第六十二話 ポンポンも加護が欲しい(二)
カレンに名前を聞かれた漆黒の騎士ですが、残念ながら彼は答えませんでした。
「今は名乗れぬが、いずれ時が来れば分かるであろう」
「それより、この小娘は何者なのだ?」
「貴様の仲間のようだが?!」
「小娘って言うな!」
「わしの名はポンポンじゃ!召喚魔法師じゃぞ!」
胸を反らして答えるポンポンですが、実はカレンもいまポンポンがどうしているのか知りません。
「ポンポンさぁ、今はどうしているの?」
「ロファのお城にいるのかい?」
「そうじゃ!思い出したわ!」
「おぬしがわしを置いて行くから、今はフレディアのチームに入っておるのじゃぞ!」
「えっ、そうなのか?」
「フレディアのチームって、いったい他に誰がいるのさ?」
「うむ、ルナとシルヴィー、それとロックの5人で『ライトブリーズ』という名のチームを作っておるのじゃ」
「へえ~っ!ルナも仲間に入ったんだ?!」
「それは、面白そうなチームだな!」
「どうじゃ、すごいじゃろ!」
二人の会話を聞いていた漆黒の騎士は、自分に与えられた目的のため、思い切った行動に出る事にしました。
「ポンポンとやら!」
「さっき闇の神の加護が欲しいと言っていたな?」
「そうじゃぞ!」
「では、お前に私の持つ魔法を一つ授けてやろう」
「なんじゃと?魔法じゃと?」
「それは、どんな魔法なのじゃ?」
ポンポンは興味津々で質問しました。
「これは闇属性の者にしか扱えぬ魔法でな・・・」
「『カースイーターシールド』という魔法だ」
「おぉ!なんかカッコいい名前なのじゃ!」
「それはどんな力の魔法なのじゃ?」
「私は魔法を吸収する力『マナドレイン』があるのだが、それより若干威力は落ちるが、物理攻撃も魔法攻撃も吸収する便利は魔法だ」
魔法の効果を聞いたカレンは、驚いて漆黒の騎士に尋ねました。
「おい、おい!正気なのか?」
「なんでポンポンにそんなすごい魔法をくれるんだよ?」
「って言うか、お前いったい何者なの?」
「敵ではない事は分っているんだけど!?」
とうとうカレンが直球で、漆黒の騎士に正体を教えろと迫りました。
「はぁ・・・」
「とにかく、貴様らがモルグデウスやザキュエルに負けると困るのだ!」
「私はそうならないように、貴様らに力を貸すように派遣された者なのだよ」
「ただし、直接奴らと戦う事は禁じられている」
「いま、言える事はこれだけだ!」
「さぁ、どうするポンポンとやら!」
「私に騙されて殺されると思うのなら、やめておくがいい!」
「もちろん、魔法をもらうのじゃ!」
「即答だな!」
「カレン!この娘を5日間借りるぞ!」
「5日間も?いったいポンポンに何をするんだ?」
「私の闇の魔力を与えて、魔法を使える訓練にかかる時間だ」
「ポンポン、それでいいのだな?」
カレンはもう一度ポンポンに尋ねましたが、ポンポンの意思は変わりませんでした。
「わかった!勝手にやってくれ!」
そう言うとカレンは、大の字になって寝てしまいました。
リーファはポンポンが訓練をしている間中、イレーネの背中に乗って、あっちこっちへ飛び周り、時々発生する異界から侵入した魔物の退治をしていました。
「そろそろ晩御飯の時間だけど、誰かポンポンを知らない?」
夕飯を作るのを手伝っていたフレディアが、訓練を終えて帰って来たルナたちに尋ねました。
「知らねえけど、ご飯の時間になったら帰って来るんじゃねえの?」
ロックがあっけらかんと答えました。
「そうねぇ、いつもご飯の時間には必ずいるから、すぐに帰って来るんじゃない?」
「ポンポンなら、きっとご飯までには帰って来ますよ!」
「そうだよね!」
「あのポンポンが、ご飯の時に居ないはず無いよね!」
ルナとシルヴィーもそう言うので、フレディアも大丈夫だと思っていたのですが、ポンポンはいつまで経っても帰って来ませんでした。
「どこに行ったんだろ?」
「ポンポンがご飯の時間に帰って来ないって、絶対に変だよね!?」
フレディアが心配そうに言うと、カミラがギリガンを呼んで言いました。
「とにかく、あなた達は先に食べていてね!」
「私と夫で町を捜してみるから」
そう言って二人で捜しに行ってくれました。
それから1時間ほど経った時です。
家の玄関に突然黒い霧の渦が現れ、その中から何かが飛び出してきました。
ポン!
