第百一話 バルモスの戦い(一)
カレン達がアルガの町へ到着したのは、4日後の11月28日でした。
「お~い!来たよ~!」
「みんないる~?」
ギリガンの家の前でカレンが呼ぶと、中からカミラさんが急いで出てきました。
「あら~っ!カレンちゃん、おかえり~!!」
「ただいま、カミラさん!」
「あらっ?」
「カレンちゃん、そちらの方は?」
「あっ、魔女ママ!こちらカミラさん」
「オレたちがお世話になっている、仲間のお母さんだよ!」
「どうも、初めまして」
「娘がいつも、お世話になっております」
「え~っ!カレンちゃんのお母さんですの?」
モルティナを本当のカレンの母親と勘違いしたカミラさんは、猛然と息子推しのスイッチが入ってしまいました。
「いえ、いえ、いえ!こちらこそ、お世話になっておりますわ!」
「カレンちゃんには、息子のロックが良くしていただいていますのよ!」
「あぁ~、残念ですけど、息子のロックはいま、ここには居ませんの!」
「も~!本当に残念ですわ!」
ブン!ブン!ブン!
カミラさんは、ぎゅっと握った拳をぶんぶんと振り下ろし、すごく残念そうにしています!
「カレンちゃんのお母様がいらっしゃるなら、ぜひ息子のロックに会っていただきたかったですわ!」
「母親のわたしの口から言うのも何ですが、優しくて良い子なのですのよ!」
「あぁ・・・もし、お母さまに気に入っていただけたら・・・・」
「ちょ、ちょっと、カミラさん!」
「あのね、魔女ママとは本当の親子じゃないのよ~!」
「えっ?」
「勘違いさせて、すみませんね!」
「優しいカレン嬢は、あたしのことを母親のように慕ってくれているので、あたしもつい、娘のように・・・」
「まぁ、まぁ、まぁ!」
「ごめんなさいね!わたしも調子に乗っちゃって~」
「てへへ・・・」
(なんか面白いな、このおばちゃん!)
舌を出して、思いっきり照れているカミラさんを、ジャックは興味津々で見ています。
「あっ、とにかくお疲れでしょうから!」
「さぁ、さぁ、中に入って!いまお茶の準備をしますから・・・」
「あらっ!」
「カレンちゃん、魔女ママさんの肩に乗っているのは・・・」
「あっ、ごめん!紹介するね!」
「この子はジャック!氷の精霊なの!」
「おばちゃん、よろしくな!」
「まぁ、かわいい子ね!」
「リーファちゃんと、お似合いじゃない~!」
「でしょ?オレもそう思うよ!」
「あららっ?」
「そう言えば、カレンちゃんの肩にも・・・」
「カレンちゃんの肩に乗っているのは、カラスとフクロウなのかしら?」
「それって、カレンちゃんのペットなの?」
カミラさんがコルヴァスの存在に気付くと、自分を主張したがるカラス王は、大きな姿に変身しました。
ボン!
シュルルル・・・
「カア~~~~~ッ!!」
「オレ様の名はコルヴァス!」
「カラスの王様だぞ!カァ~~~ッ!!」
「ひぇ~~!」
カミラさんが、いきなり巨大化したコルヴァスを見て悲鳴をあげた瞬間、カレンのゲンコツがコルヴァスの頭に炸裂しました。
ゴツン!!
「いて~~~~っ!!」
「このバカ!カミラさんを怖がらせてどうするのよ!!」
「すいやせん、アネゴ!」
「あわわわ・・・カラスがしゃべった!」
もう一度カミラさんが驚いたので、カレンはまた怒ってしまいます。
「もう!コル助はイレーネの所に戻っていなさい!」
「は、はい~~っ!」
「町の人も驚くから、普通のカラスに戻るのよ!」
「ひ~~~っ!合点承知の助~~!」
シュルルル・・・
普通サイズのカラスに戻ったコルヴァスは、慌ててイレーネの元へ飛び去りました。
「ごめんねカミラさん、驚かせてしまって」
「あははは・・・。カレンちゃん、すごいペットを飼っているのね~」
「とにかく、皆さん中へどうぞ~」
「すぐにお茶の用意をしますね!」
カミラさんは皆を家の中に招き入れると、お茶とお菓子の用意をしてくれました。
「おばちゃん、このお菓子うめえな~!」
「オイラこんなおいしいお菓子、初めて食べたよ!」
「そうかい?まだ沢山あるから、お代わりしてね!」
ジャックはカミラさんの用意してくれたイチゴ餅を食べて、超ご機嫌です。
「ところでカミラさん、フレディア達は・・・」
「えっ!みんなもう行っちゃったの?!」
「そうなのよ!」
「カーナちゃんと、オリビア様、シラさんとスージーちゃんは、カレンちゃんの帰りをずっと待っていたんだけどね~」
「4日前にベルナックの町へ出発しちゃったのよ!」
「そっか~・・・」
「それでカミラさん、カーナ達から何か聞いてる?」
「そう、そう!カレンちゃんが来たら、伝えてって言われていたわ!」
「バルモスの襲撃は、11月30日に決行するって!」
「「え~~~~っ!!」」
「魔女ママ、ここからベルナックの町まで、どれくらいかかるの?」
「そうさね・・・」
「やはり4日はかかるね!」
「大変!急いで行かなきゃ!」
席を立ったカレンを、カミラさんは慌てて引き留めました。
「あっ!ちょっとだけ待ってカレンちゃん!」
「すぐにお弁当を作るから!」
カミラさんが作ってくれたお弁当を持つと、カレン達は急いでベルナックの町へ向かいました。
その頃ベルナックの町では、先に行っていたフレディア達と、カーナ達がすでに合流していました。
町の一番大きな宿屋の大部屋に、今回の襲撃に参加するメンバーが集まって、作戦会議が行われていました。
「フレディア、準備は出来てんの?」
「うん、バッチリだよオリビア!」
「明後日、荷物に隠れて侵入する手はずは完璧よ!」
「それで今から作戦の話に入るけど、カレンがいないね?」
「カレンはどうしたの?」
「あぁ、それな・・・」
「詳しい事は、後で説明するわ!」
「わかった!」
「じゃぁ、作戦を言うね!」
最初にフレディアは、地形上のバルモスの守りの固さを説明しました。
まず、ドーム型の要塞の周りには水路が引かれ、堀の役目をしています。
堀の大きさは、幅が20メートルで深さが10メートル以上もあり、しかも凶暴な肉食魚が放たれているので、とても泳いで渡る事はできません。
そして要塞に行ける唯一の橋は跳ね橋で、普段は渡れないようになっているのです。
さらに、要塞全体に結界が張られているため、空からの侵入も不可能です。
「まさに鉄壁の守りやなぁ~」
「そっ!だから食料を運び込む時しか、潜入のチャンスがないのよ」
「わかった!じゃあ、具体的な作戦を頼むわ!」
「ラジャー!」
こうしてバルモスの監獄の襲撃作戦が、始まりました。




