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第八話 アルガの町へ出発(一)

「あんたはバカなの?!」

「こんな可憐(かれん)な天使様を岩で作った馬に乗せるなんて!!」

「それじゃぁ、まるで拷問じゃないの!」


「申し訳ない」


「かわいそうに、お尻が腫れて椅子にも座れないじゃないのさ!!」


「本当にすまん!」

「つい、自分たちの感覚でやってしまったのだ・・・」


「まったく、本当にバカなんだから!!」


プン!プン!プン!プン!・・・


正座して謝るギリガンに向かって、大声で怒鳴っているのは彼の奥さんでした。

名前をカミラと言い、37歳の人間の女性で、黒い髪に茶色の瞳を持つとても美しい女性です。息子のロックが母親似だというのが良く分かります。


「ごめんねフレディア様、まったく常識と言うのを知らない人なんだから!」


「そうだよ!オレに彼女のお供をしろって言うしさぁ!」

「母ちゃんからも、何とか言ってくれよ!」


「いや、あんたは行かなきゃダメでしょ!」


「えっ!なんで?!」


母親にすがって、フレディアのお供を阻止しようとしたロックでしたが、逆にダメ出しを食らっています。


「あんたはこのままだと、お父さんみたいに常識を知らない大人になってしまうからよ」


「それにあんたは弱すぎるの!」

「そんなんじゃ、誰もお嫁に来てくれないからね!」


(あっ、そこは「父親の跡を継げないからね!」・・・じゃないんだ?)


(それにロックのお母さんって、きっと強い人が好きなタイプなんだわ・・・)


二人の会話を聞いて、変に納得しているフレディアですが、それでもロックのお供は困ると思っていました。


「フレディア様、こんなダメな息子ですが、ここで出会ったのも何かの縁!」

「フレディア様のお供をさせていただけないでしょうか?」


(縁といわれても・・・)


「この子は今はまだ()()けど、強い父親の血を受け継いでいます」

「それにゴーレムを作るのは()()()けど、センスだけは良いのですよ!」


(弱くてとろいんだ・・・)


「どうかフレディア様!この子を一人前のロックルーラーに育ててやってくださいませ!」


(え~~~っ!)


結局ロックの母親のお願いを断り切れず、一緒に旅をする事になりました。

母親の子を思う気持ちには勝てなかったようですね。



「しかし、困りましたね・・・」

「ここからアルガの町までだと、まだ50キロメートルほどあります」


「この里の者は何でも岩で作ってしまうから、本物の馬もいませんし・・・」


ロックの母親が手をかざして、東の方角を見ながら言いました。


「それなら大丈夫だよ!」


「まだちょっと早いけど、秘密兵器を出すわね」


フレディアはそう言うと、魔法のアイテムボックスから小さな銀のラッパを取り出し、口にくわえて鳴らしました。


プッ、プク、プ~~ッ!


プッ、プク、プ~~ッ!


「ふふっ、なにそれ?」


「「「いや~ん!フレディア様かわいい~~!!」」」


ロックは馬鹿にしたように笑っていますが、里の若い女の子たちからは黄色い声援が飛びました。


ラッパを吹き終わったフレディアは、じっと空を見つめています。

里の者達は、その様子を不思議そうに見守っていましたが、しばらくすると何かが見え始めたようで、ざわざわと騒ぎ出しました。


「見て!何かがこちらへ飛んで来るわよ!」


「あれっ、白い鳥だよね?」


「ハトだよハト!」


「いや、いや、いや、もう少し大きいぞ!」


「タカかワシの(たぐい)じゃね?」


「・・・・・」


「いや、ちょっと待って!」

「そんなモノじゃないぞ!!」


「うわぁ~~~~~!あれは!!」


「「「「ドラゴン~~~!!!」」」」


「「「「キャ~~~ッ!!!」」」」


正体を知った里のほとんどの人たちは、クモの子を散らしたように一目散に逃げて行きました。


やって来た白い巨大なドラゴンは、頭上で3回ほど旋回すると静かにフレディアの前へ降り立ちました。


「ごめんね、フロイド」

「呼び出したりしちゃって!」


「わたし翼を傷めてしまって、飛べなくなってしまったのよ~」


フレディアはドラゴンに近づくと、声をかけました。


「フレディアよ、気にする事はありません」


「水の女神セレイヤ様からも、あなたに協力するように言われています」


「急ぐのでしょ?あなたが二回ラッパを吹いたので、バスケットも持ってきましたよ」


「さぁ、出掛けましょう!」


見ると五人乗ってもまだ余裕のある、大きなバスケットがありました。

バスケットにはフロイドが掴めるように金属で作ったロールバーが取り付けられています。

これはフロイドが仲間を運べるように、ミントの町の人たちに作ってもらった乗り物なのでした。


「じゃぁロック、急いで・・・」


「ゲッ!」


フレディアが声をかけようと振り返ると、そこには口から泡を吹いて気絶しているロックの姿と・・・。


「すみません!」

「すみません!」

「すみません!」



パン!パン!パン!パン!


フレディアに平謝りしながら、気絶している息子の顔をバシバシ叩いて起こそうとしている母親の姿がありました。


「あわわわ・・・・」

「お母さん、そんなに慌てないでいいから!」


驚いて止めようとしたフレディアに、大きな男が正座して口を開きました。


「フレディア殿、ふがいない息子で本当に申し訳ない・・・」


ギリガンもフレディアに頭を下げて謝っています。


フレディアは困った顔をしてフロイドの方を見ましたが、あまり機嫌は良くなさそうですね、プイッ!と横を向いてしまいました。

元々彼女は人間を嫌っていましたから。


ロックの両親とフロイドの板挟みになったフレディアの額からは、大粒の汗が噴き出していました。




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