第七話 岩の支配者(二)
フレディアはギリガンに連れられて、里の人たちが避難している洞窟へ案内されました。
そこにはロックルーラーだけでなく、普通の人間も沢山いましたが、誰も怪我などしていなかったので、フレディアはホッと胸をなでおろしました。
そこでギリガンは、昨夜の出来事をフレディアに話してくれました。
「昨夜ワシらの里を襲ったのは、オークやゴブリン、ワーウルフなどの魔物で、中にはガーゴイルもおったようだが・・・」
「だが、そんな雑魚などワシらの敵ではない!」
「ワシらは体を鉄のように硬質化する事が出来るからな」
「奴らの振り回すなまくらな剣など、痛くも痒くもないのだ」
(いや、痛えよ!)
ロックがムスッとした顔で横に座っています。
「そう言う事だから、初めは思う存分蹴散らしておったのだ」
「ヤツが現れるまではな・・・」
「ヤツ?それって何者なの?」
「うむ、その者はワシと同じぐらい体の大きなヤツでな」
「黒いローブを着ておったが、フードで顔を隠していたので、人間なのかそうでないのかも分からんかった」
「だが、あれはそこらの魔物ではないのは間違いないだろう」
「何やら奇妙なオーラをまとっておったからな・・・」
「それと気になるのは、ヤツには立派な翼が生えておったことだ」
「そしてそいつが黒い杖を振りかざした途端、ワシらは急に動けなくなってしまったのだよ」
「どんな感じで動けなくなったの?」
「まるで山のような巨人に、上から踏みつけられたような感覚であったわ」
「あっ、それで森の木々が踏み潰されたように倒れていたのね?」
「うむ、かなりの広範囲がそのような状態になったようだな」
「とにかく、体の自由が利かなくなったため、その場から逃げ出すのが精いっぱいでな・・・」
「悔しいが、大切な神からの預かりものを奪われてしまったのだよ」
「そっか~」
「ねえ、その奪われた大切な物ってなに?」
「うむ、ホワイトストーンと言ってな、フレディア殿の手のひらに収まるぐらいの白い宝玉なのだ」
「何のための使うのか分からんが、とにかく大切な物なのだ」
「フレディア殿は知っておらぬか?」
「う~~ん、ホワイトストーンねぇ・・・」
「聞いたことないけど、神様に聞いたらきっと分かるよね?」
「それで、フレディア殿は、なぜこのような場所へ来られたのかな?」
「あっ、それがね~」
フレディアは大神ダレス様の依頼を受けて、デプロス王国の調査をしに来たことなど、これまでのいきさつを説明しました。
「そうか、フレディア殿も同じように体が動かなくなったのだな?」
「そう!それで墜落しちゃたの!」
「それでその時に翼を傷めて、今は飛ぶことが出来ないのよね~」
「それは災難でしたな!」
「で、傷の手当はもうされたのですかな?」
「いやぁ~、回復の魔法は使えるんだけど、自分では治せないのよね・・・」
「この中に回復の魔法を使える人っている?」
「いや、残念だがそのような高等魔法の使い手はおらぬな・・・」
「だが、簡単な医術なら心得ておる者もいるので、よければ治療をさせてもらえぬかな?」
「えっ、いいの?」
「じゃぁ!」
フレディアはそう言うと、翼が人間にも見えるように天使の姿に顕現してみせました。
キラリン!
「おぉ、何と!フレディア殿は大天使だったのですな!!素晴らしい!!」
「うわっ!本当に天使だったんだ?!」
「「「「おぉ~~!!何と美しいお姿!!」」」」
ギリガンは目を輝かせてフレディアを称賛し、ロックは飛び上がって驚いています。
そして里の人々は手を合わせ、その姿に見惚れていました。
「てへへ・・・」
フレディアはちょっと恥ずかしそうにしていますが、里の人たちから手厚い看護を受け、五日間ここに滞在する事になりました。
そして六日目の朝。
「ギリガンのおじさん!わたしそろそろ行くね!」
「なんと、もう傷は癒えたのかね?」
「まだ飛べないけど、早く調査しないといけないし」
「ホワイトストーンの事も気になるから・・・」
「そうか・・・」
「実はフレディア殿、ひとつ頼みがあるのだが・・・」
「えっ、なに?」
「お世話になったお礼に、わたしに出来る事なら何でもするよ」
「おぉ!それはありがたい!!」
「フレディア殿、どうかこの愚息も一緒に連れて行ってくれないだろうか?」
ギリガンは息子のロックの襟元を掴んで、グイっとフレディアの前へ突き出しました。
「「え~~~っ!!」」
フレディアも驚きましたが、それよりもっと驚いたのが当人のロックでした。
「いや、待ってよ親父!」
「何でオレが行かなきゃならないんだよ?!」
「馬鹿者!お前は里長であるワシの息子なのだぞ!」
「盗まれた宝玉を探すのはお前の役目だろが!」
「え~~~っ、そんなムチャクチャな~!」
「黙れ!」
「本当はワシがフレディア殿のお供をしたいところだが、残念ながらワシには里の復興という仕事が残っておる」
「悔しいがお前にその役を譲ってやると言っておるのだ!」
「ひ~~~っ・・・」
ロックはその場にヘナヘナと座り込んでしまいました。
「フレディア殿、厄介者の面倒を押し付けて申し訳ないが、その代わりと言っては何だが、良いものを差し上げよう!」
「は、はぁ、そりゃどうも・・・」
ギリガンの強引な話の進め方に戸惑っているフレディアですが、もらえる物ならもらっておこうと、少しだけ期待してギリガンを見ました。
するとギリガンは岩を睨めつけて、何かを作りはじめました。
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ~~~ン!
大小さまざまな大きさの岩が合体し、やがて馬の形が出来上がりました。
「グオ~~~!!!」
「えっ?」
「馬のゴーレム?」
「でも、ヒヒ~~ンって泣かないんだ・・・」
フレディアが驚いて見ていると、ギリガンが馬を彼女の所まで引いてきました。
「息子が一緒にいる間なら、この馬は元の岩に戻ったりはしたりはしませんぞ」
そう言うとフレディアをひょいと抱きかかえ、岩で出来た馬の背に乗せました。
「あっ!ちょ、ちょっと!」
慌てるフレディアに、ギリガンは自慢げに言います。
「う、は、は、は、はっ!」
「大丈夫、本物の馬に引けを取りませんぞ!」
そう言うとギリガンは岩で出来た馬の尻を叩き、走らせました。
ドカッ・ドカッ・ドカッ・ドカッ・・・・
「あっ!」
「ちょっと!」
「タンマ!」
「あっ!」
「あっ!」
「あっ!」
「あ~~~~~~っ!!」
フレディアは悲鳴を上げて馬のゴーレムから飛び降りました。
見るとその場に倒れ込んで、お尻をさすっています。
「フレディア殿!大丈夫ですか~~~!?」
慌てて駆け寄ったギリガンに・・・。
「ギリガン、馬はなしで・・・」




