第十一話 アルガの町(二)
町の中心にある広間へ来ると、フレディアは銀のラッパを二回吹き鳴らしました。
その後すぐに広場にある櫓の上に登り、そこにある警報の鐘を鳴らし始めました。
カーン!カーン!カーン!カーン!・・・・
突然けたたましく鐘が鳴り響いたので、何事かと驚いた人たちが集まって来ました。
町長さん達も慌ててやって来ています。
その町長さんに向かってフレディアは声をあげて叫びました。
「今から魔物をやっつけるから、みんなを安全な所へ避難させて~!」
「ロック!大きめのゴーレムを作って町の人を守りなさい!」
「ひえ~っ!そんな急に言われても~!」
ロックは急いでゴーレムを作り始めます。
そうこうしていると、騒ぎに気付いた魔物どもが広場に集まって来ました。
その数おおよそ40匹~50匹ほど集まって来ています。
瞬く間に櫓を取り囲んでギャ~ギャ~と喚き始めました。
「ブヒ!?貴様、そんな所で何をしている!!」
「おい!あのガキを櫓から引きずり下ろせ!!」
隊長らしき体の大きなオークが部下に命令しました。
「その必要はないよ!」
そう言うと、フレディアはアークの魔法を発動します。
キン!!
無数の光の矢が、容赦なくオークたちに降り注ぎました。
光に射抜かれた魔物は、断末魔を上げる暇もなく、次々と倒れて行きます。
一瞬の出来事でした。
あれほどいたオークも、残っているのは隊長格のオークと、後からやって来た門を守っていた2匹のオークだけになっています。
遠巻きに見ていた町の人たちも、一体何が起こったのか全く理解が追いついていません。
「き、貴様、いったい何者なのだ!」
「連行した町の人を、どこへ連れて行ったのか言いなさい!」
「ふざけるな!貴様に・・・」
キン!!
隊長格のオークがしゃべり終わる前に、フレディアの魔法によって2匹のオークが倒されました。
「ひぃ~~~~っ・・・」
「どこなの?」
「き、北のナンガ・ロギの要塞・・・」
キン!!
「ありがとう」
フレディアは隊長格の返事と同時に、容赦ない鉄槌を下しました。
そして辺りに魔物が残っていないか確認すると、ロックの方へ歩みます。
「ロック、わたしはこれから少し出掛けるから、もしもの時はあなたが町の人を守るのよ!」
「は、はい!」
「り、了解しました~~!」
ロックは直立不動でフレディアに敬礼しています。
(フレディアって、怒ると超こえ~!!)
(オレはもう絶対に怒らせねえからな!!)
「あれ?出掛けるって、どこに?」
ロックが尋ねた時、上空に巨大なドラゴンが現れました。
「「「「「ひえ~~~~!!!」」」」
悲鳴と共に、町の人たちは大慌てて家の中に逃げ込みました。
町長さんは腰を抜かして、その場にしゃがみ込んでいます。
フロイドに乗り込んだフレディアは、急いで西の方角へ飛び去りました。
「あれ?あの方角って・・・」
フレディアが降り立ったのは、ロックルーラーの里でした。
驚いたギリガンたちが慌てて集まってきました。
「フレディア殿、なにか忘れ物ですかな?」
「それとも、うちの愚息が何かやらかしたのでしょうか?」
「フレディア様申し訳ありません!ロックは今度は一体何を・・・」
ギリガンと奥さんは、心配そうに尋ねました。
「違うよ!」
「実はアルガの町の事なんだけどね・・・」
フレディアが町で起きた事をギリガンたちに説明しました。
その上で彼らにお願いをしたのです。
「だからロックルーラーの力を借りたいのよ」
「町を守るために、屈強な戦士を4人ほどお願いしたいの」
「なるほど!よく分かりましたぞ!」
「そう言う事でしたら、ワシを含めてとっておきの戦士を連れてまいりましょう!」
フレディアは屈強な戦士5名を乗せて、再びアルガの町に飛び立ちました。
町ではロックがフレディアの事を説明していましたが、大変な騒ぎになっていました。
「この町の魔物はいなくなったが、この事が国王の耳に入れば、皆殺しにされるのでは」
「連行された者達は、どうなるのでしょうか?」
「この事がバレたら、きっとひどい目にあわされるのでは?」
町の人たちはこの先の事が不安で、パニック状態になっていました。
そんな所へフレディアが戻って来たので、みんなは恐る恐るフレディアの元へ集まって来ました。
「あっ、親父が来てる!」
「里のみんなも・・・」
ロックはギリガンたちの所へ走ると、嬉しそうに声をかけました。
「親父、オレを迎えに来てくれたのか?」
ゴチン!!
