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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 輝けるマナ ――廃都グリードシティ――
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第38話 政府首都グリードシティにて

「…………」


 高層の建物が連なる世界最大の巨大都市。1800年もの間、世界の中心であり続けた最大の街。世界を支える政治と経済の中心地。……それが『政府首都グリードシティ』だった――。

 けれども、その姿は消え失せた。「国際政府」から分離・独立した「クリスター政府」は、生みの親を殺さんとばかりに国際政府に戦争を仕掛けた。

 首都決戦となった『グリードシティの戦い』で、世界最大の首都は滅び去った。最後の国際政府代表クェリアは、首都を巻き添えに、クリスター政府軍を皆殺しにしようとした。無茶苦茶な戦いで、首都は廃墟と化した。


――“白き夢、永劫の時を治めた街を廃墟に還す”


 私は青く色あせた『政府首都グリードシティ』を歩いていた。薄い青色の日が沈もうとしている。美しい都市には誰もいない。


――そなたの故郷は、そなたの友と敵によって滅ぼされた。


 グリードシティ上層の遊歩道から都市の遥か下を覗き込む。巨大な建築物の間は、深い谷間のようになっている。底は見えない。この歩道から何千メートルも下に地面があるからだ。

 私はこの光景に懐かしさを感じながら、再び足を進める。――ここは私の生まれ育った故郷だ。お父さんとずっと一緒に暮らしてきた街。


――オイジュスの父娘、邪神のしもべに抗う。


 また頭に誰かの声が流れてくる。


「それ、私のことを言っているの?」


 私は元老院議事堂の正門前に立つ。白い純白のクリスタルで出来た政治・経済の中枢施設だ。お父さんは元老院議員だった。私も幾度となくここに入ったことがある。


「父、邪神のしもべを内より脅かし死す。――当然、そなたの父のことだ」


 不意に元老院議事堂の正門が開かれる。銅色のクリスタルで作られた扉が左右に開かれ、中から白色のフードを被った人間がゆっくりと現れる。


「お前は……」

「国際政府という永劫の時を治めた統治機構は、邪神の御使いに乗っ取られていた」


 白いフードの人間は、そう口にしながらこっちに歩いてくる。何度も頭に流れていた女性の声と同じ声だ。


「その御使いの計画を妨害し続けたそなたの父。けれども、父は御使いによりて命を失う。後に、そなたは御使いの首を斬る」

「…………! そっか、御使いって……」


 白いフードを被った女性は私の側に来ると、後ろからそっと私を抱きしめ、耳元で囁く。私は抵抗しなかった。なんだか、頭に薄い膜が張ったような感じがする。この異様な世界にいるのに、なぜか私は落ち着いている。


「御使い――パトフォー=ラグナロクは、邪神のしもべ。彼がオイジュスの娘――そなたによりて命を失うこと、運命の定め。定められた運命は果たされたのだ」

「あ、あなたは誰……?」

「…………」


 背後にいた女性は、私から離れると再び目の前に立つ。そして、ゆっくりと白いフードを脱ぎ捨てる。――黄色の髪の毛に薄い青色の目、美しく整った顔立ち……。そうか、この人――


「――ブリジット=オイジュス。そなたの“姪”だ」

「ルミエール政府代表ブリジット閣下、とでも呼んだほうがいいかな?」


 私は記憶を遡りながら彼女のことを思い出そうとする。ブリジット=オイジュス。お母さんの姉が生んだ娘。ずっと地方で古代史や神話の研究をしていると聞いたことがある。会ったことはあまりない。


「ルミエール政府代表か……。なんとでも呼ぶがいい」

「で、私をこの世界に引き込んだ理由は?」

「…………。運命は定められている。『ヴァルハラ帝国がグリードシティで、エンドレス・クリスタルを入手する』という運命は存在しない」

「じゃぁ、エンドレス・クリスタルはルミエール政府の手に渡るっていうこと? それが定められた運命とやらなのか?」


 私がそこまで言ったときだった。ブリジットの身体がふわりと宙に浮かび上がる。彼女の背後に光り輝く巨大な魔法陣が形成されていく。


――輝けるマナをヴァルキュリアに渡してはならぬ。最高の力を有し者、運命を変える力を持つ。輝けるマナは終焉の日、女神再臨に必要な物。

「なっ……!?」


 私はあまりに強い光に圧倒されつつも、ブリジットの言葉を確かに受け取っていた。同時に、驚きもあった。ブリジットは人間のハズだ。なぜ魔法を……!?


「ブ、ブリジットっ、お前パーフェクターかサイエンネッターだったのかっ!?」

――否。


 極めて複雑な幾何学上の魔法陣は、更に巨大化していき、光は強さを増していく。もはや目の前は目を開けていられないほどの光。


「えっ……!?」


 光の中で私は確かに見た。


――パトラー……。


 1人の男性がいる。光が強すぎるせいでよく見えないけど、私はその人が誰なのかすぐに分かった。御使いによって殺された私の――


「――お父さん!」


 私が手を伸ばそうとしたとき、強い風が目の前から吹き付け、私の身体は吹き飛ばされる。急速にお父さんの姿が小さくなっていく。


――オイジュスの娘よ、最高の力を有し者を導け。定められし運命が果たされた時、女神はそなたの希望と光の再生を約束しよう――。

「…………!!?」


 光が遥か遠のく。私の身体は闇の世界をへと落ちていく。

 最高の力を有し者を導け。そうすれば女神は私の希望と光を再生させる。確実な意味は分からない。でも、もし私の望む意味なら、それは私のお母さんとお父さんの再生だ。私のお母さんはホープ=オイジュス、お父さんはライト=オイジュスだ――。

  <<コミットのメモ書き>>


 【ライト=オイジュス】


◆基本データ

 ◇性別:男性

 ◇種族:人間

 ◇所属:国際政府(政府代表代行)

 ◇戦闘:――――



◆概要

 パトラー=オイジュス将軍の父です。国際政府=マグフェルト執行部で政府代表代行を務めていました。彼自身はマグフェルト氏が国際政府を乗っ取り、裏で『ラグナディス計画』を進めていることに気がついていて、政治家としての立場から様々な抵抗をしていたようです。

 しかし、最後はパトラー将軍を誘い出す囮として使われ、彼女の目の前で殺されてしまったとのことです。

 




 【パトフォー=ラグナロク】


◆基本データ

 ◇性別:男性

 ◇種族:人間

 ◇所属:神議会(議長)/国際政府(政府代表→総統)/連合政府

 ◇戦闘:ラグナロク魔法の使い手



◆概要

 神議会の進める計画『ラグナディス計画』を完成させるため送り込まれた男。クリスター政府時代、パトラー=オイジュス将軍によって倒されました。

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