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第五十話 アルサンドラの奪還(一)

<主な登場人物>


久しぶりに登場した人物を紹介しておきます。


<ポニー>Bランク武闘家 茶色い髪に茶色い瞳のかわいい女の子 武器はミスリルクロー 特技:気功による回復


<マルティー>Bランクアーチャー 赤色の髪に赤い大きな瞳 小柄で活発な可愛い女性 武器は改造された弓矢


<コローニ>Bランク槍使い 緑色の髪に茶色い瞳 背の高いハンサムな男性 武器はミスリルスピア


<スージー> Aランク魔法使い 赤い髪に緑の瞳の背の高い美女 特技:『ストーンバレット』『液状化』『ロックウオール』


カルカラッサの町から、リヴァーヘイムの町のギルドマスターとなったダグラスは、国からクロッサムの町への輸送路の確保と、アルサンドラの町を奪還するための、手助けをするように言われてやって来ていました。


「輸送路の確保だが、いまリヴァーヘイムの町から10キロメートルごとに、砦を作りながらこちらへ進めているところだ」


「この作業は、リヴァーヘイムのギルドが護衛しながら進めているので問題ない」


「で、問題はアルサンドの町の奪還だが・・・」


「こちらで何か策でも考えているのか?」


ダグラスの問いには、革命軍のリーダーのライズが答えました。


「いや、それが・・・」

「町の人たちを盾にされているので、どうしてよいのか・・・」


「正直、良い策はまだ見いだせていないのです」


それだけ言うと、ライズは額に手を当て、考え込んでしまいました。


「人質さえなければ、あんな魔物共、一瞬で蹴散らしてやるのですが・・・」


参謀のセルジオスも、悔しそうに言いました。


クロッサムの町の戦いで大敗した魔物共は、町の奪還に来る解放軍に備えて、肉の盾とする人質を取り、町の周辺を厳重に固めて立てこもっているのです。



「わかった!」


「では、俺に良い策があるから、この作戦は俺に任せてくれるか?」


「「「ええ!本当ですか?!!」」」


「町の人の安全を確保しながら、町を奪還できると?」


ライズは驚いて立ち上がりました。


「あぁ、任せておけ!」

「俺は長年、砂漠の町でギルドの冒険者をやって来たからな!」


「砂漠での戦いは得意だぜ!」


「カレンもそれでいいな?」


「あぁ、おやっさんが手助けしてくれるなら、安心して任せられるよ」


「よし!じゃあ早速作戦の準備に入ろう!!」


ダグラスの指示により、全員がアルサンドラ奪還に向けて動き出しました。


それから10日後、カレン達はアルサンドラの近くの森の中にいました。

アルサンドラは砂漠の町ですが、何もない砂漠の真ん中にある訳ではありません。

広大な砂漠の中にあるのは間違いないのですが、町の近くには豊かな森が広がっているのです。


そして町そのものはカルカラッサの町によく似て、大きなオアシスを囲んでたくさんの家が立ち並んでいます。


家の作りは焼きレンガに漆喰を塗った真っ白な家が多く、道路沿いや家の周りには沢山のヤシの木が風に揺れていました。


ガラ、ガラ、ガラ・・・・・


カレン達が待機している場所へ、ダグラスらリヴァーヘイムの者達数人が、手押し車に大きな棺桶の様なものを乗せてやって来ました。


「よぉ!待たせたな!」


「おやっさん、その棺桶は一体なんだい?」


不思議に思ったカレンが、ダグラスに尋ねました。


「棺桶じゃねえよ!こりゃ水槽さ!」


「水槽?なんで水槽なんか・・・」


パカッ!


