第六十一話 ポンポンも加護が欲しい(一)
モモちゃんのお店を出たフレディア達は、セレノス様にもらった加護について聞きました。
「セレノス様、加護をもらってシルヴィーは、どんな事が出来るようになったの?」
「セレノス様言うたよなぁ?とっておきの加護をくれるって!」
「あっ!それなら、カナちゃんの大旋風が使えるようになるとか?!」
フレディアは期待を込めて聞きましたが、さすがにそれは無理のようです。
「いや、いや、あれは普通の人間には使えんがな!」
「魔力の絶対量が違い過ぎるからのぉ」
「じゃぁ、どんな事が出来るの?」
「うむ、まず今使える魔法の威力が、たとえばスラッシュアタックは桁違いに強くなるのぉ!」
「エアロカッターは、敵単体から複数の敵に攻撃出来るようになっておるぞ」
「おわっ!それ、メッチャええやん!」
「「イエ~イ!」」
オリビアがシルヴィーとハイタッチをして喜んでいます。
「それに風操作が付与されたことにより、修練をすればウインドウオール(風の防壁)も作れるし、空を飛ぶことも出来るぞい!」
「まぁ!ステキな魔法ですわ~!わたくしが欲しいくらいですわ!」
「よかったわね、シルヴィー!」
「わしも欲しいのじゃ!」
ルナとポンポンも羨ましそうにしていますが、何より嬉しいのはシルヴィー本人でした。
「ありがとうございます、セレノス様!」
ギュ~~ッ!
「どひゃ~~!!」
シルヴィーはセレノス様を抱きしめて、大喜びしています。
「じゃあ、そろそろアルガの町へ帰ろうか!」
「このままだと、またセレノス様の意識がぶっ飛んでしまいそうだし・・・」
「そやな!カナちゃんがフレディアに会いに来ているかもしれへんしな!」
シルヴィーとセレノス様は、もう少しこのままでいたそうにしていましたが、フレディアとオリビアに言われると、そう言う訳にはいきません。
フレディア達はセレノス様と別れて、アルガの町へ戻って行きました。
ヘーベル歴251年10月上旬。
フレディア達はアルガの町の、ロックの家に帰ってきました。
「ただいま~!」
フレディアの声がしたので、ロックの母親のカミラさんが急いで出てきました。
「まぁ、フレディア様!お帰りなるのがずいぶん遅かったのですね?」
「キャハハ!ちょっとね!」
「ところでカミラさん、留守中に誰か私を訪ねて来なかった?」
「いえ、誰も尋ねては来ませんでしたよ」
「ありゃ?」
「カナちゃん、来てないね?」
「ほんまやな!カレンを捜す言うとったけど、まだ見つかれへんのやろか?」
てっきりカーナが来ていると思っていたオリビアとフレディアでしたが、仕方なくしばらく様子を見る事になりました。
その間フィレディアとオリビアは、神様から託された依頼をどうするか、相談を始めました。
ルナはシルヴィーとロックを連れて訓練を始めましたが、主にシルヴィーの神様からもらった加護の力である、風操作に重点を置いての訓練となりました。
そしてポンポンはリーファと一緒に、カミラさんからもらったおやつを食べていました。
「シルヴィーはズルいのじゃ!」
「神様から加護をもらって、ウインドウオールとかいうカッコいい防御魔法が使えるようになったのじゃぞ!」
「わしも防御魔法が使えないと困るのじゃ~」
「またフレディアに叱られてしまうでのぉ・・・」
「ポンポンかわいそう」
「じゃろ?」
「リーファよ、妖精の里に闇の防御魔法をくれる精霊はおらんかのぉ?」
「おらん!」
「即答じゃの!!」
「でも、いま里に変なヤツが来てるよ」
「変なヤツとはなんじゃ?」
「黒い翼のある、闇の気配のするヤツ」
「それと髪と肌の色がポンポンと同じ、背の高いきれいなお姉さん」
「変わった組み合わせじゃのぉ?」
「見に行く?」
「えっ?それは行ってみたいけど、そんな簡単には行けぬじゃろ?」
「フレディアに頼んで、フロイドを呼んでもらわんと・・・」
「リーファが連れてってあげるよ」
「ポンポン、杖の魔力で扉を出して!」
「そんな事が出来るのかの?」
ポンポンは半信半疑で、リーファに言われるまま詠唱を始めました。
そして出現した黒い霧の渦の中に、リーファと一緒に飲み込まれて消えてしまいました。
その頃妖精の里では、漆黒の騎士とカレンが壮絶なバトルを繰り広げていました。
キン!キン!キン!
