第九十三話 グリーンホロウの戦い(二)
「あれって、カレンさんが新しく編み出した、ライトニング・クレストカットだよね?」
「いいなぁ~!オレもあんな魔法が使えたらなぁ~」
カレンの斬撃を見たマウロが、羨ましそうに言いました。
「あんたなら、使えるようになるさね!」
「えっ?!」
マウロの小言を聞いたモルティナが、あっさり答えたので、本人はビックリしています。
「本当ですか、大魔女さん?」
「あぁ、あんたは雷魔法に、適正があるようだからね!」
「まぁ、カレン嬢は特別だから、同じようにはなれないけどね」
「いや、俺もそこまでは望んでいないけど・・・」
「でも、俺も魔法を覚える事が出来るんですよね?」
「出来るともさ!あたしが教えてあげるさね!」
「本当ですか?!」
「やった~~~!!」
マウロは大喜びで飛び跳ねました。
「おいマウロ!俺たちもそろそろ行かないと、出番が無くなっちまうぞ!」
「えっ!」
飛び跳ねているマウロに、槍使いのコローニが声を掛けました。
見るとアリス達キャノンガールズは、すでに下へ降りて、門が開くのを待ち構えています。
「あっ!よし、俺達も行くぞ!」
マウロの号令と同時に、防壁の門が大きな音を立てて開きました。
「突撃~~~!!!」
「「「「「うお~~~~~っ!!!!」」」」
ライズの合図で、全軍が攻撃を開始しました。
まるで残った魔物を奪い合うように、猛然と戦場へ駆けて行きます。
その後を町の防衛隊が、大きな消火装置を押しながら続きました。
その様子を見たマウロとコローニ、マルティーは、急いで下へ駆け降りて行きます。
「あっ!オイラも行ってくる~!」
「あぁ、しっかりおやり!」
慌てて飛び去るジャックを見送ったモルティナは、一人だけポツンと立っている男がいる事に気付きました。
「おや?あんたは行かなくてもいいのかえ?」
「あっ、わし?」
「わしは今回、けが人の治療を任されておるから、急がなくてもいいんだよ」
「どれ、でも準備だけはしておくかな・・・」
そう言うと、マイオスはゆっくりと防壁を降りて行きました。
「ふう~~ん・・・治癒魔法のベテランもいるのかえ?」
「カレン嬢は、なかなかいい仲間を持っているようだね~」
魔力を使い果たして活躍出来なくなったモルティナは、防壁から身を乗り出して戦況を眺めました。
「ありゃりゃ?」
「もうほとんど勝負がついてしまったようだね!」
モルティナが言うように、地上では逃げ惑う魔物を、革命軍が追撃を始めました。
厄介だった獄門鳥やワイバーンは、ドラゴンの姿を見るなり大慌てで逃げて行きます。
「さて、あたしは帰って、領主に祝宴の準備を急がそうかね」
こうして早朝から始まった戦いは、太陽が真上に来る頃にはすでに決着がつき、今はくすぶっている森の消火活動が中心となっています。
この日の夜、町をあげて盛大な祝勝パーティーが開かれました。
町のいたる所で酒やごちそうが振舞われ、人々は自由を勝ち取った喜びを、心ゆくまで楽しんでいます。
そんな町中が盛り上がっているさなか、イレーネファイターズは、作戦本部の天幕に集まって、何やら相談をしていました。
その中には大魔女モルティナと、使い魔のジャックの姿もあります。
事の発端は、モルティナの一言がきっかけでした。
「カレン嬢、これで町は平和を取り戻したけど、この後どうするさね?」
「このまま町に残って、敵の侵略を阻止するのかえ?」
「それとも・・・」
「魔女ママ、実はその事なんだけど・・・」
「後でオレの相談に乗ってくれないか?」
「勿論さね!」
「かわいい娘のためなら、何だってしてあげるよ!」
(おい!過保護はやめろ!)
ジャックはムスッとした顔で、モルティナを睨んでいます。
そんな訳で、イレーネファイターズの会合に、モルティナも参加しているのでした。
その場でカレンは、自分たちの使命についてモルティナに説明しました。
「オレたちは、革命軍を助けるように国王から頼まれているんだけど・・・」
「実はそれとは別に、どうしてもやらなくちゃいけない事があるんだよ!」
「やらなければいけない事?」
カレンはモルティナに、堕天使ザキュエルが天地創造の杖を使い、『アトラーの予言』を実行しようとしている事。
そしてもうすぐ、アンデッドの王モルグデウスが復活する事を告げました。
「なんじゃと?」
「そのような事が起こっているのかえ?!」
「しかも、あのモルグデウスが復活するじゃと?!」
「あれ?魔女ママは、モルグデウスの事を知っているの?」
モルティナの反応を見たカレンが、不思議に思って尋ねました。
「もちろんさね!」
「あたしが不老不死の力を得たのは、あいつのせいだからね!」
「「「「ええ~~っ!」」」」
「「「「そうなのですか!?」」」」
モルティナの過去を知っているカレン以外は、驚きの声を上げました。
「モルグデウスは恐ろしい化け物さね!」
「とても人の手におえるような、魔物ではないよ!」
「だけど、あいつは神々の手によって封印されたはずでは・・・」
「そうなんだけど、それを堕天使ザキュエルが復活させようとしているんだって!」
「それは大事じゃな!」
「あんなヤツが復活したら、とんでもない事になるさね!」
モルティナは、深刻な顔で考え込んでいます。
「それで、みんなに集まってもらったのは・・・」
「実はオレも、ここを離れようと思っているんだよ」
「あっ、バルモスの監獄を襲撃する件ですね?」
アリスが思い出したように言いました。
「そっ!オレもそっちの応援に行きたいんだけど~」
「どうかな?」
「オレとカーナの代わりに、マウロとアリスがリーダーになってくれないかな?」
「「え~~~っ!!?」」
「俺たちに、そんな大役が務まるのかな~」
マウロとアリスは、お互い心配そうに顔を見合わせています。
(あれ?なんだこの二人、仲がいいじゃん!)
二人の様子を見たカレンは、これなら任せても大丈夫だと思いました。
「大丈夫!二人ならきっとやれるよ!」
「それで魔女ママにお願いがあるのだけど・・・」
「・・・・・・」
「モルティナ様、カレン嬢がなにか言っているよ!」
「えっ?あたしにかえ?」
先ほどから考え事をしていたモルティナは、ジャックに言われて慌ててカレンに向き直りました。
「実は、うちのイレーネファイターズに力を貸してやって欲しいんだよ」
「はぁ?そりゃまた、どうしてだい?」
「モルティナ様、話を聞いてなかったのか?」
話を聞き洩らしたモルティナに、ジャックが説明してあげました。
「カレン嬢は、バルモスの監獄を襲撃しに行くんだよ!」
「だからぁ~・・・」
「何だって!バルモスの監獄を襲撃するだって?!」
「そりゃ、止めた方がいいさね!!」
「そんな事をすれば、いくらカレン嬢でも、生きては帰れないよ!!」
「「「「え~~~~~~っ!!!」」」」




