第五十九話 古き森の洞窟(二)
このダンジョンは地下5階まである、中ぐらいの規模のダンジョンです。
問題の魔物は最下層の5階に潜んでいるそうですが、それ以外の魔物もたくさん潜んでいます。
定番の大コウモリや、ゴブリン、オークは勿論、Ⅾランクの大型のグラットスライムや、毒を持つカビのモールドスウォーム。天井にへばりついて、毒のブレスを放つグリーンビトンなどのスライム系の魔物。
Cランクの大きな牙を持つグロームファングや、ケイヴハウンドと言った野獣系の魔物に、岩石の魔物クラグモールと言った魔物が出現します。
地下2階までは、他の冒険者とも遭遇したのですが、3階以降はパッタリ見かけなくなりました。
この階からは、Cランクの魔物が頻繁に襲って来るようになります。
しかしCランク程度の魔物では、今のライトブリーズには脅威ではありません。大概は先頭のゴーレムが叩き潰してしまうからです。
岩石の魔物クラグモールが集団で襲って来た時には、ロックが「あっちへ行け!」と命令すると、素直に帰って行ったのには、他のメンバー達も驚いていました。
「あ~っ!やっぱり岩の支配者って、本当なんだわ!」
フレディアも、ギリガンの言葉を思い出して納得しました。
ただスライム系やゴースト系などの、物理攻撃の効きにくい魔物に対しては、フレディアの魔法以外に有効な手段を持ち合わせておらず、これがこのチームの課題となっています。
しかしこの時点では、フレディアはまだモルグデウスの事を知らないので、それほど気にはしていませんでした。
そんなこんなで、一行は6時間かけて問題の地下5階へ到達しました。
「ここからは、気を引き締めて行くわよ!」
フレディアが声をかけたと同時に、相手の攻撃が始まりました。
ポイ!
コロコロ・・・。
「えっ?」
ボッカ~~~ン!!
「あわわ・・・」
フレディアの目の前で、転がって来た爆弾がいきなり爆発しましたが、ロックのゴーレムが大きな盾で防いだため、大事には至りませんでした。
「ケ、ケ、ケッ!」
ポイ!ポイ!ポイ!ポイ!ポイ!
コロコロコロコロ・・・・・・・・。
「うっわ~!メチャクチャ爆弾を放り投げて来た~!」
ロックが慌てて盾で防ぎます。
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
ロックのゴーレムの盾が、爆弾に吹き飛ばされてしまいました。
急いでフレディアとルナがバリアを張り、攻撃の態勢をとりましたが、爆破による煙とホコリで、相手を見失ってしまいました。
「くっそ~!どこへ行きやがった?」
ロックが壊された盾を修復しながら、辺りを警戒します。
地下5階は暗い上に、岩床にトゲのような形の石柱がたくさん出来ており、身を隠すのに適した地形になっています。
ポイ!ポイ!ポイ!
コロコロコロコロ・・・。
「あっ!爆弾が転がって来た!」
「どこから投げて来たの?」
辺りを見回しますが、暗くてよく分かりません。
それに爆弾は爆破しませんでした。
「あれ?不発弾かな?」
フレディアが油断した瞬間、転がって来た爆弾3つが一斉に爆破しました。
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
ボッカ~~~ン!!
他の冒険者なら大ごとになっていますが、しかしフレディアとルナのバリアはビクともしません。
「あら~~っ!もしかして、爆弾を自在に操れるのかしら?」
「困りましたわねぇ~」
「ギャ、ギャ、ギャ、ギャ~~~ッ!!」
口ではそう言いながら、全然困った様子のないルナに腹を立てた魔物は、背の高い岩の上から大きな声で吠えて、爆弾を投げつけようとしました。
その瞬間、フレディアがみんなに目をつむる様に指示し、フラッシュの魔法を放ちます。
ピカッ!!
眩い閃光が放たれ、辺り一面を真昼のような明るさにしました。
暗闇に目が慣れた魔物は完全に視力を失い、岩の上から転がり落ちて行きます。
「ウギャ~~ッ!」
コロコロ・・・
ポテッ!
