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第六十四話 集う仲間たち

シルヴィーとポンポンを魔法で治療した後、一行はロックの家に戻りました。

出迎えてくれたカミラさんが、フラフラのシルヴィーとポンポンを見て、急いで氷を入れた枕と、冷たい飲み物を用意してくれましたが、その時にチラッとカーナとシラを見て、目が釘付けになりました。


「ちょっと、ちょっと、ロック!」

「あのかわいらしい娘さんと、きれいな女性は誰なの?」


「小さい子はフレディアと同じ天使で、もう一人は仲間の魔法使いだそうだぜ」


「そうなのかい!?」

「で、魔法使いのお嬢さんはまだ独り身なのかい?」

「それとも彼氏がいたりするのかい?」


「いや、知らねえよ!」


「バカだね!そう言う大事な事は、ちゃんと調べておかなきゃダメじゃない!」


「いや、なにを・・・」


「母ちゃん、年上の女性は大歓迎だからね!」

「あんたは頼りないから、姉さん女房の方がいいかも知れないね?!」


「はぁ?だから~・・・」


「あんた、しっかりやりなよ!」


バシッ!


「いてっ!」


カミラさんはロックの背中を叩いてガッツポーズをとると、おもてなしの準備のため、いそいそと厨房に走って行きました。

そして、その様子を見逃さなかったオリビアが、口を押えて必死に笑いを堪えています。


「オリビア、どうしたの?」


不思議に思ったカーナが、オリビアに尋ねました。


「いや、実はうちロックのお母さんの大ファンやねん!」

「カミラさん、ほんま最高やわ!」

「あっ、はっ、はっ、はっ・・・」


とうとう、大きな声で笑いだしてしまいました。

ロックは顔を真っ赤にして、ドヨドヨとしていますが、他のみんなはツボにはまって笑っているオリビアを不思議そうに見ています。



その後、カミラさんが用意してくれたお茶とお菓子を囲み、おおよそ1年ぶりの再会となる、カーナとシラから色々と情報を聞きました。


また今回シラを連れているのは、炎の神イグナート様から加護をもらった帰りなのだそうです。


「それでカナちゃん、ダレス様から依頼された件はどうするの?」


フレディアがカーナに尋ねたのは、土の女神テラシア様の加護を誰にするのかを決める事と、聖なる泉に宿る、涙と水の女神『セレスフィア様』の力を借りる事です。


「フレディアのチームに、土属性の魔法使いはいるの?」


「う~~ん・・・。ロックは土属性だけど、ゴーレムマスターだからなぁ・・・」


「あとはハンクが土属性の魔法を使うけど、加護は必要あるのかな?」

「ルナはどう思う?」


カーナからの質問を、ハンクの妻であるルナに尋ねました。


「そうねぇ・・・。特に必要ないと思いますわ」

「あの人は剣士ですし、いまは炎の剣ヘスティアーだけで十分かと・・・」


「じゃぁ!土の女神テラシア様の加護をスージーにあげてもいい?」


「うん、わたしはそれでいいけど?」


フレディアは他のみんなを見回しましたが、誰からも反対の意見は出ませんでした。

ただロックがなにか言いたそうにしましたが、すぐに下を向いてしまいました。


「じゃあ、後はセレスフィア様の件だけね!」


カーナが地図を広げて話を切り出そうとしたとき、急にフレディアが質問をしました。


「カナちゃんは、カレンがいつ妖精の里に行ったか知らない?」


「えっ、カレン?!」


「えっと・・・朽ち果てた古塔で最後にあったのが・・・」


「たしか9月の上旬だったから、その後すぐに行けば、もうひと月になるわね」


「ひと月か・・・」

「という事は、そろそろ2年になるって事ね!」


「「「「はぁ?」」」」


フレディアの言っている意味が分からず、みんなポカンと口を開けているので、妖精の里での時間の魔法を説明しました。


「えっ!一日がたったの1時間になるのかよ?!」


ロックが驚いてフレディアに聞き直しました。


「そうだよ、時の妖精の魔法でね!」


「なんと!それは本当かの?」


ポンポンも驚いてフレディアに聞き直しています。


(えっ?ポンポン前に説明したよね?)


フレディアもビックリしていますが、それを聞いたロックが、思わず突っ込みを入れました。


「いや、ポンポン、お前が聞き直すなよ!」

「だから5時間で帰って来たのに、5日って言っていたじゃん!」


「むっ、そうじゃったか?」


「えっ!」


(やっべ~!頭を強く叩き過ぎたのかな・・・)

(それとも妖精の里って時差ボケするのか?)


