第百話 準備完了!
カラス王コルヴァスから連絡が入ったのは、2日後の11月24日の昼過ぎでした。
「見つけたのかい?」
「雛を育てている、つがいのグリムホルンを!」
モルティナの質問に、コルヴァスは自信満々に答えます。
「もちろんでさぁ!」
「逃げ出さないよう、子分共に見張らせていますぜ!」
「よし、じゃあ行こう!」
カレンは指笛を吹いて、イレーネを呼びました。
グリムホルンの巣は、森の外れにある目立たない木のウロの中でした。
その木の周りには、おびただしい数のカラスが群がっていたので、場所はすぐに特定できました。
ウロの中では、この異常事態に怯えたつがいのグリムホルンが、三羽の雛を抱いて震えています。
「じゃあ、打ち合わせ通りに頼んだよ!」
「がってんだ~!」
モルティナから指示を受けたコルヴァスは、シュルシュルと縮んで普通サイズのカラスに変身すると、ウロの前まで飛んで行きました。
「あっ!あいつ身体を小さく出来るのか?」
カレンが驚いてモルティナに尋ねました。
「そうみたいだね!」
「いつも大きな図体で威張っていたから、あたしも知らなかったよ!」
ウロの前まで来るとコルヴァスは、一声鳴いて中のグリムホルンを威嚇しました。
「カ~~~ッ!!」
『オレ様の名はコルヴァス!』
『カラス王コルヴァス様だ!』
『オレ様の事は、知っているよな?』
ホッ、ホ~~!
『もちろん、知っているとも!』
『だが、わたし達に危害を加えるのなら、たとえカラス王でも、ただではおかんぞ!』
『カッ、カッ、カア~!』
『いい度胸だ!』
『だが、安心しろ!』
『オレ様の頼みを聞いてくれるのなら、家族に危害はくわえんよ』
『それどころか、お前たちの子供が無事に巣立つまで、オレ達が守ってやるぞ?』
『それは、どういう事だ?』
『なに、簡単な事よ!』
『いま下で、オレの御主人様が待っておられる!』
『その御方が、お前の力を借りたいそうだ』
『わたしの力を?』
『うむ、言っておくが、御主人様はこの森を魔物の群れから救った勇者様だ』
『その御方が、お前の力を借りたいと言っておるのだ!』
『よく考えて返事をするのだな・・・』
『分かった、家族と相談するから、少し時間をくれ』
相談すると言っても、一羽や二羽のカラスなら、夫婦で力を合わせれば何とか撃退できるでしょうが、数百羽のカラスが相手では勝ち目はありません。
問題はコルヴァスの話が、本当に信用できるかどうかなのです。
夫婦が悩んでいる時でした。
カァ~~ッ!!
一羽のカラスがウロの前にやって来ました。
『どうかしたのか?』
コルヴァスが子分のカラスに尋ねました。
『親ビン!』
『この蛇の野郎が、この巣を狙っていやがったので、やっつけておきやした!』
見ると、以前からこの巣を狙っていた、天敵の蛇でした。
『よくやった!』
『これからも、ここを狙って来るヤツは容赦なく蹴散らせ!』
『へい!がってんでさ!』
コルヴァスは頭の良いカラスです。
ここの巣を発見した時に、カラスたちに命じて、自分たちを信用させるための情報を集めていたのでした。
『わかりましたカラス王!』
『あなたの言葉を信じましょう!』
『うむ!』
『安心しろ!用事が済めば、すぐにここへ戻してやるぞ!』
『カッ、カッ、カ~ッ!』
こうして無事にグリムホルンを懐柔したコルヴァスは、カレンと契約を結ぶことが出来ました。
「よくやったぞ、コル助!」
カレンはコルヴァスの頭をナデナデしてあげると、嬉しそうに尾っぽをブンブン振って喜んでいます。
(これがほんの数日前まで、威張り散らしていたカラス王かよ・・・)
ジャックはガックリとうなだれています。
「ひっ、ひっ、ひっ・・・」
「さぁ、準備は整ったさね!」
「よし!じゃあ、バルモスの監獄をぶっ壊しに行くぜ!」
カレンが右手を挙げて、気合を入れた時でした。
「あっ!オイラは行かねえからな!」
ジャックが慌てて言いました。
「えっ!なんで?」
カレンが不思議そうな顔で、ジャックに尋ねました。
「いや、なんでそんな不思議そうな顔をしてんの?」
「オイラは、最初から行かねえって言っていたよね?」
「え~っ!ジャックがいないと寂しいじゃん!」
(えっ?そうなのか?)
