第六十三話 ポンポンとシルヴィーの災難
次の日の朝、フレディア達はポンポンの習得した魔法『カースイーターシールド』の効果を確認するため、防壁の近くに来ていました。
「物理攻撃でも魔法攻撃でも、どちらからでもよいぞ!」
そう言うとポンポンは、カースイーターシールドを発動しました。
ヴ~~~ン・・・
ポンポンの身体を暗い影が覆います。
「じゃぁ、物理攻撃からいくね!」
フレディアは魔法のアイテムボックスから、閃光の弓矢を取り出して構えました。
(むっ!なんじゃあの弓矢は?えらく光っておるのぉ・・・)
(いや、待て、待て、おかしいじゃろ?いきなり出て来た矢も光っておるぞ!?)
ポンポンはフレディアの光る奇妙な弓矢を見て、少し不安になってきました。
闇属性の唯一の弱点は、光属性に弱いと言う事をポンポンは本能的に察知したのでしょう。
それに、これまでポンポンはフレディアの攻撃はアークしか見た事が無かったので、弓矢を構える姿を見て異様な威圧感を感じたようです。
「行くよ!」
「あっ!」
「ちょっと!待つ・・・」
バシュッ!
「ひえ~~っ!」
ガガガ~~ン!!
身の危険を感じたポンポンは、慌てて飛び退きました。
その結果、矢が当たった防壁の岩は砕け散って、大きな穴が空いています。
ギョッ!
「おぬし!わしを殺す気か!!」
壁穴を見たポンポンが、カンカンになって怒っています。
軽く放ったつもりの矢があまりにも強力だったため、フレディ自身も驚いて、慌てて謝りました。
「ごめん、ごめん!」
「わたし、この弓矢しか持っていないから・・・」
見ていた他の面々も、さすがに驚きを隠せません。
「ちょっと、フレディア!ちゃんと考えてやらへんと、えらい事になるでぇ!」
オリビアがフレディアの頭をコツンと小突いて、叱りました。
「あ、あぶねぇ~!大体フレディアは、オレ達とはレベルが違い過ぎるんだよ!」
「わたし、矢が岩を砕くなんて、初めて見ました!」
ロックもシルヴィーも青い顔をして、まるでヤバいヤツを見るような目でフレディアを見ています。
「うふふっ、フレディアったら!冗談もほどほどにしておかないと~!」
ルナも口ではそう言っていますが、目元は笑っていないように見えます。
さすがに皆からごうごうと非難を浴びたフレディアは、反省してしょんぼりしているので、ルナがフレディアの代役を務める事にしました。
「じゃぁ、わたくしが代わりにやってみますわ」
「なんじゃと?」
「いや、おぬしもフレディア同様、規格外じゃからのぉ・・・」
「大丈夫かの?」
さすがにフレディアの弓矢にビビったポンポンは、Sランクレベルのルナを警戒しているようです。
「大丈夫ですわ!わたくし、ロックとシルヴィーの訓練で慣れていますもの」
「そ、そうか、では・・・」
ポンポンは気を取り直して、魔法を発動しました。
ヴ~~~ン・・・
ポンポンの身体を暗い影が覆いました。
ルナは最初にロック達を鍛えた時のように、拳ぐらいの水球を作り、ポンポンめがけて放ちます。
「じゃぁ、いくわよ~!」
ビユ~~~ン!
ジュッ!
ルナの放った水球が小さな音を立てて、ポンポンの身体を覆っている暗い影に飲み込まれてしまいました。
「あらっ!わたくしの攻撃が吸収されましたの?」
「いしし・・・。そうじゃぞ!」
「これは、攻撃を吸収する魔法なのじゃ!」
「すごいですわ~!」
「じゃあ、今度はもう少し強いので試してみますわね!?」
「次は水球を魔力で変質させるから、魔法攻撃も兼ねた攻撃になりますわよ!」
ルナは小指の先ぐらいの形状の水球を作ると、ガードの魔法をまとわせて、ガラスのような硬度の高い弾丸に変質させました。
「じゃぁ、いくわよ~!」
ルナはその弾丸を、指ではじいて発射させました。
ズキューン!
ジュッ!