「アホ抜かせ!」
ギリガンのゲンコツがロックの頭に炸裂しました。
「みんな、よく聞いて!」
「今からわたしが連行された人たちを連れ戻すので、その間に町の守りを固めて欲しいの」
「私達で町を守れと言うのかね?」
「相手は国王軍と魔物の兵士なのですぞ?」
町長がみんなを代表して質問しました。
「大丈夫、ここにいる5人の戦士はロックルーラーと言って、岩を支配するとても強い人たちなの」
「この人たちが一緒に守ってくれるわ!」
フレディアに言われ、5人の大男たちを見た町の人たちですが、不安に思っている者がほとんどでした。
「フレディア殿、たった5名で大丈夫なのでしょうか?」
町長の言葉を聞いたギリガンは、大きな声で笑い飛ばします。
「ならば、我らの力をお見せしよう!」
そう言うと5名の戦士達が咆哮を上げました。
「「「うお~~~~!!!」」」
すると、どこからともなく大きな岩が集まって来て、巨大なゴーレムを形成していきます。
また別の場所では、巨大な岩の壁が作られて行きます。
それを見た町の人たちはどきもを抜かれ、言葉を失ってしまいました。
「よいか皆!自分たちの町は自分たちの手で守らずに、どうするのだ!」
「あのような非道な王や、魔物の言いなりになっていても良いのか?」
「だが、心を強く持つが良い!」
「ここにいるフレディア殿は、神の使いである大天使様なのだ!」
「捕まった者達を必ず助けて下さる!」
「そして全員が一つになって、自分たちの町を守ろうではないか!」
「我々には神のご加護があるのだから!!」
ギリガンが大声で訴えました。
そしてすぐにフレディアへ小声で言いました。
「フレディア殿、町の人を安心させるため、本当の姿を見せてくれないだろうか?」
「うん、わかった!」
フレディアはそう言うと、天使の姿に顕現して見せました」
キラリン!
するとそれまで怯えていた人たちも、勇気づけられて明るい顔に戻ってゆきます。
「「「「おぉ~~~!!!何という美しいお姿!!!」」」」
「フレディア様は、天使様でしたか!?」
「それであんなにお強いのですね?!」
「神様が我々を助けて下さる!我々も頑張らなくては!!」
「そうだ!あんな怯えた暮らしはもう御免だ!私は戦うぞ!」
「「「「うお~~~~!!!」」」」
町の人たちの士気が上がったのを見たフレディアは、フロイドに乗り込みました。
「ロック!いくわよ!」
フレディアは親父さんの横にいるロックに早く乗るように言いました。
「えっ、行くってどこに?」
「連行された町の人を助けに行くのに決まっているでしょ!」
「え~~~っ!オレは町の人を守る役じゃなかったのかよ?」
ゴチン!!
再びギリガンのゲンコツがロックの頭に炸裂しました。
「はよう行かんか~~!!」
「ひえ~~~っ!」
ロックは頭を抱えながら、慌ててフロイドに乗り込みました。
「じゃ、行ってくるね~!」
(そんな、手を振って遊びに行くような軽い言い方はやめて・・・)
ロックは今から処刑台に送られる者のような顔で、バスケットにうずくまっています。




