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第五十七話 朽ち果てた古塔

ヘーベル歴251年9月上旬。


カレンが朽ち果てた古塔へ到着しました。


「うわっ!汚ったねぇ塔だな~!」

「あいつ、本当にここにいるのか?」


バキッ!


壊れた扉を蹴とばして中に入ると、恐る恐る周りを見回しました。


「あ~っ、何か変な魔物が、いっぱいいるじゃん!」

「とりあえず、こいつらを何とかして上に登るか・・・」


朽ち果てた古塔は4階建てになっており、各階への移動は長い螺旋階段を登らなくてはなりません。

襲って来る魔物を蹴散らしながら、カレンとイレーネは上へ上へと昇って行きます。


最上階に登った頃には、沢山いた魔物もすっかりいなくなっていました。


最上階からは、塔の屋上へ出る事が出来ます。

カレンとイレーネは屋上から、陽が沈みかけた雄大な森を眺めていました。


「あの野郎、本当に来るのだろうな?」

「あれだけ魔物がいたって事は、ここへは一度も来ていないんじゃないのか?」


「キュイ、キュイ~ッ!」


「だよな!」


「あっ、だけどあいつと戦ってからひと月以上経っているからな、そこは微妙だな?」

「まぁ、せっかく来たのだから、しばらく様子をみるか・・・」


カレンはそれから5日間、朽ち果てた古塔で待ちましたが、漆黒の鎧の騎士は現れませんでした。


「くそっ、あいつ騙しやがったな!」

「仕方がない、そろそろ帰るか?!」


イレーネにそう言った時でした、西の方角に何かが飛んでいる姿が見えます。


「あれっ?あの姿は・・・」



「あ~っ!やっと見つけた!!」


上空から塔の上に降りて来たのは、カーナでした。


「よかった!まだここにいたのね?」


「やぁ、どうしたんだ?なんか急いでいるようだけど?」

「なにか問題でもおきたのか?」


カレンが心配してカーナに尋ねました。


「問題っていえば、問題なのよね・・・」


カーナが腕を組んで難しい顔で言うので、カレンも気になるようです。


「なに、それ?やばいこと?」


カーナは天界の会議での様子を、カレンにつぶさに話して聞かせました。


「そうか~、神様たちも漆黒の騎士の事は知らないって言うのだな?」


「うん、でも少し引っかかるのよね・・・」


「なにが?」


「だって、ザキュエルがモルグデウスを復活させようとしているのは、事実だったでしょ?」


「もし漆黒の騎士が敵なら、わざわざあたし達に教えないでしょ!?」


「そりゃ、そうだな」


「それにね、モルグデウスは神様に一度封印されているんだけど、どうやって封印したのか教えてくれないのよ!」


「そうなのか?なにか秘密があるのかな?」


「そうなのよ!」

「ひょっとして、漆黒の騎士と何か関係があるかも知れないのよ!」

「これは、あたしの勘だけどね!」


「そっか!わかった!」

「カーナの勘はよく当たるからな!」


「カーナ、オレも、もう少しここであの野郎が来るのを待ってみるよ!」

「そしてあいつの正体を暴いてやるぜ!」


「わかったわ!」

「じゃぁ、あたし行くね!」

「加護の事や、セレスフィア様の泉の事をフレディアとも相談しなくちゃいけないから!」


「おう、よろしく頼む!」


こうしてカーナと別れて半日が過ぎた頃、東の空からペガサスに乗った漆黒の騎士が姿を現しました。



「本当に来るとは驚いたぞ!」


漆黒の騎士は塔の上に降り立つと、カレンに向かって言いました。


「当り前だろ?オレは負けっぱなしは嫌いなんだよ!」

「さぁ、さっさとオレを強くしろ!」


カレンの豪気が気に入ったのか、漆黒の騎士は傲慢なカレンの態度を咎める事もなく、素直に頷きました。


「よし、いいだろう!」

「では、場所を変えるぞ!」


「どこへ行くんだ?」


