第九話 アルガの町へ出発(二)
ロックルーラーの里からアルガの町までは50キロメートルの距離ですが、フロイドの飛翔能力は素晴らしく、わずか30分ほどで、町が見えてきました。
「あまり近づくと、町の人に見られて大ごとになるわね」
「では、この近くに降りますか?」
「そうね、フロイドお願いね」
フロイドは町の近くに降り立つと、フレディアたちを降ろし、そのまま飛び去って行きました。
「顔色が悪いけど、大丈夫ロック?」
「も、もちろん大丈夫に決まっているだろ!」
「さきはアレだ!いきなりドラゴンが現れたから、ちょっと驚いただけだ」
「ビビッてねえぞ、オレは!」
(あんな姿を見せといて、よく言うわ・・・)
「とにかく、この辺りは魔物の気配がするから気を付けてね」
「え~~~っ!ま、魔物がいるのか?」
「そら、いるでしょ!」
「よ、よし分かった!魔物が出たらオレに任せろ!」
そう言いながら、フレディアの後ろにピッタリとくっついて歩き始めました。
そしてものの5分も経たないうちに、魔物がフレディアたちの前に現れました。
ガサ、ガサ、ガサ・・・
「来たよロック!」
「ひぃ~~~っ!」
「ギャ!ギャ!ギャア~~!」
現れたのはⅮランクのゴブリンが3匹でした。
錆付いた剣を振り回して威嚇しています。
「早くゴーレムを作ってやっつけてよ」
「い、いまやっているから!」
近くにあった岩がゴロゴロと動き始めましたが、スピードが遅くて完成するのにしばらくかかりそうです。
「あっ、来たよ!」
ゴブリンは一斉に襲い掛かってきましたが、ゴーレムはまだ半分も出来上がっていません。
仕方なくフレディアが光の魔法アークを発動させました。
キン!!
一瞬でゴブリンはその場に倒れます。
「えっ!なに?!」
「いま何が起きたんだ?」
「あんたが遅いから、わたしが倒したのよ」
フレディアは天使の中でも、唯一光の攻撃魔法が使える特別な存在でした。
使える魔法は以下になります。
・リカバー・・・・・味方全体に傷の治癒と体力の回復。
・フラッシュ・・・・強烈な光で敵を盲目状態にする。
・光のバリア・・・・魔法の防御で、物理的攻撃と魔法の攻撃を跳ね返す。
・アーク・・・・・レベルは3段階あり、敵全体を聖なる光の力で殲滅する。
アークⅡ(神の裁き)・アークⅢ(断罪)
・ライトニングアロー・・アルテミスの弓矢にアークⅢをまとわせる必殺技
「で、出来たの?ゴーレムは!」
見るとまだ半分ほどしか出来上がっていませんでした。
だけどギリガンが作ったゴーレムとは違い、フルメタルの鎧をまとった戦士の姿をしています。
(あっ、なんだかリアル!)
(ロックのお母さんが言っていた、とろいけどセンスだけは良いって、こういう事なのね?)
(でも、作る前にやられちゃったら意味無いし・・・)
(とはいえ、ロックのセンスは活かしたいわね・・・)
(だって、リアルな戦士のゴーレムって、カッコいいもの!)
フレディアは少し考えてから口を開きました。
「もう少し小さなゴーレムにしたら?」
「えっ、小さくするのか?」
「それって、よわっちくないか?」
「間に合わないよりマシよ!」
「それに作ってみないと、弱いかどうかわからないじゃない」
「って、言うか」
「今から作ってお供させなさいよ」
「まだ町まで少しあるから、魔物は出てくるわよ」
「あっ、そっか!」
そう言うと、ロックはさっき作ろうとしたゴーレムより、かなり小さめのゴーレムを作りました。
フレディアが製作時間を制限したので、身長わずか1メートルほどのゴーレムです。
でもデザインは素晴らしく、とてもカッコいい物でした。
(この子は経験が全く足りていないから、これからどんどん伸びるわね)
(あっ!そしたら巨大な戦士のゴーレムの肩に乗れるようになるかも?)
フレディアは、ロックの後ろから付いてくる小さなゴーレムを見てニヤニヤしています。
すると、また魔物が現れました。
今度はゴブリンが4匹、一斉に襲い掛かってきます。
「よし、やっつけろ!」
ロックの命令で戦士のゴーレムが1匹のゴブリンに挑みかかりました。
「あっ、行った!」
フレディアはその様子を楽しみたいので、自分の周りに光のバリアを張り、襲い掛かって来たゴブリンを弾き飛ばしました。
後の2匹はロックに襲い掛かりました。
「ひえ~~~っ!フレディア助けて~!!」
ロックは2匹のゴブリンにボコボコにされていますが、ダメージはあまり受けていないようです。
それはそうでしょう、あの大男のギリガンのフルスイングの打撃を受けても平気だったのですから。
フレディアはそれを承知の上で、わざと助ける事はしませんでした。
早く戦闘に慣れさせて、ロックルーラー本来の力を呼び覚まさせようと考えていたからです。
「いけ~!ゴーレム!」
「頑張れ、頑張れ!」
「そこだ~!!」
フレディアは、ゴーレムの戦いを見て大はしゃぎしています。
それほど白熱した戦いでした。
身長1メートルのゴーレムと、1メートル20センチのゴブリンとの戦いは、ほぼ互角の戦いなのでした。
しかし疲れも知らず、剣が当たっても跳ね返す岩のゴーレムが徐々に有利になり、やがて振り下ろした石のハンマーがゴブリンの脳天を叩き割り、勝負がつきました。
「やったね!」
そう言ってロックの方を見てみると、ボコボコにされていたロックも頭に来たのか、石の斧を振り回して戦っています。
だけど見ていてカッコ良いものではなく、メチャクチャに斧を振り回して、まるで小さな子供がオモチャを振り回してケンカしているような戦いでした。
それでも一匹のゴブリンにヒットし、残りの一匹と取っ組み合いの戦いになっています。
フレディアに襲い掛かって来たゴブリンは、錆びた剣で果敢に攻めていますが、光のバリアはびくともしません。
(めんどくさいな、こいつ・・・)
フレディアがそう思った時、ゴーレムがこちらに走ってきました。
「ゴーレムちゃん、ここはいいから、あなたの主人を助けたら?」
!!!
フレディアの声を聞くと、向きを変えてロックの方に走って行きました。
そして二人がかりで攻撃されたゴブリンは、あっけなく倒されてしまいます。
それを見たフレディアは、バリアと戦っていたゴブリンをアークの魔法で瞬殺すると、ヘトヘトになって座り込んでいるロックの元へ行きました。
「やったじゃん!」
「はぁ、はぁ・・・」
「へっ、へっ、へっ!」
「オレに掛かれば、こんな魔物の一匹や、二匹・・・」
「って、何で助けてくれないんだよ!」
「わたしが助けたら、修行にならないでしょ?」
「さぁ、行くわよ!」
「ひ~~~っ、ちょっと待ってくれよ~」
フレディアを先頭に、フラフラのロックと小さなゴーレムが後に続きます。