キィ~~~ン!
ガキッ!
バシュッ!
「あまい!」
「何度言ったら分かるのだ!そこは受け流せと言っただろう!」
カレンに漆黒の騎士の怒声が飛びます。
「うるせえ!そんな簡単に出来るか!」
「お前の教え方が悪いんだよ!」
「何だと?」
「貴様!師匠の私に向かってその口の利き方はなんだ?!」
「師匠と呼ばれたかったら、オレに倒されろよ!」
「はぁ?貴様は何を・・・」
「オレがお前に勝てたら、師匠と認めてやるよ!」
「いや、待て、待て・・・」
「それ、おかしくないか?」
漆黒の騎士は剣を止めて、カレンに問いかけました。
「どうしてさ?」
「お前に勝てる程強くなったら、それはお前のお陰なんだから!」
「師匠と認めてやるって言っているのだが?」
「そ、そうなのか?」
「この世界では、それが当たり前なのか?」
「そうだよ!」
「だから、師匠と呼ばれたかったら、早くオレを強くすればいいじゃん!」
「そ、そうか、分かった・・・」
「相変わらずメチャクチャじゃのう、カレンは・・・」
妖精の里に発生した黒い渦から飛び出したポンポンとリーファは、カレンが漆黒の騎士と戦っているのを見て驚いています。
そして戦闘を再開しようとした二人も、突然ポンポンが現れたのでビックリしています。
「あれっ!ポンポンなのか?」
「カレンよ、久しぶりなのじゃ!」
「えっ?どうしてポンポンが、ここにいるのよ?」
「いしし・・・」
「どうじゃ、驚いたか?!」
「カレンっていうの?ポンポンに似たきれいなお姉さん」
ポンポンの頭の上に乗ったリーファが、ポンポンに尋ねました。
「えっ!なに?」
「このかわいい妖精ちゃん、ポンポンの知り合いなのか?」
リーファの存在に気付いたカレンは、驚いてポンポンに尋ねました。
「そうじゃ、リーファっていうのじゃぞ!」
「で、そこの悪者は一体何者なのじゃ?」
ポンポンは、カレンの後ろにいた漆黒の騎士を指さして尋ねました。
「!?」
「おい、おい、いきなり私を悪者扱いにするのか?」
「うむ、どう見ても正義の味方には見えぬがのぉ」
「うぷぷぷ・・・」
ポンポンのあまりにもぶしつけな質問に、カレンは口を手で押さえて、必死に笑うのを堪えて見ています。
「いや、いや、そっちこそおかしいぞ?」
「闇の属性の娘が、なんで聖光樹の妖精と契約を結んでいるのだ?」
漆黒の騎士は一目見た時から、ポンポンの属性とリーファの正体を見破り、そのおかしな組み合わせに疑問を抱いていたのでした。
「むっ!おぬし、それを見破るとは、ただ者ではないの?!」
「ひょっとして、闇の神ではあるまいな?」
ギクッ!
(何だと?この娘、どうして私の素性を知っているのだ?!)
闇の支配者の眷属である騎士は、それを見破られた事を驚いていますが、もちろんポンポンはそんな事は何も知りません。
ただ闇の神様の加護が欲しいと言う願望が、漆黒の翼を持つ騎士の姿と重なり、つい口から出ただけなのでした。
しかし勘違いをしている漆黒の騎士は、どうやらポンポンに一目置いたようです。
「いや、神ではないが、それに近い系列の者だ」
「なんと!そうじゃったのか?」
「では、頼みがあるのじゃが!」
「なに、頼みだと?」
「そうじゃ、闇の神様に頼んで、わしに闇の加護を授けてくれぬかの?」
「「はぁ~~~~っ?!!」」
いきなりのポンポンの発言には、さすがにカレンも漆黒の騎士も驚きの声を上げました。
「いや、待て、待て!」
「おい、カレン!この娘は一体何者なのだ?」
「あっ!お前、初めてオレの名前を呼んだな?!」
「じゃぁ、オレもお前を名前で呼んでやるから、言ってみろよ」
カレンはニヤリと笑って言いました。