「「「「「うわっ!!」」」」


水槽の蓋を開けた瞬間、カレン達イレーネファイターズの皆は、驚きの声を上げました。

何と、中には全長2メートルほどある、シャチに似た大きな魚が入っていたからでした。


「おやっさん!森に魚を持って来てどうすんだよ!」


「ワッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」

「こっち、こっち!」


そう言うとすぐ先にあるセノーテへ、カレン達を連れて行きました。


セノーテとは、雨水が地中にしみ込み、地下に大きな水脈が出来た場所で、その上の土が崩れてできた穴に、水がたまったものがセノーテです。


この森にはいくつかのセノーテがありますが、ダグラスは町に一番近いこのセノーテに来ると、一緒に来ていた30代の男に声をかけました。


「デンさん、早速このセノーテを調べてくれないか?」


「おいよ!任せとけ!」


そう言うとデンさんと呼ばれた男は、水槽の中にいたシャチに似た魔物『キラーオルグ』をセノーテに放つと、切り株に腰かけてプカプカとタバコを吸い始めました。


「ギルマス、これはいったい何をしているの?」


さすがのカーナも気になって、ダグラスに尋ねました。


「デンさんはリヴァーヘイムの漁師なんだが、ティマーでもあるんだよ」


「えっ!あの人ティマーなの?」


「そうさ、あの魔物を使役して、海で魚のたくさんいる場所を調べたり、魚の群れを追い込んだりして、漁をやっているのさ」


「へ~~っ・・・」


カーナは感心して話を聞いていましたが、カレンはセノーテを調べる意味が分からず、ダグラスにぼやきました。


「おやっさん、こんな場所で漁をしてどうすんだよ!」


「なんか美味い魚でも獲れるのか?」


「ちがうわい!」


「このセノーテが、アルサンドラのオアシスと繋がっているか調べているんだよ!」


「へっ?オアシス?」


「だから~、チームの中で、泳ぎの得意な奴を捜しておけと言っただろうが!」


「は~~、そういう事ね~」



それからしばらくすると、デンさんが立ち上がってこちらへ来ました。


「ダグラスの旦那!あんたの読み通り、このセノーテはオアシスと繋がっているぜ」


「今から潜るのかい?」


「いや、暗くなってからだな」


そう言うとダグラスは、持ってきた道具を潜入するメンバーに渡しました。

潜入するのは、カレンとキャノンガールズからは、武闘家のポニーとティア。

メアリーはいつも通りステルスモードで潜入し、アリスは金づちのため、今回はパスとなりました。


ムーンライトからは、マウロとマルティー、コローニが潜入し、スターバーストからはリオンが、そしてロックファイターズのスージーが潜入します。

カーナは空から町に潜入するメンバーのサポートをする事になりました。


ダグラスの取り出した道具は、大きなヤシの実のような樹脂で出来た空気のタンクと、タンクの空気を吸うための、口にくわえる長い植物の茎のようなチューブの付いたマスク。

それに水中に生息する魔物の『マーマン』のような水かきの付いた、足に付けるフィンです。


「オレ、なんか魔物になった気分だぜ!」

「がお~~~っ!」


装備を身に着けたカレンが吠えますが、長時間水中で過ごすためには仕方ありません。


日が暮れると、辺りは真っ暗になりました。

キラーオルグの体に青く発光する魔道具と長いロープを取り付け、その灯りとロープを頼りにカレン達はセノーテの中に潜って行きました。


他のメンバー達は、すでにアルサンドラの町の近くに潜み、作戦の実行を待っています。


ブク、ブク、ブク・・・・・。


(真っ暗な水の中って、気持ちわりいな・・・)

(もしも魔物が襲ってきたらどうすんだよ・・・)

(まぁ、軽くプラズマバーストを放てば、問題ないか!)


セノーテに潜って、おおよそ20分ほど経ち、カレンはそんな事を考えていました。

他のメンバー達は・・・。


(言うのを忘れていたけど~)

(カレン様、間違っても水の中で雷撃は使わないでね!)

(あれを使われたら、わたしたち即死だから・・・)


ポニーは心の中で、必死に祈っていました。


(しまった!潜る前にカレンさんに忠告しておくべきだったな・・・」

(プラズマバーストは、絶対に使わないようにって!)

(まぁ、そんなの言わなくても分かるよな?水は電気を通すって・・・)


一抹の不安を感じながらも、大丈夫だと思うマウロでした。

まさかカレンが、プラズマバーストを使う気満々だとはつゆ知らず・・・。


青白い光に照らされた、セノーテの中はとても神秘的な光景でした。

石灰質の壁に光が反射し、まるでどこか別の世界にいるように感じます。

水の透明度が素晴らしく高いため、まるで宇宙空間の中を漂っているような感覚で、つい時間の経つのも忘れてしまいそうになります。


セノーテに潜って40分が過ぎた頃、目的のオアシスに到着しました。


「ぷはぁ~!やっと着いたか!」


水面から顔を出したカレンが、大きく息を吸いました。

その後にポニー、ティア、マウロ、マルティー、コローニ、リオン、スージーが続きます。


(あぁ、生きた心地がしなかったわ・・・)


無事にオアシスに着いたポニーは、ホッと胸を撫でおろしました。


水から上がったカレン達に、先にステルスモードで潜入していたメアリーと、空から潜入したカーナが合流しました。


「カレン様、盾として拘束されている町の人達の居場所が確認出来ました」

「それと言われた通り、町の人たちには一歩も家から出ないよう通達しています」


メアリーがカレンに報告しました。


「やぁ、ご苦労だったな!」


町の人が拘束されている場所は、魔物がアジトにしている町の大きな宿屋の二階の部屋でした。


20名ほどの力の弱い年寄りと子供たちが、カギのかかった部屋に閉じこめられています。


「どうする?」

「あたしが天使の姿に変身したら、気づかれずに侵入できるけど?」


カーナがカレンに尋ねました。


「いや、そんな小細工はいらないよ!」


「人質が別々に分散されていたら、面倒だったけど」

「一か所に集まっているなら、問題ない!」


「カーナの魔法で、オレを二階まで運んでくれれば十分だ!」

「人質の確保は、オレとカーナの二人だけで十分だろ?」


カレンは片目をつむってカーナにウインクをすると、他のメンバー達に指示を出しました。


「他のみんなは町の門を開いて、仲間を引き入れてくれ!」

「後は思う存分暴れてくれていいよ!」


「じゃぁ、作戦開始!」


その言葉を合図に、各自は速やかに行動に移しました。


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