第十話 アルガの町(一)
その後二回ほど魔物に襲われましたが、どれも少数のゴブリンだったので、ロックの良い訓練になりました。
そしてアルガの町の門が見える所まで来ると、ある異変に気付きました。
「あれっ?アルガの町って、魔物の町じゃないよね?」
「何言ってんだ、そんな町この国にあるわけないだろ」
「でも門を守っている兵は、どう見ても魔物なんだけど・・・」
「何言って・・・」
「あっ!本当だ、あれはオークじゃん!」
「これは早く調べる必要があるわね!」
「えっ、調べるってどうやって?」
「町の中に潜入するに決まっているじゃない!」
「え~~っ、どうやって!」
「あんたがやるに決まっているでしょ!」
「はぁ~~~っ?マジかよ?!」
門の前では、武装した二匹のオークがくだらない話をしていました。
「なぁ、なんで町の人間を襲ったらいけねえんだ?」
「中にはいいメスもたくさんいるのによ~」
「ぐへへへ・・・・」
「あほう!そんな事をしたら計画が潰れてしまうだろうが!」
「もう少し我慢しろ!」
「計画が上手く行けば、そのうち俺たちの時代が来るって言っていたぞ」
「そうなりゃ、お前・・・」
「もう好き放題出来るってすんぽうよ!」
「そっか~!早く来ないかなぁ~、俺たちの時代!!」
「「ぐへへへへ・・・・」」
そんなゲスな話に盛り上がっていたオークたちの前を、小さなゴーレムの戦士がトコトコと横切って行きました。
「はぁ?なんだコレ?」
「石で出来た人形が歩いているぞ?」
!!!
オークたちに気付かれた小さなゴーレムは、一目散に逃げ出しました。
「おい!こら!ちょと待て!」
二匹のオークは慌ててゴーレムの後を追いかけて行きます。
「キャハハ!」
「ねっ!うまく行ったでしょ?オークはバカだから!」
「じゃっ、行こっか!」
そう言うとフレディアはスタスタと町の中に入って行きました。
「おい!そんなに堂々と歩いて行っていいのかよ?」
「なぁ、潜入じゃなかったのかよ?!」
「お~い!潜入の意味知ってる?」
「なぁ、もっとコソコソしょうよ~」
堂々と町の中を闊歩するフレディアの後ろから、早足でコソコソとロックが付いて行きました。
アルガの町はそれほど広くはありませんが、青い屋根の家が整然と並んだ奇麗な町でした。
だけど何となく、寂れた感じがしています。人通りも少なく、パステルの町のような活気が感じられないからでしょう。
町の中では人々が通常通りに生活をしている様にも見えますが、どうも様子がおかしいようです。
「おかしいね、この町には若い男の人がいないみたい」
「そうだな、年寄りと子供、それに女の人しか見当たらないな・・・」
「若い男手は仕事に出掛けているのかな?」
フレディアがキョロキョロと周りを見ながら歩いていると、一人の老人が声をかけてきました。
「ちょっと、あんたたち!」
「どうやって町に入ったかは知らんが、早く逃げなさい!」
「えっ?なんで?」
フレディアが尋ねると、老人は周りを見回してから、オーク兵がいない事を確認すると、二人を町長の所へ連れて行きました。
「あんた達、えらい時に来なさったなぁ・・・」
フレディアたちを見るなり、50代のほっそりした町長は、どうすれば安全にフレディアたちを逃がす事が出来るのか、周りの町民と相談を始めました。
「あの~ちょっと聞いていい?」
「なんだね?」
「あのさぁ、どうして町に魔物がいるのよ?」
「しかも門を守っているって、どういう事?」
「あんたら、なんにも知らないのだな!?」
町長は驚いた顔で、この国と町の状況を説明してくれました。
3年前に国王が亡くなってから、後を継いだ息子の第一王子が、それはもう最低の王だそうで、強欲で民の事など一切顧みず、自分の欲望のままに権力を振るっているそうです。
贅沢三昧の暮らしをしているため、それまでの富が枯渇してくると、国民に重税を課すようになり、それにより生活できずに他国へ逃れようとする者は、ことごとく捕まえられて牢獄に入れられているそうです。
国はそんな最悪な状態なのに、国王は隣の裕福なロファ王国を妬み、今度は国を奪おうと画策するようになったのだそうです。
しかしロファ王国には、あのバズエルを倒した優れた軍とギルドがあるため、容易には手を出せません。
そんな時、魔物を使役する一人の男が現れ、王に協力すると言って来たそうです。
「魔物を使役する男って、ロックルーラーの里を襲った男だわ!」
「間違いないな、一体何者なんだろう?」
フレディアの意見にロックも賛同します。
「でも、どうして町が魔物に支配されているの?」
「国王の味方になったんじゃないの?」
フレディアの問いに、町長は苦々しい顔で答えてくれました。
「この町の住民は人質なのだよ」
「えっ!人質?」
「うむ、先ほども申したが、この国はロファ王国と戦争をしようとしている」
「そのため、町や村の若者は強制的に軍に招集されておるのです」
「そしてこの町も例外ではなく、戦争のために若い男たちは連行されてしまったのです」
「あっ、それで若い人がいないのね」
「さようです」
「そして連行された者達が裏切ったり、逃げ出したりしたりしないよう、魔物に町を支配させて我々を人質にしているのです」
「ひど~い!」
「わたし、頭に来たわ!」
「じやあ、この町の魔物たちをやっつけて、その連れ去られた人たちを救い出せばいいのよね?」
「えっ?いや、そんな事が出来れば苦労はしませんよ!」
「私どもは、あなた方をどうすれば安全にここから逃がす事ができるのか、それで頭を痛めておるのですぞ?」
「大丈夫!私に任せて!」
「それで連れ去られた人たちは、いつ連行されたの?」
「昨日の昼なので、まだ遠くには行っていないかと・・・」
「わかったわ!」
「ロック、やるよ!!」
「えっ、やるって何を?」
「決まっているじゃない!この町を魔物から取り返すのよ!」
そう言うとフレディアは町長の家を飛び出して、町の広場に行きました。
後からロックが泣きそうな顔で付いて行きます。