ポン!
ドテッ!
「あいた!」
「着地を失敗したのじゃ!」
飛び出して来たのは、ポンポンとリーファでした。
ポンポンはお尻を打ったらしく、スリスリとさすりながら食堂へ入って行きました。
「えっ!ポンポン、どこに行っていたのよ?」
「晩御飯の時間に帰って来ないから、みんな心配していたのよ!?」
フレディアが少し怒り気味に声をかけました。
「そうよ~、心配してカミラさんとギリガンさんが、捜しに行っているんだから~」
ルナにまで言われて、ポンポンは慌てて謝りました。
「悪かったのじゃ!まさか5日も帰れぬとは思わなかったのじゃ!」
「「「はぁ~~~~っ!?」」」
「お前、なに寝ぼけているんだよ?」
「姿が見えなくなってから、まだ5時間ぐらいしか経ってねえよ!」
ロックが呆れた顔で言いました。
「何じゃと?」
「わしは5日間も、妖精の里で訓練をしておったのじゃぞ?」
「えっ?妖精の里?!」
「妖精の里まで、どうやって行ったの?」
フレディアが驚いてポンポンに聞き直しました。
「リーファが連れて行ったの!」
ポンポンの頭の上で、パタパタと羽を瞬かせながらリーファが答えました。
「まぁ!リーファちゃんって、自分だけじゃなくポンポンも連れて行けるのね?」
「すごいわぁ~!」
「ねぇ、リーファちゃん!わたくしも一度連れて行ってくださらない?」
ルナがリーファにお願いしましたが、リーファの返事はつれないものでした。
「ポンポンは契約しているから行けるけど、ルナ様はダメなの」
「え~~っ、そうなのぉ?残念ですわ~」
フレディアも、契約者のポンポンがリーファの力で妖精の里へ行ける事を知らなかったので、大変驚いていました。
「すご~い!わたしもビックリだわ!」
「いしし・・・どうじゃ、驚いたじゃろ?」
ポンポンは胸を反らして自慢しています。
「それでポンポン、5日間の訓練ってなに?」
フレディアの質問に、ポンポンは妖精の里での出来事を話して聞かせました。
「「「「え~~っ!カレンが漆黒の騎士と剣の訓練をしていたの?!」」」」
「うわっ!それって、大スクープやで!」
「ごっついお手柄やわ、ポンポン!」
フレディア達が大声をあげて驚き、オリビアがよくやったと褒めるので、ポンポンはさらに身体をググっと反らして自慢したため、後ろにひっくり返って頭を打ちました。
ゴン!
「それでポンポンも訓練に参加したってこと?」
フレディアはポンポンを助け起こしながら尋ねました。
「いたた・・・わしは剣の訓練ではなく、魔法の訓練じゃぞ!」
「魔法の訓練?」
「うむ、その黒い騎士から、『カースイーターシールド』という魔法を教わったのじゃ!」
「うわっ!何か知らねえけど、すげえカッコいい名前じゃん!」
カッコいい事に敏感なロックが、ビックリして言いました。
「いしし・・・カッコいいじゃろ?」
「それで、カレンの様子はどうだったの?」
「ひどい目に合っていなかった?」
フレディアは心配そうにポンポンに尋ねました。
しかしポンポンの返事は、フレディアの意に反して、しかも何となくみんなが納得の出来るものでした。
「なんか、カレンの方が騎士より偉そうにしておったぞ?」
「「「「えっ?」」」」
フレディア達はお互い顔を見つめ合いました。
そして全員の答えは一致しました。
「「「「やっぱり!」」」」




