第九十九話 バルモス攻略の準備
カレンの機転で、コルヴァスはモルティナの依頼を受ける事になりました。
「それで樹海の魔女よ、オレ様に頼みとは何なのだ?」
「あぁ、なに、簡単な事さね!」
「あんたに捜してもらいたい鳥がいるんだよ」
「はぁ?鳥を捜すのか?」
「そうさ!」
「グリムホルンを捜して欲しいのさ」
「でも、ただのグリムホルンじゃないよ!」
「つがいのグリムホルンで、いま雛を育てているヤツをね!」
「なにぃ~?」
「そんな面倒くさいヤツを捜せっていうのかよ?」
「チッ!割に合わねえ仕事だぜ!」
コルヴァスが嫌そうな顔をして舌打ちをすると、いつの間にか背後に回っていたカレンが、耳元で囁きました。
「うふふっ・・・」
「それって、自分の命と天秤にかけても割に合わないの?」
「ヒエ~~~ッ!」
「カ、カレンお嬢様!!」
「も、もちろん、やります!」
「あっ、いや、やらせていただきますです!!」
「よろしい!」
「じゃぁ、出来るだけ早くお願いね、コルヴァスちゃん!」
「は、はい!もちろんですとも!」
もみ手をしながらそう返事したコルヴァスは、大きな声で鳴き声を上げました。
「カア~~~~~~ッ!!!!」
すると、瞬く間に森中のカラスが集まって来ます。
カア!カア!カア!カア!カア!カア!・・・・・
あっと言う間に、数百羽のカラスがコルヴァスの周りに集まって来ました。
そしてその中の一羽のカラスが、代表してコルヴァスに尋ねます。
カア~~!
『親ビン、何か用ですかい?』
『おう、お前ら!かくかくしかじかで・・・・』
『りょうかいっす!』
『ところで親ビン、あの娘さん達と友達になったんすか?』
『おっ?』
『ま、まぁな!ぜひにと頼まれてな!』
『カッ、カッ、カァ~ッ!』
『さすがっすね、親ビン!』
『あの娘ですよね!先の戦闘で1000匹以上の魔物を倒したって娘!』
ガビ~~~ン!!
『な、なんだと?!』
『あれ?親ビン知らなかったんすか?』
『メチャクチャ強かったそうですよ?』
『バ、バカ野郎!オレ様が知らない訳ねえだろ!』
『そうっすよね!』
『とにかく、急ぎの依頼だからな!』
『は~~~い!』
カァ~~~ッ!!!
代表のカラスがひと鳴きすると、カラスの群れは方々へ散って行きました。
「あ、あの・・・カレンお嬢様!」
「この仕事が上手く行った暁には、アッシを子分にしてもらえないでしょうか?」
「えっ!オレの子分になりたいの?」
「へ、へい!何でも魔物からこの森を守ってくれたって・・・」
「子分たちから聞いたもので・・・」
(おい、おい!カラス王がカレン嬢の子分って、マジかよ?)
ジャックは信じられないと言った顔で、カレンの返事を窺っています。
「う~~~ん、どうしょうかなぁ・・・」
人差し指を頬に当ててカレンが悩んでいると、モルティナがそっと耳打ちしました。
「カレン嬢、グリムホルンを手なずけるのには、あいつの通訳が必要さね・・・」
「それに情報を集めるのにも、あいつがいると便利だよ!」
「それも、そうだな!」
「実はオレも、Aランクのティマーだしな!」
「魔物を扱うのは得意なんだ!」
「えっ、そうなのかい?」
「本当に引き出しの多い娘だね!さすがはあたしの娘さね!」
「よし、分かった!」
「ティマーとして、お前を仲間にしてやるよ!」
「おぉ!本当ですか?!」
「で、では、これからカレン様の事を、『アネゴ』とお呼びしても?」
「いいよ!仲良くやろうぜ、コルちゃん!」
「やった~~~!!」
「では、アネゴ!アッシも捜しに行ってまいりやす!」
「あぁ、頼んだよ!上手く行ったら、契約を結んでやるからな!」
「合点承知の助~~~!!!」
コルヴァスは大きな翼を広げると、猛然と飛び立って行きました。
「あっ、はっ、はっ・・・」
「あいつ、面白いしゃべり方をするな!」
「これからは、あいつのことを『コル助』って呼ぼうかな・・・」
カレンは飛び立つコルヴァスを見て、愉快そうに笑いました。
その様子を、驚いた顔でジャックが見ています。
(ティマーと契約って・・・)
(なんか、すごい事になってきたな・・・)
(ハッ!)
(まさか!オイラも手なずけられるんじゃないだろうな?)
(オイラは絶対にバルモスの監獄には行かねえぞ!)
ジャックはキリッとした顔で、カレンを睨みました。
「あれ?難しい顔してどうしたの?」
ジャックの視線に気づいたカレンが、声を掛けました。
「オイラは行かねえぞ!」
そう言うと、どこかへ飛んで行ってしまいました。
「行かないって・・・」
「あっ、そっか!ジャックも虫が苦手なのか?!」
「オレと一緒じゃん!」
コルヴァスが飛んで行くのを確認したモルティナは、早速次の準備に取りかかります。
「さてと・・・」
「じゃぁ、あたしたちは、巨大バクダンオオアリの様子を見に行くかね?」
「そうですね、今からだと、明るいうちに帰ってこられるかも知れないですからね!」
「カレン様、イレーネちゃんにお願いしてくれますか?」
「うん、分かった!」
カレン達はイレーネに乗って、古苔の森へ向かいました。
今度は目印の旗を立てていたので、迷うことなく4時間ほどで目的地に到着しました。
「カレン様は、ここで待っていて下さいね!」
イレーネの背中から飛び降りたアリスとモルティナは、仕掛けていた魔法のアイテムボックスを回収し、中を確認してみました。
「うひ、ひ、ひ、ひ、ひ・・・」
「うじゃうじゃ取れているさね!」
「ほんとに?」
アリスもアイテムボックスの中を覗き込みました。
「あっ、すご~い!」
「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ・・・」
「どれ、カレン嬢にも見せてあげるかね?」
「あっ!ダメ、ダメ!」
「そんな事をしたら意識が吹っ飛んで、プラズマバーストを発動させちゃうよ!」
「そ、そっか!」
「じゃあ、これはあたしが預かっておくからね!」
モルティナはアイテムボックスを懐にしまうと、急いで帰路につきました。
カレン達がグリーンホロウの町へ到着したのは、秋の日がすでに落ち、辺りがすっかり暗くなってからでした。
「魔女ママ、後はカラスがフクロウを探し出すのを待つだけだね!」
「そうだよ、カレン嬢!」
「いつでも旅立てる準備をしておくさね!」
「オッケー!」
カレンとアリスは、意気揚々と天幕へ帰って行きました。