結果は先ほどと同様、小さな音を立てて、ポンポンの身体を覆っている暗い影に飲み込まれてしまいました。
「まぁ!すごいですわ~!」
「ポンポン、すご~い!」
パチ、パチ、パチ・・・・。
ルナとシルヴィーは、手を叩いて褒めています。
「マジかよ!」
「そんなすごい魔法を簡単にもらえるなんて、ズルくないか?」
ロックはちょっと不満そうな顔をして、文句を言っています。
「簡単ではないぞ!5日間も訓練したのじゃからな!」
「それに、シルヴィーだって、ネコの神様から加護をもらっておるではないか!」
ポンポンの言葉で思い出したフレディアが、シルヴィーに尋ねました。
「そうだ、シルヴィーはどうなの?」
「セレノス様にもらった加護は、うまく使えるようになったの?」
ギクッ!
フレディアに尋ねられたシルヴィーの額から、汗がツ~と流れ落ちました。
「い、いえ、そ、それが・・・」
シルヴィーがそのまま固まってしまったので、代わりにルナが答えました。
「それがねぇ~」
「威力が急に強くなったので、振り回されているのよ~」
「ふ、振り回されているの?」
「振り回されるって、どう言うことなん?」
フレディアとオリビアが、意味が分からず聞き直しました。
「はぁ~・・・。口で説明するのもなんだから・・・」
「シルヴィーちゃん、ウインドウオールを見せてもらってもいい?」
「は、は、は、はい~!」
ルナに言われてシルヴィーは、魔力を込めて身体の周りに風の防壁を作り始めます。
ビュ~~~ッ・・・
ゴ~~~~ッ・・・
シルヴィーの身体の周りを、勢いよく風が渦を作り始めました。
と同時に、その渦に巻き込まれてシルヴィーの身体もグルグルと回り始めます・・・。
「あわわわ・・・」
「ひえ~~っ!」
グルグルグルグル・・・
ポン!
「あ~~れぇ~~!」
ドテッ!
風の渦から弾き飛ばされたシルヴィーが、地面に落下して倒れてしまいました。
彼女はグルグルと目を回しているので、起き上がる事すら出来ない様子です。
「「「あぁ~っ・・・」」」
「そういうことね・・・」
シルヴィーの様子を見たフレディアは、ルナの説明に納得しました。
「そういうことなのよ~」
ルナが慌ててシルヴィーを助け起こしています。
「これじゃぁ、空を飛ぶ事なんて、絶対にでけへんなぁ・・・」
オリビアが困った顔で空を見上げた時でした。
「あれ?」
「フレディア、あれ見てみ!」
オリビアに言われて空を見上げると、誰かがこちらへ向かって来ていました。
「あっ!カナちゃん!」
「それにあれは、シラ・・・かな?」
「あっ!あそこにいるのはフレディアだよね!」
「そうなの?あぁ、やっと地上に降りる事が出来るのね!」
「よかった!私もうこれ以上は無理だから・・・」
ストン!
「キャハハ!久しぶり、カナちゃんとシラ!」
フレディアは嬉しそうに、久しぶりに会う二人に駆け寄りますが・・・。
「ひ、久しぶり・・・だけど・・・」
「これ、どういう状況なの?」
「えっ?」
カーナに言われて振り向いたフレディアは、目の前の出来事を見て驚きました。
「あわわ・・・」
「どうなっているのよ?!」
見るとポンポンが、頭に大きなタンコブを作って倒れていました。
その横には、ロックが青い顔をしてオロオロしています。
「えっ?これ、どういう事?」
フレディアは、目を回したシルヴィーを介抱しているルナに聞きました。
「それがねぇ、ポンポンが調子に乗って、ロックにゴーレムで攻撃するように言ったのよ~」
「あわわ!オレは悪くねえぞ!」
「ポンポンがやれって言うから・・・」
「バカ!」
ポカッ!
「いって~!」
フレディアに頭を叩かれたロックが、その場にしゃがみ込みました
「わたしにレベルが違うって言ったけど、あなたのゴーレムもたいがいなんだからね!」
「ご、ごめんなさい・・・」
ロックとゴーレムの戦士が、並んで正座をしてフレディアに謝りました。
それを見たシラが、小声でカーナに尋ねています。
「ねえ、カーナ、このチームって大丈夫なの?」
「さ、さぁ・・・わかんない・・・」