「ふっ、ふっ、ふっ・・・」

「一日が1時間になる所だ!」

「お前を鍛えるには時間がかかるからな!」


「はぁ?一日が1時間だって?なんだそりゃ?」


「いいから乗れ!時間がもったいない!」


「いや、だったらオレを5日も待たすなよ!」


カレンはブツブツ文句を言いながら、イレーネと一緒にペガサスに乗りました。

そして北の方角へ、ものすごいスピードで駆けて行きました。




その頃アルガの町のロックの家では、ポンポンがリーファを呼び出して、一緒におやつを食べていました。


「リーファよ、このイチゴもちはのう、ロックの母ちゃんに特別に作ってもらった物じゃぞ!」


「イチゴもち?」


「うむ、おもちの中に甘いイチゴの入ったお菓子なのじゃが、渋いお茶と一緒に食べるのがツウなのだそうじゃ」


「ほれ、リーファも食べてみ?」


「もぐ、もぐ・・・」


「はい、お茶!」


「ズ、ズ、ズ~~~」


「どうじゃ!おいしかろう?」


「うん!おいしい!」



「おや、おや?今日はポンポン一人でお留守番かい?」


厨房から出てきたカミラさんが、ポンポンに声をかけました。


「あっ、ロックの母ちゃん!」


「ロックとシルヴィーは、ルナの特訓を受けておるのじゃ」

「フレディアはギルドに素材を渡しに行っておるぞ」


「そっか!」

「でもポンポン、お菓子ばっかり食べていたら、晩御飯が食べられなくなるよ?」


「大丈夫じゃ!カミラの作ったご飯は美味いからのぉ!」

「いくらでも食べられるのじゃ!」


「あらっ!嬉しい事を言ってくれるね!」

「だったらもう、家の子になるかい?」


「なんじゃと?」


「ロックのお嫁さんになったら、毎日おいしいご飯が食べられるよ?」


「さては!わしが美人になるのを見越して、今のうちにツバをつけようという魂胆じゃな?」


「あっ、はっ、はっ、はっ・・・・」

「バレちゃったか~!」



「こら~~っ!」

「なに勝手な事を言ってんだよ!!」


訓練から帰って来たロックが、今の話を聞いて、顔を真っ赤にして怒っています。


「ほんに冗談の通じぬヤッよのぉ・・・」

「そんな事では、誰も嫁に来んぞ?」

「ズ、ズ、ズ~~~」


ポンポンは、美味しそうにお茶を飲みながら言いました。


「うっせ~!ほっといてくれ!!」

「オレは今月18歳になったばかりなんだからな!嫁なんか早いんだよ!」


「あらぁ~、またケンカをしていますの?」

「うふふっ、本当に仲がよろしいのね?」


「イヤ、何でそうなるの?!」


ルナの言葉を聞いて、ロックはその場に倒れそうになっています。


「ただいま~!」


「キャハハ!なに騒いでいるの?」


シルヴィーとフレディアも帰ってきました。


「うふふっ、いつもの事ですわ!」


「なんだ、そっか!」


「いや、いつもの事ってどういう意味だよ!」


「あのね!そろそろパステルのギルドに、昇格試験を受けに行こうと思うんだけど」


(ちぇっ!無視かよ・・・)


ロックは椅子に座って、ドヨドヨとしてしまいました。


「そうねぇ、パステルでの戦いからひと月以上も経つから、そろそろいいかもね!」


「わしもEランクのバッチのままでは恥ずかしいぞ!」


「私もフレディア様の意見に賛成です!」


ルナ、ポンポン、シルヴィーが賛成したので、話がまとまりました。


「じゃあ、決まりね!」


「うおぃ!オレの意見は聞かねえのかよ!」


「何か意見があるの?」


「えっ!」


(そ、そんな、改まって聞かれると、困るんだけど・・・)


「い、いえ、別にございませんが・・・」


「じゃぁ、明日出発ね!」


「「「は~~い!」」」


ロック以外、全員やる気満々で答えました。



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