第七十四話 ノワール・デュエル 地上戦(一)
ジャ~~~ン!!!
ジャ~~~ン!!!
ジャ~~~ン!!!
「只今より、ノワール・デュエルを開催いたします!」
「「「「ウオ~~~~~ッ!!!」」」」
会場からは割れんばかりの歓声が起こりました。
「では、選手の紹介をいたします!」
「『黎明の空を統べる黒翼の王』タカ族の王ザハール様!」
「『白嶺を守護する翼冑の魔王』ワシ族の王ダハリウス様!」
「そして予選を勝ち抜いた『人類最強の剣士』カレン様!」
「以上の三名が『空の覇者』を賭けて戦います!」
「それでは、ノワール・デュエル(黒翼決闘)の説明をおこないます」
「競技は三つの種目のポイント制で行われ、トータルで一番ポイントの高かった者が、空の覇者に選ばれます」
「まず一つめの競技は、地上戦です」
「この競技は総当たり戦で行います!勝てばポイントが1つ付きます」
「お互いが打撃の武器を使って戦う種目で、身代わりの人形が割れるか、負けを認めると勝敗が決まります」
「この競技では飛空は禁止となりますので、高さの制限が設けられ、3メートルを超えると失格となります」
「ただし、翼を使わない跳躍は対象外となりますので、この制限は当てはまりません」
「二つめの競技は、俊敏性と飛行能力を競うウイングウッド・ラリーです」
「これはトゲだらけの有刺樹木の樹海を抜けて、どちらが早く目的地に到着するのかを競う種目です」
「一着の選手に2点、二着の選手には1点のポイントが付与されます」
「ここで翼を持たないカレン選手についてですが・・・」
「本来人族の参加は想定されていなかったのですが、空を飛ぶことの出来ないハンデを考慮して、今回は特別に出場を許可されることになりました」
「「「「ええ~~~っ!」」」」
ここで観客席から一時的にブーイングが起こりましたが、よくよく考えてみると、空を飛べない人間が、あの有刺樹木の森を駆けて行く様を想像すると、絶対に無理だろうと言う結論に達し、すぐにブーイングは収まりました。
「競技は会場から南に2キロ離れた『いばらの森』で行われます」
「ルールは全長7キロに及ぶ有刺樹木の間を駆け抜け、目的地にあるフラグを奪い合うのですが、樹木より高く飛ぶことは禁止されています」
「審判は空から違反の確認を行いますので、観戦する皆様は邪魔にならないようにお願いします」
「あっ、そっか!ヴァリオン族は、みんな空を飛べるんだったわ・・・」
「チェッ、オレたちはここに居残りかよ・・・」
応援に来ていたティアとマウロが、残念そうに言いました。
「そして三つめの競技は、空中戦です!」
「お互いが打撃の武器を使って、空中で戦う種目です」
「地上に落下するか、身代わりの人形が割れるか、あるいは負けを認めると勝負が決まります」
「この競技も総当たり戦で行い、勝者にはポイントが1つ付きます」
「「「「ウオ~~~~~ッ!!!」」」」
「やったぜ!これなら人間の勝利などあり得んぞ!」
「これでワシ族とタカ族の一騎打ちで勝負が決まるな!」
「地上戦を除けば、我らヴァリオン族の勝利に間違いない!」
観客たちは口々に自分たちの種族の勝利を叫び、大いに盛り上がっています。
進行係の説明が終わると、オリビアとスージーによる身代わり人形の設置が行なわれ、いよいよノワール・デュエルの開催となりました。
「それでは最初の種目、地上戦を開始いたします!」
「抽選により、対戦はタカ族のザハール王対ワシ族のダハリウス王!」
「「「「ウオ~~~~~ッ!!!」」」」
「「「「いきなり英雄同士の決戦かよ!!」」」」
会場は興奮の渦に包まれました。
タカ族のザハール王は、鎖帷子の胸当てに、両手にはミスリルで出来た細身の剣を持って構えています。
対するワシ族のダハリウス様王、厚い鋼の胸当てに、両腕にも手首から手の甲まで金属で覆うガントレットを装着し、手には長い立派な槍を構えています。
ジャ~~~ン!!!
開始のドラとともに、先に攻撃を仕掛けたのはザハール王です。
アイギリスの動きを超える、素早い動きで双剣を繰り出して果敢に攻めますが、ダハリウス王は槍の中央の柄を握り、穂先と柄の部分を使って、上手く攻撃をかわします。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
カン!カン!カン!