「あっ、落ちた!」
「ルート!」
リーファがすかさず、大地に網状に張り巡らせた根で捕獲しました。
「グギャ、ギャ、ギャ~!」
「スパイン!」
「グギャ~~~!!!」
悲痛な叫び声をあげながら、魔物はその場で絶命しました。
「こやつの爆弾は、けっこうヤバかったのぅ・・・」
ポンポンが醜悪な顔をしたゴブリンのような魔物を、杖で突きながら言いました。
「だよね!だから身を護る魔法を習得しないとダメなのよ!」
このフレディアの意見に対して、ポンポンとシルヴィーがビクッと反応しています。
(あわわ!しまったのじゃ!)
ポンポンは妖精の里でフレディアの特訓を受けたのですが、どうしても攻撃を防ぐ事が出来ず、とうとう泣き落としで訓練を阻止していたのでした。
「ポンポン、ちゃんと考えているの?」
「も、もちろんなのじゃ!」
「のう、シルヴィーも考えておるじゃろ?」
ヤバいと思ったポンポンは、矛先をかわそうとシルヴィーに同意を求めました。
「も、もちろん私も、痛いのはイヤですから・・・」
「あは、あは、あは・・・」
シルヴィーも、ルナからガードの魔法とウインドウオールの訓練を受けていましたが、上手く行かず逃げ腰になっていたのでした。
「うふふっ、この件は帰ってから、ゆっくりと話し合いましょうね~」
「「は、はい・・・なのじゃ」」
ルナの言葉に怯えながら、二人はしぶしぶ返事をしました。
「じゃぁ、帰ろうか!」
フレディアの号令で、シルヴィーが『おくびょう風』を発動し、一気に地上へと帰還しました。
陽も落ちて、あたりが暗くなったころにギルドに到着したフレディアを、サントスが慌てて出迎えてくれました。
「フレディア様!お待ちしておりましたぞ!」
「あっ、サントス!」
「そんなに慌てなくても、依頼ならちゃんと・・・」
「いえ、いえ、そんな事は心配しておりませんでしたぞ」
「それより、先ほどからオリビア様が皆さんのお帰りを待っておられるのです!」
「えっ?オリビアが?!」
「はい、二階の執務室でお待ちいただいておりますので、どうぞそちらへ!」
急いで二階の執務室へ行くと、オリビアは出されたお菓子とお茶をパクパクと食べていました。
「あぶっ、おがえりブレビア・・・」
「あぼざぁ、ごのばえな・・・」
「いや、オリビア・・・」
「口にいっぱいに頬張っているから、何を言っているのか分かんないのだけど?」
「ゴク、ゴク・・・プハ~ッ!」
「あははっ!この前な、お菓子を口いっぱいに頬張ったルミナテス様がなぁ!」
「驚いた拍子に、のどに詰まらせて死にそうになったんやで~!」
オリビアは自分の事は棚に上げて、愉快そうにフレディアに言いました。
「えっ?その事を言いに来たの?」
「そうなの・・・って、そんな訳あるかいな!」
ピシッ!
(えっ?!)
(なんか最近のオリビアって、ちょっとヘン・・・)
オリビアが、ツッコミの時にするジェスチャーをしましたが、フレディアには良く分からないようです。
お茶を飲み終えたオリビアは、天界での会議の内容を、つぶさにフレディアに報告しました。
そして、ダレス様から言い渡された対策について、カーナがフレディアと相談したがっている事を告げました。
「あっ!そうなんだ?!」
「じゃぁ、セレスフィア様の神殿はカナちゃんと相談するとして・・・」
「セレノス様の加護は、同じ風の魔法使いのシルヴィーがもらってもいいよね?」
「うん、うちもそれでええと思うわ!」
「あと土の女神テラシア様の加護を誰にするかやな?」
「うん、それもカナちゃんと会ってからだね」
「やったね、シルヴィー!」
「明日ミントの町へ行こうか!」
「はい、フレディア様!」
こうしてこの日はオリビアも参加して、盛大にCランク昇格のお祝をやる事になりました。
そして翌朝、サントスから3人にCランクの証明書とバッチを授与された後、ミントの町へと旅立ちました。




