキーとビスケット、どうする?」

「……能力を見てみたが、大した力はないみたいだな。まぁ、それでも私たちに降伏してきたんだ。ティト地域の防衛でも任せてみようか」


 臨時政府の筆頭将軍だったクラスタは、2人の能力を評価していなかった。それは、シリカや私も同じだった。

 結局、臨時政府が「クリスター政府」として国際政府から分離・独立した後、クラスタはクリスター政府防衛軍ティト州担当にプライシアとあの2人を任命した。連合政府や国際政府との戦いに参加させることはなかった。


「あたしたち、あまり評価されてないみたいだな……」

「まぁ、仕方ないですよ。私たちはフィルド将軍やパトラー将軍、シリカ将軍みたいに強いワケじゃないですし……」


 私たちが連合政府と死闘を繰り広げている間も、プライシアと2人は中央大陸で穏やかな日々を過ごしていたらしい。それは幸せな時間だったのかも知れない。だが、――


「――クッキーとビスケット? ああ、知ってるわよ。あの能無しの中将でしょ?」

「そうそう、あの2人。さっき聞いたんだけど、旧連合政府所属のクローンを引き留めるためだけにいるらしいんだってさ」

「あぁ、やっぱりね。能力ないもんね~」

「そこよ、そこ」

「えっ?」

「連合政府が倒れた今、フェスター政府代表はクリスター防衛軍の縮小を考えてるらしいわよ。でね、プライシア将軍はいいんだけど、クッキーとビスケットの2人は早期退官をお願いするんだって」

「……ふふ、それってさぁ、――」

「――事実上のクビよ、クビ!」


 国際政府が倒れ、連合政府さえもが滅んだ今、初代のクリスター政府代表フェスターはクリスター防衛軍の縮小を検討していた。そもそも、クリスター防衛軍はクローン兵を中心に、あまりに数が多く、質の向上が求められていた。

 何十万人ものクローン兵が早期退官の対象になっていた。下位の士官ならいいだろう。だが、中将クラスのクローンが早期退官対象というのは、事実上のクビを公にするようなものだった。つまり、“政府公認能無しクローン”ということになる。中将クラスで早期退官はこの2人だけだった。



「2人は一生懸命やってますよ! 確かに能力は他の中将たちに比べて劣ってるかもしれないですけど、それでも早期退官なんて、あまりにひどいじゃないですか!」

「すまない、プライシア将軍……。それでも、現職の中将を、尉官や一兵卒で使うワケにもいかないんだ。彼女たちだって、そこまで降格したらイヤだろう……」


 降格と退官。どちらを取っても、彼女たちの名誉は守られない。苦悩の果てに出た答えが、早期退官。これなら、彼女たちの命は守られる。降格で一兵卒になったら、前線に送られることもある。死の危険だってある。それならば――。これがフェスターらクリスター政府執行部の答えだった。

 だが、――



[最得票者――クラスタ=セルヴィタス議員!]


 クリスター防衛軍が再編される前に、フェスター政府代表は病死。代わって、クラスタが政府代表に選出され、新しくクラスタ執行部が発足する――。

 クラスタ新代表はクリスター防衛軍の強化を打ち出す同時に、他国との同盟・不可侵条約を破棄。クッキーとビスケットの早期退官も取り消しとなった。


 この一件からビスケットとクッキーは自身の戦い方を見直し、血の滲むような努力を始めた。私やパトラーの戦い方、使用魔法を研究し、応用する戦い方を編み出した。だが、状況は彼女たちの努力をあざ笑うかのような方向で進んだ。



「これが我が国の新しい技術――ヴァルキュリア・クローンか……!」


 ヴァルキュリア・ブリュンヒルデとヴァルキュリア・フウカが開発され、個人の戦闘はもはや、かつてないほどの高次元へと移動した。もはや、今までのFクローンや人間では到底追いつかないほどにまで戦闘は高度化した。

 そして、フウカをヒントに開発されたイノベーション・クローン4人を加え、クリスター政府は戦いを続けていく。そこにビスケットとクッキーの姿はなかった。



「クラスタ政府代表はクリスター政府を私物のごとく扱い、幾億もの人々を振り回しています。私は彼女の独裁を容認できず、全市民のためにクリスター政府を解散させます。そして、より安全で、より安定した強力な統治機構「ヴァルハラ政府」を創設します――!」


 やがて、ブリュンヒルデはクラスタを裏切り、クリスター政府を引き継ぐ形でヴァルハラ帝国を創設した。だが、クリスター政府筆頭将軍ソフィアはその動きに反発し、他国と共にルミエール政府を創設する。

 2人はイノベーション・クローンやヴァルキュリア・クローンのいないルミエール政府に加わった。そこが自分たちの居場所だと思ったのだろう。

 ルミエール政府を創設したソフィアは、2人を努力と能力を認めたのだろう。彼女は2人をルミエール政府中将に任命した。2人にとっては、このルミエール政府こそが唯一の居場所なのかも知れない……。

  <<コミットのメモ書き>>


 【ビスケット】


◆基本データ

 ◇性別:女性

 ◇種族:Fクローン

 ◇所属:連合政府→クリスター政府→ルミエール政府

 ◇戦闘:基礎魔法、高度魔法、ラグナロク魔法



◆概要

 ルミエール政府の中将です。元々はクリスター政府に所属していましたが、その頃はあまり活躍の場はなかったようです。早期退官の対象になっていることを知り、相棒のクッキーと一緒に相当の鍛錬を積み、今では名実ともに中将クラスです。

 彼女はビスケットを召喚しますが、これは魔法発生装置によるものです。非常食にもなるようです。また、ラグナロク魔法を応用することで、兵士にすることもできるようです。




 【クッキー】


◆基本データ

 ◇性別:女性

 ◇種族:Fクローン

 ◇所属:連合政府→クリスター政府→ルミエール政府

 ◇戦闘:基礎魔法、高度魔法、ラグナロク魔法



◆概要

 ルミエール政府の中将です。元々はクリスター政府に所属していましたが、その頃はあまり活躍の場はなかったようです。早期退官の対象になっていることを知り、相棒のビスケットと一緒に相当の鍛錬を積み、今では名実ともに中将クラスです。……って、これじゃビスケットさんとほとんど同じ説明ですね(笑)

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