第七十八話 空の覇者
「それではカレン様、オリビア様どうぞこちらへ」
ノワール・デュエルで勝者となったカレンと、神の使いであるオリビアは、進行係の女性に促されて、舞台に設けられた演台へと進みました。
「ヴァリオン族の皆様!」
「伝統あるノワール・デュエルの勝者であるカレン様は、ヴァリオン族を統べる『空の覇者』となりました」
「「「「パチ、パチ、パチ、パチ・・・・・・・」」」」
「カレン様には、我らに命令を下す権限が与えられますが、それは種族にとって有益な事であることが条件となります!」
「そしてその効力は4年間と定めます!」
「「「「パチ、パチ、パチ、パチ・・・・・・・」」」」
「ではカレン様、どうぞ国の民にお言葉を!」
「えっと・・・」
「なぁオリビア、オレが言うのか?」
「神様の代理のオリビアが言った方が良くないか?」
こういった正式の場で改まった言葉を述べるのが苦手なカレンは、小声でオリビアに助けを求めましたが、オリビアはクスクスと笑いながら突っぱねました。
「空の覇者はカレンさんやから!」
「そら、カレンさんが言わんと!」
「そ、そうか・・・」
あっさりと断られたカレンは、「ふぅ~」と一息つくと、いつもの調子で語りかけました。
「オレからの命令は、たったの2つだけだ!」
「では、お前たちがこれから守らなければならない事を言うから、よく聞いておけよ!」
「「「「は~~~い!!」」」」
「まず一つ目は、タカ族の王子アルノルトと、ワシ族の王女アニスの交際を認める事!」
「ザハール王とダハリウス王、わかった?」
「御意、空の覇者のお言葉とあらば・・・」
「うむ、異存はござらぬ!」
二人の王の返事を聞いたオリビアは、アニスとアルノルドを招いて言いました。
「良かったなぁ、アニス!あんたら二人は、もう人目を避けて逢う必要はないで~!」
「ありがとうございます、オリビア様!カレン様!」
「ありがとうございます!本当になんとお礼を言っていいのか・・・」
「かまへん、かまへん!うちは愛のキューピットなんやから!」
アニスとアルノルトは手を取り合って、満面の笑みで二人にお礼を述べました。
「「「「パチ、パチ、パチ、パチ・・・・・・・」」」」
その様子を見ていた国民からも、盛大な拍手が送られます。
「二つ目!」
「これからは、くだらない部族間の争いは、いっさい禁止する!」
「考えても見ろ!10年前に獣人族に攻め入られたのは、お前たちが同族同士でくだらない争いをしたからだろう!?」
「そ、それは・・・確かに・・・」
「その通りじゃわい」
「それにな!いまは獣人族どころではない、世界の危機が目の前に迫っているんだぞ!!」
「なんと?」
「それは、どういう意味ですかな?」
外界に疎いヴァリオン族は、いま国で起きている異変に対して、あまりにも無知であったため、強者であるカレンの口から『世界の危機』と言われたことに驚き、その言葉の意味を尋ねました。
「カレンさん、それはうちから説明するわ!」
二人の王からの質問には、いま国がどんな状況にあるのか、オリビアが答えました。
大天使ザキュエルが、堕天使となってデプロス王国と手を組み、封印されていた魔物を開放した事。
国王のオッサムの悪政によって人々が苦しめられている事。
デプロス王国がロファ王国に戦争を仕掛けた事。
そして国王のオッサムから国民を救うために、革命軍が立ち上がった事などを、つぶさに説明しました。
「そやからな、あんたらが同族同士で戦っているのは、ほんまに滑稽な事なんやで!?」
「もしザキュエルに支配されたら、空の覇者なんかで争ってる場合と違うでぇ~!」
「この世界は魔物が支配する世界になるんやから!」
「な、なんと!外界ではそのような事が起こっていたとは・・・」
「まさに、同族でいがみ合っておる場合ではないな!」
オリビアの説明に、二人の王様は納得したようです。
「オレからは、以上だ!」
「この二つの事をしっかりと守る様に!」
「「「「はは~~~っ!!」」」」
その後、盛大な祝宴が開かれ、カレンとオリビアは勿論、会場に応援に来ていたイレーネファイターズと、革命軍のメンバーも呼ばれて大いに賑わいました。
会場ではカレン、オリビアとライズ、そしてザハール王とダハリウス王が円卓を囲み、食事をしながら話をしていました。
「なんと、翼渡峠を通行する許可を貰うためにここへ?」
「そうだよ、峠を越えてグリーンホロウの町へ行くためにね!」
カレンはここへ来た本当の目的を、ダハリウス王へ話しました。
「せやけど、あんたらが険悪な状態で、こちらの話を聞かへんから、ノワール・デュエルを復活させたんやで」
「なんと、そうでしたか・・・」
「それは申し訳ありませんでした」
ザハール王はオリビアに対して、申し訳なさそうに謝りました。
「オレは面倒だから、無視して渡ろうと提案したんだけどさ~」
「そしたら、ヴァリオン族と戦争になるかもって、他の仲間が反対したんだよ」
「オレはもしそうなったら、別にやっちまえばいいやと思っていたんだけど・・・」
「「いや!いや!いや!」」
ザハール王とダハリウス王は、慌ててカレンの話を止めました。
「ところで、革命軍はどうしてグリーンホロウの町へ行かれるのかな?」
「お仲間に聞けば、この遠征は急に決まったと言っておったが・・・」
目的が気になったダハリウス王が、リーダーのライズに尋ねました。
「それは・・・」
「我々革命軍は、国王オッサムの悪政に苦しむ民の救済が目的なのですが、実はまだ遠征する準備が整わず、先送りにしていたのです」
「ところがグリーンホロウの町から、我々に助けを求めて来たのですよ」
「ほ、ほう!それはオッサムの悪政からの助けなのですかな?」
「いえ、それが・・・」
「町を支配しようとするデプロス軍と、近隣に住む『樹海の魔女』の間で争いが起こり、町が大変な事になっているので、それを何とかしてくれと言うのですよ」
「なんと、それは奇妙な話ですな?」
「はぁ、なんでもオッサムが町の人を従わせるために派遣した魔物どもが、近隣の森を荒らしたため、そこに住む魔女が激怒して争いを始めたそうなのです」
「で、その争いに町の人たちが巻き込まれてしまったため、我々に助けを求めて来たという訳です」
「なんと、そうでしたか!」
話を聞いたダハリウス王は、ザハール王と目配せをすると、カレンに向かって言いました。
「カレン殿、実は我らも世界の情勢を知り、ザハール王と相談して決めましたのじゃ」
「微力ではあるが、どうか我らヴァリオン族も、あなた達に協力させてはくれまいか?!」
「えっ?いいのか?!」
「そりゃ、ヴァリオン族が力を貸してくれるなら、オレたちは嬉しいが・・・」
「これは戦いなのだぞ?!」
「承知の上です!」
「いままで我らがやって来た無益な戦いを、今度は力を合わせて、世のために使っていきたいのです!」
ザハール王が、力強く答えました。
「「「「おぉ~~~~っ!!!」」」」
その言葉を聞いた革命軍から、喜びの声が上がりました。
「これほど心強い援軍はない!」
「勝利へ導く切り札を手にいれたぞ!」
「これでこちらの戦力は三割増し・・・いや、五割増しだ!」
戦局を一変させる味方を得た事で、大いに士気が上がりました。
「分かった!」
「じゃぁ、よろしく頼むよ!」
ヘーベル歴251年10月中旬
ヴァリオン族が革命軍の仲間になりました、