(いや、いや!オイラは懐柔されねえぞ!)
「いや!オイラは行かねえからな!」
ジャックは、キッパリと断りました。
「だけど魔女ママもいなくなったら、ジャックも独りでつまんないだろ?」
「ほかに誰か、仲のいい妖精とかいるの?」
「い、いねえよ!」
「カレン嬢、実は・・・」
「ジャックはいたずらが過ぎて、妖精の里を追い出されてしまったんだよ」
「えっ、そうなの?」
「あぁ、そうさ!」
「そして独りで森を彷徨っていたところを、あたしと出会ったのさ」
「あたしも長いあいだ独りで暮らしていたから、お互い気が合ってね」
「それで、あたしの使い魔になってくれたのさ」
「なんだ、そっか!」
「じゃあジャック、オレと一緒においでよ!」
「ゲッ!なんでそうなるんだよ!?」
「オレの仲間の召喚士に、妖精と契約を結んでいる子がいるんだよ」
「えっ、本当に?」
「うん、リーファって言う、すごくかわいい女の子だよ!」
「えっと確か・・・」
「そう、聖光樹の妖精って言っていたけど、知らない?」
「え~~~っ!聖光樹だって?!」
「じゃあ、エルデリーナ様の子供なのか?!」
「そんなすごい妖精が、人間と契約を結んでいるのかよ?」
「いや、確かポンポンはダークエルフだったな・・・」
「でも、聖光樹の妖精って、そんなにすごいの?」
ジャックがあまりに驚いているので、カレンが不思議に思って聞いてみました。
「カレン嬢、ジャックが驚くのも無理はないさね!」
「聖光樹とは、いずれ世界樹になるであろうと言われている、すごい木なのさ」
「えっ、世界樹ってなに?」
「世界樹とは、天と地上と地下を結ぶ存在で、生命の源、神聖な木と言われていてね、とにかくすごい存在なのさ」
「ふ~~ん、知らなかったわ・・・」
「あのリーファちゃんが、そんなすごい子だったとはね~」
「どうだい、ジャック!」
「そのリーファちゃんに、会ってみては?」
「えっ!?」
「お前も、いつまでも妖精界から逃げていては、ダメになってしまうよ?」
「あたしも、ようやく愛しい娘と出会えたんだ!」
「これからはカレン嬢と共に、いままで蓄えた知識を、この世界のために活かそうと決心したのさ!」
「・・・・・・」
「わかった・・・」
「モルティナ様は頼りないから、オイラが一緒に行ってやるよ!」
「ひっ、ひっ、ひっ・・・」
「そりゃ、助かるね!」
「よ~~し!じゃあ、いくぜ~っ!!」
「待ってろよ、フレディア!!」
バルモス攻略の秘策を持って、カレン達はアルガの町へ飛び立ちました。
ようやく百話まで書き終えました。
ここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます。
前作までは、私が昔作ったゲームを元にして書いていましたが、今回は小説のために書き上げた、完全なオリジナルの作品です。
途中で何度か挫折しそうになりましたが、TVアニメの「これ描いて死ね」を観て励まされ、ようやくここまで来ました(笑)
物語はまだまだ続きますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
作者トド




