第五十三話 カレンの旅立ち
町の入り口ではマウロが、搬入する物資の仕分けを指示していました。
カレンはその様子を見て、少し話しかけるのをためらっていましたが、ちょうど荷物が途切れたのをきっかけに、マウロに声をかけました。
「マウロ、ちょっといいか?」
「あっ、カレンさん、なんすか?」
「ちょっと、剣を見せてくれないか?」
「ええ、いいですよ」
マウロはAランクに昇格した時に、大金を払って買った自慢の剣『ムーンリットソード』をカレンに渡しました。
カレンは剣をスラリと抜くと、その美しい光沢を見て言いました。
「やっぱり、魔物の持っていたなまくらとは全然違うな・・・」
「当り前ですよ!それ、すごく高かったんですよ!」
マウロは嬉しそうに自慢しています。
「マウロ、ちょっとオレの魔力をまとわせてもいいか?」
「えっ?魔力って?」
「剣が溶けちゃったら、ごめんね!」
「え~~~~っ?!」
マウロが断る暇もなく、カレンは剣にインドラの雷撃をまとわせてみました。
ヴ~~~ン・・・・
剣は青白い輝きを強く放っています。
「うわっ、すんげえ明るいな!?」
カレンはその状態で、前方にある5メートルほどの高さの木に向かって、剣を水平に振ってみました。
ヒュン!!
ズズ~~ン!!
すると青白い斬撃が剣から飛び出し、前方の木をスパッと切り倒してしまいました。
「え~~~~っ!」
それを見たマウロは驚きの声を上げています。
「おっ、やっぱり良い剣だな!刃が溶けていないや!」
カレンは刃先を見てニコッと笑いました。
この様子を見ていた、マウロと同じAランクの剣士のリオンも、面白そうな事が始まったので、いそいそとやって来ました。
「カレンさん、カレンさん!そんなすごい技をどこで覚えたのですか?!」
「マウロの剣って、魔法は付与されていない普通の剣だよね?」
リオンは興奮気味にマウロに尋ねました。
「あぁ、魔法が付与された剣なんて、ちょっとやそっとでは手に入らないからな」
リオンの質問にマウロが答えました。
「オレはムチにやっている事と同じことを、剣にやっただけなんだけど・・・」
「こっちの方の威力が桁違いなんだよな~」
カレンが青白く輝く剣を見ながら、不思議そうにつぶやきます。
「それは金属の方が、雷を通しやすいからじゃないかしら?」
大きな木が倒れたのを見た魔法使いのシラが、何ごとかと思ってやって来ました。
そしてカレンの疑問に、自分の魔法使いの知識を基に答えました。
「それに魔力自体、なぜか剣になじみやすいのよね?!」
「たしかに、たしかに!」
「アイスブレードやサンダーブレードって、剣士の間じゃ有名だよな!」
剣士のマウロとリオンにとっても、魔法剣は憧れの剣のようで、シラの意見に共感しています。
「でも、ハンク様の持つ炎の剣ヘスティアーは、別格だけどね!」
シラの言う炎の剣ヘスティアーとは、ヤーンの遺跡にあった炎の神の力を秘めた神剣で、斬撃を飛ばして一振りで百の敵を倒す事が出来ると言われる伝説の剣の事です。
マウロ、リオン、シラが魔法剣について話していると、そこにカーナとダグラスもやって来ました。
「おう、おう!何じゃこりゃ?!」
「大きな木をぶっ倒して、何をやってるんじゃい?!」
ダグラスが倒れた木を見てぼやいています。
「あれっ!カレンが剣を持ってる!」
カーナは剣を持つカレンを、不思議そうに見ています。
「おっ、何か騒がしくなって来たな!」
あちこちから人が集まって来たので、カレンが気まずそうにしていますが・・・。
「まぁ、いいや!」
「この際だから、みんなに言っておくか・・・」
カレンはそう言うと、カーナやダグラス達に爆弾発言をしました。
「オレ、しばらく旅に出るわ!」
「「「「「え~~~~っ?!」」」」」
「でた!いつものわがまま発言!」
カレンを良く知るダグラスが、頭を抱えて言いました。
「ちょっと、カレン!それってどういう事?!」
カーナが慌てて聞きました。
「いや、オレこの前、漆黒の騎士に負けただろ?!」
「だから、このままじゃダメじゃん!」
「それって、もう一度あの騎士に会いに行くって事?」
カーナが険しい顔で尋ねます。
「うん、そうしようと思っている」
「え~~っ!絶対にダメだよ!!」
「だって、カレンを殺そうとした奴だよ!1」
カーナが猛烈に反対しました。
しかしカレンは、あれはあの騎士のパフォーマンスだったと考えています。
「いや、それがあの時、まったく殺意を感じなかったんだよな・・・」
「それにオレを殺す気なら、いちいち断らなくても、さっさとヤレたはずだし・・・」
「それにヤツは気になる事を言ったんだ!」
「もうすぐモルグデウスが復活するぞ!時間は無いとおもえ・・・とね!」
「それに、貴様程度では、ザキュエルはおろか、モルグデウスにも勝てないだろう!とも言われたよ!」
「悔しいけど、オレもそんな気がするんだわ」
「それに、アルサンドラの町を奪還した今、町の防衛力の強化と、輸送路の確保が一番の目的だろ?」
「オレがいなくても、やって行けるじゃん!」
「そんなぁ~!」
「じゃぁ、どうしても行くの?」
「今でないとダメなの?」
カーナは最後にもう一度引き留めてみましたが、カレンの決心は固いようでした。
「うん!でも心配ないよ、またすぐ帰って来るからさ!」
カレンはそう言うと、カーナを抱きしめて約束しました。
「あ~~っ!わかった!!」
「お前は一度言い出したら、絶対に後には引かねえからな!!」
「ほれ!餞別だ、持って行け!」
ダグラスはそう言うと、カレンに自分が愛用している特注のバスターソードを渡しました。
「でけえな、コレ!」
「お前なら使いこなせるだろ?」
「じゃぁ、ありがたくいただくよ!」
カレンはバスターソードを片手でブンブン振り回した後、雷撃をまとわせて垂直に振り下ろしてみました。
ヒュン!!
すると50メートル先まで、地面にザックリと裂け目が入りました。
「うん!いいね!」
カレンは気に入ったようです。
「カレン、あたしも一度天界に帰って、さっきの話をしてみるよ」
「あぁ、頼むよ!」
「モルグデウスって奴が、何者なのか・・・」
「敵の情報は出来るだけ早く知っておかないとな!」
ヘーベル歴251年8月下旬。
カレンはチームを抜けて、イレーネと共に『灰色の森』にある、『朽ちた古塔』へと旅立ちました。
またカーナは、この事を報告するために、天界へ戻りました。




