第九十伍話 バルモスの監獄の秘密(二)
カレンは自分が抜けた後のチームを、モルティナに助けてもらおうと思っていたのですが、結局カレンに同行する事を決めたモルティナは、代わりにマウロとアリスに力を与えてくれました。
「じゃぁ、魔女ママはオレと一緒に来てくれるんだね?」
カレンの問いに、二人は即答します。
「もちろん行くに決まっているさね!」
「ねぇ、ジャック!」
「もちろん、オイラは嫌だぞ!」
「ひっ、ひっ、ひっ、そうだろ、そうだろ・・・」
「えっ?」
快く引き受けたモルティナに対して、使い魔のジャックは反対しました。
「だって、カレン嬢でも生きては帰れないって言ったよな!」
「そんなヤバイ所になんか、行きたくないぞ!」
「いや、だからあたし達も行って、助けてあげないと・・・」
モルティナは、困った顔をしてジャックをなだめますが、なかなかウンとは言いません。
そして最初に疑問を口にしていたアリスが、もう一度モルティナに確認しました。
「大魔女さん、バルモスの監獄って、いったい何がそんなにヤバイのですか?」
「う~~~ん・・・」
「それはねぇ~・・・」
「信じられないかも知れないが、良くお聞き!」
「バルモスの監獄と呼ばれているが、実はあれは監獄ではないのさ!」
「「「「えっ?監獄じゃないの?」」」」
「そう!あれは監獄のふりをしたダンジョンなのさ!」
「え~~~っ!」
「監獄じゃなくて、ダンジョンなの?」
「でもダンジョンなら、オレは何度も攻略してきたよ!」
カレンの言葉に、アリスが付け加えます。
「カレン様は、あの幻の遺跡と言われたヤーンの遺跡を攻略したのですよ!」
「そんなに難しい事ではないと思いますが?」
「なんと、あの伝説の遺跡を?!」
「それはすごいね!さすがはあたしの娘さね!」
「でもね、バルモスの監獄は、ちょっと今までのダンジョンとは違うのさ」
「それは、どういう事ですか?」
「アリス嬢、あんたは生きたダンジョンを攻略した事はあるかね?」
「えっ!い、生きたダンジョンですか?」
「い、いや・・・ダンジョンが生きているって、意味が分からないのですが・・・」
「うむ!」
「いいかね、バルモスはダンジョン自体が生きているのさ!」
「つまり、ダンジョンを作っているコアが存在するってことさ!」
「コ、コア・・・ですか?」
「で、そのコアが問題なのさ・・・」
「大魔女さん、コアの正体って、いったい何なのですか?」
アリスが直球で尋ねました。
「コアとは、ダンジョンを作り出す源なのさ!」
「で、そいつの正体は悪魔!」
「古代の悪魔バルモスさね!」
「「「「悪魔バルモス!!?」」」」
「そうさ、つまり監獄の中に入ると言う事は、バルモスの支配する領域に入る事になるのさ」
「そしてダンジョンの中に閉じ込められると、徐々に生気を吸い取られ、やがては屍と化してしまうのさ」
「やっぱ、すげ~ヤバイ所じゃん!」
「オイラは絶対に行かないからな!」
ジャックはブルブルと震えていますが、カレンは逆にやる気が出たようで、モルティナに尋ねました。
「でも、そのコアとなるバルモスをやっつければ、ダンジョンを攻略出来るんだろ?」
「そうさね!」
「でも、それが出来ないから困るのさ」
「えっ!バルモスって、そんなに強いの?」
「いや、恐らくカレン嬢の強さなら、倒せると思うさね!」
「だったら・・・」
「問題は、バルモスが姿を現さない事さね!」
「誰もバルモスの姿を見た者がいないって言うからね~」
「いくらカレン嬢が強くても、相手が姿を見せなければ、倒しようが無いさね!」
「あっ!そっか・・・」
「それに厄介なのは、ダンジョン中ではバルモスのルールに支配されるということさ!」
「バルモスのルールって?」
「ダンジョンの中では、魔法が使えないって話さね!」
「そして一番怖いのは、闇の属性を持っている者は、簡単にバルモスに操られてしまうって事だね!」
「まぁ、カレン嬢の仲間の天使様なら、その心配は無いだろうけど・・・」
「いずれにせよ、バルモスの正体を暴かなければ、倒しようが無いのさ!」
「え~~~っ!」
「魔女ママ、何かいい方法はないの?」
さすがのカレンも、見えない相手を倒す事は出来ません。
チームの皆も、何か良い手は無いか考えますが、聞こえて来るのは唸る声ばかりです。
「う~~~ん・・・・」
「バルモスの居場所を見つける方法ねぇ・・・」
「姿を隠す場所かぁ・・・」
しばらくの間、チームの面々は頭を痛めていましたが、最初に口を開いたのは、武闘家のポニーです。
「一番ベタなのは、ダンジョンの最下層だよね!」
「うむ、しかしバルモスの監獄は、地下3階ほどしかないそうじゃぞ?」
「臆病者のバルモスが、そんな浅いダンジョンの最下層に隠れているとは、考えにくいのじゃが・・・」
「そうなると、何かに擬態して身を隠しておるとか?」
マイオスがあご髭をしごきながら、難しい顔で答えました。
「それは、ありうるかも知れぬな!」
モルティナは、ウンウンと頷きます。
「それか、ダンジョンの壁の中に隠れているのかも?」
シーフーのメアリーの意見に、モルティナがピクリと反応しました。
「!!!」
「そうじゃ!それが一番安全な隠れ場所だよ!」
「うむ、それに間違いないさね!」
「やった~~!」
メアリーは大喜びで飛び跳ねますが、そんな彼女にマルティーが尋ねました。
「でも、それじゃぁ、見つけようがないよね?」
「あっ!」
メアリーは一瞬で、素に戻ってしまいました。
「「「「壁の中かぁ~~」」」」
大喜びしたのもつかの間、全員肩を落として消沈してしまいました。
しばらく沈黙が続いた後、モルティナは何か良い考えが浮かんだようで、ゆっくりと口を開きました。
「それなら、何とか出来るかも知れないさね!」
「えっ!本当に?」
カレンが驚いてモルティナに尋ねました。
「確認したい事があるので、明日あたしと一緒に家に来てくれるかい?」
「返事はそれからでもいいだろ?」
「ありがとう魔女ママ!それで十分だよ!」
カレンは大喜びで、モルティナをギュッと抱きしめました。
(ムギュッ!ぐ、ぐるぢい・・・)
(い、息が・・・・)
(あぁ、でもこのままこの娘に抱かれて死ねれば、本望かも・・・)
「ええっ!?」
「またかよ!?」
「いい加減にしろよな!」
ジャックは苦しそうにもがいているモルティナを見て、慌てて二人を引き離しました。