ロックはポンポンの頭にたんこぶを作った事を気にしているので、それ以上突っ込むのをやめました。

フレディアも説明するのが面倒なので、ポンポンの事は放置する事にしました。



「だからカレンも訓練を始めて、そろそろ2年になる訳なのよ」


「まぁ!それじゃぁ、そろそろ目途がついている頃かもしれないわね?」

「ねえ、ポンポン!リーファちゃんにお願いして、いつ頃こちらに帰るのか聞いてもらえないかしら?」


「えっ!そんな事が出来るの?」


ルナがポンポンにお願いしているのを聞き、カーナとシラは驚いています。



「うむ、任せておくのじゃ!」


ルナに頼まれたポンポンは、サモンの杖を使って詠唱を始めました。

そして頭上に発生した黒い霧の渦の中から、リーファが飛び出して来ました。


ポン!


「「まぁ!!」」

「「かわいい~!!」」


初めてリーファを見たカーナとシラは、驚きの声を上げています。


ポンポンとルナはリーファに事情を説明し、様子を見に行ってもらいました。

そして10分ほどすると帰って来て、カレンの様子を教えてくれました。


リーファによると、この日は朝から5時間も戦い続け、なかなか勝負がつかなかったのですが、先ほどようやく決着がついたのだそうです。


「で、どうなったの?」

「カレンは勝てたの?」


フレディアが尋ねると、リーファは首を横に振りました。


「あらぁ~!負けちゃったのかしら?」


ルナが尋ねると、今度も首を横に振ります。


「あら?それはどういう事ですの?」


「引き分け!」

「カレンの剣が砕けちゃったの!」


「あら、まぁ!」


「それでね、もうこっちへ帰って来るって言ってる!」


「「「「え~~~っ!」」」」



その後、カレンが妖精の里から帰って来ると言うので、セレスフィア様の所へ行く話は、一旦保留となりました。


「じゃあカナちゃん!」

「カレンの帰りを待つ間、シルヴィーに風魔法の指導をしてくれないかなぁ?」


「風の威力が強くて、思うように操作できないのよ~」


「カーナ様、お願いします!」

「せっかくセレノス様から加護をいただいたのに、全然使いこなせないのです!」


セレノス様の弟子であるカーナなら、きっと上手に指導してくれるのではないかと、シルヴィーは藁をもすがる思いで、カーナにお願いしました。

初心者がいきなり強力な魔力を授かったため、どうしょうも出来ずに困っている事をすぐに察知したカーナは、もちろん二つ返事で引き受けました。


「うん、いいよ!」

「あたしが、ちゃんと使えるようにしてあげる!」


「あっ!それから技術と創作の神様から預かった『アルテミスの弓矢』を返しておくね」


フレディアはカーナからアルテミスの弓矢を受け取ると、矢を射るカッコをして、弦をビンビンと指で弾いて見せました。

その様子を見たポンポンが、フレディアに尋ねました。


「なんじゃか、美しい弓矢じゃのぉ?」

「それって、先ほどの弓矢より、強い弓矢なのかの?」


ポンポンが恐怖を感じた閃光の弓矢と、どちらが強いのかフレディアに尋ねたのですが、それについてはフレディアの代わりにオリビアが答えてくれました。


「それな~!閃光の弓矢とは比べ物にならへんほど、すごい弓矢なんやで~!」


ギョッ!


「そ、そうなのか?」


「閃光の弓矢は防壁の岩に穴を空けたやろ?」

「アルテミスの弓矢やったら、防壁が木っ端微塵に吹き飛んで、なくなってしまうで!」


「ひぇ~~~っ!」


「あまりにすごい武器やから、いつもは天界で保管してるねん!」

「それを神様から渡されたって事は・・・」


「つまり、これからはマジで強い敵と戦う事になるってことやな!」


「あわわ・・・」


オリビアから話を聞いたポンポンは、あまりのすごさにビビッてしまいました。

アルテミスの弓矢の説明が終わったタイミングで、カーナは魔法のアイテムボックスから、美しい装飾のなされた悲劇のハープを取り出しました。


「それと、セレイヤ様から預かった悲劇のハープ」

「ルナに渡しておくね」


「あとね、セレイヤ様にルナに加護を授けて下さるようにお願いしたので、その時はあたしに言ってね!」


「ええ、わかりましたわ!」


ルナに渡された美しいハープを見て、何に使うのか分からないロックが、ポンポンに話しかけました。


「なぁ、悲劇のハープってなんだよ?名前がヤバくないか?」


「確かに物騒な名前じゃのぉ!呪われておるのか?」


ロックとポンポンが、ヤバいものを見る目でハープを見つめています。


「キャハハ!確かにね!」

「でも、ルナの演奏はとっても素晴らしいのよ!」


「あたし、久しぶりにルナの演奏を聞きたいな!」

「ルナ、おねが~い!」


フレディアとカーナにせがまれ、ルナは少し照れながら悲劇のハープを演奏してくれました。



ルナの奏でる旋律は、とても優しく美しく、また時には儚い夢のような哀れみさえも感じさせる、まさに聴く者の心を打つ素晴らしい演奏でした。


いつも騒がしいポンポンも、ポロポロと涙を流して聴き入っていました。

マラドガードの村を出て一年になるので、懐かしい故郷を想い出したのかもしれません。




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