「やるねぇ、おじさん達!」
カレンはオリビアの横に腰かけ、楽しそうに二人の戦いを見ています。
「ほんまやなぁ!さすがはヴァリオン族の英雄達やわ~!」
「昨日の二人の戦士も頑張ってたけど、迫力がぜんぜん違うわ!」
「だよね!」
「なぁ、オリビアはどっちが勝つと思う?」
「そやなぁ~、どっちやろ?」
「あっ!それってもしかして、賭けですか?私も参加します!」
「で、なにを賭けます?」
横でカレンとオリビアの話を聞いていたスージーが、パクッと話に食いつきました。
「そうやなぁ~。昨日ワシ族のお后様から、ワインとお菓子をたくさんもらったから、それを賭けるのはどない?」
「いいね!じゃぁ~、勝った人が好きな物を独り占めできるっていうのはどう?」
「ちなみにオレはワインがお気に入りだわ!」
「そうですね!私もワインが欲しい!」
カレンとスージーがオリビアの意見に同意しました。
「よっしゃ、それでいこか!」
「ちなみに、うちはイチゴがたっぷり入った、バターサンドがええな~!」
「うん、うん、あれ美味しいよね!」
「そやろ?スージーもあればっかり食べてたやん!」
「ありや、バレてた?」
「「「あっ、はっ、はっ、はっ・・・」」」
(ちょっと、ちょっと、なんなの、この娘たち!)
(いま、うちの主人が必死で戦っているというのに~!)
観覧席では、ダハリウス王のお后様も座って観戦していましたが、その横で全く緊張感の無い三人が賭けを始めたので、気になって仕方がありません。
(それで、誰がどちらに賭けるのよ?)
お后様は聞き逃さないように、首をかすかに傾けて、耳をすましています。
「オレはダハリウス王かな~」
「長い槍は戦いに有利だからな・・・」
(グッジョブ、カレン様!)
お后様は、左手でカレンを指さし、右手でダハリウス王に向けて親指を立てました。
「うちも地上戦なら、どちらかと言えばダハリウス王やな・・・」
「防御の固い相手に、あの細い剣で致命傷を与えるとなると、攻撃する場所が限られるからなぁ・・・」
「うわっ!私もダハリウス王なのに!」
「槍は持ち方によって間合いが変えられるでしょ?!」
「だから絶対にダハリウス王が有利だわ!」
(オリビア様、スージー様、グッジョブですわ!)
お后様は、ダハリウス王に向けて両手の親指を立てて合図を送りました。
その様子を見たダハリウス王は、戸惑っています。
(な、なんじゃぁ?あの合図は?!)
(わし、そんな合図の打ち合わせをしたかのう?)
激しい打ち合いを続けながら、ダハリウス王は勝利のきっかけを見つけようと必死です。
お互いの実力か拮抗しているため、開始からすでに1時間も戦い続けていますが、未だに勝負の行方は分かりません。
しかし、ようやく勝負が決まる時が来ました。
槍の長さを利用し、ダハリウス王は執拗にザハール王の上半身を攻めます。
間合いに入れないザハール王は防戦一方でしたが、ついに我慢できずに槍をかわして踏み込んだ瞬間、それを狙っていたダハリウス王は、槍を引いた瞬間に穂先を握り、柄の部分でザハール王の足を払いました。
そしてよろけてしまったところを、間髪を入れず、ダハリウス王の槍がザハール王の腹を一突きにしたのです。
「勝負あり!勝者ダハリウス王!」
「「「「うぉ~~~~~~っ!!!」」」」
「「「「「パチ、パチ、パチ・・・・・」」」」
両者の素晴しい戦いに、惜しみない声援と拍手が、会場から沸き起こりました。
「あれっ!勝負がついちゃったの?」
大きな歓声の上がった会場を見て、カレンが驚いています。
カレンたちは三人ともダハリウス王の勝利に賭けたので、ザハール王に賭ける者をジャンケンで決めている最中なのでした。
「ありゃ、りゃ?!」
「終わっちゃいましたね~」
オリビアとスージーも残念そうにしています。
「よし!」
「じゃぁ!次の試合はオレに賭けるよ!」
「お二人は、相手側に賭ける方を決めておきなよ!」
そう言うと、カレンは舞台の方へ走って行きました。
「ああっ!ズルいで~!」
「オリビア様!私はカレンさんに賭けます!」
「おい、おい・・・」
「しゃあないなぁ・・・」
「さぁ、ジャンケンするよ!」
「え~~~っ!」
「折れて下さいよ、オリビア様~」




