第五話 深い森
アルガの町を目指して飛び立ったフレディアですが、異常がないか周りの様子を見ながら進んでいたので、6日が経ってもまだ目的地には到着出来ずにいました。
「え~~っ、まだ着かないの?」
「そろそろ町が見えてもいいはずなんだけどな~」
目の前の東の空には、そろそろ夕闇が迫ろうとしています。
どこかで野営をしたいのですが、眼下に広がるのは深い森ばかりでした。
「困ったなぁ~」
「どこかに野営の出来る良い場所はないかな?」
もう辺りもだいぶ暗くなって、一つ二つと星の瞬きが増え始めています。
夜のとばりが降りるのも時間の問題となった時、おおよそ1キロメートルほど先の森の中に、チラチラと輝く明るい光が見え始めました。
「あれ?こんな森の中に誰かが住んでいるのかな?」
フレディアが目を凝らして見ていると、明るい光はやがて真っ赤な炎へと変化してゆきます。
「あっ!これってもしかして火事なの?」
フレディアが近づくにつれて、只事ではない事態だと言いう事が分かってきました。
「大変!大変!」
「燃えているのは森じゃなくて、小さな村じゃない!」
「早く行って助けなくちゃ!!」
フレディアが飛行のスピードを上げたその時でした。
ガクン!!
「えっ?」
「なにこれ、身体が重い?」
「えっ?えっ?えっ?」
「これってなに?!」
一瞬のうちに身体の自由を奪われたフレディアは、そのまま一気に地面に向かって落ちて行きました。
「え~~っ!おかしい!おかしい!!」
しかもまるで地面に引っ張られるように、どんどんと加速してゆきます。
「きゃ~~~っ!!」
バキバキバキ!!!
ド~~~ン!!!
「う~~~~ん・・・・」
地面に落下したフレディアは、そのまま意識を失ってしまいました。
・・・・・・・・・・・
ゴ~~~~~ッ・・・・・
バチ バチ バチ・・・・
燃え盛る炎の中から、怪しい影がゆらゆらと出てきました。
それは岩のような灰色の体をした魔物、ガーゴイルです。
「ご主人様、探し物はこれでしょうか?」
ガーゴイルから主人と言われた男は、黒いローブをまとった身の丈2メートルを超える大きな男でした。
顔はフードを被っているため、良く見えません。
男はガーゴイルから純白に光り輝く小さな丸い宝玉を受け取ると、しげしげと見ていましたが、やがてニヤッと笑って言いました。
「うむ、これに間違いない!」
「私の探し求めていたホワイトストーンだ!」
「どこにあったのだ?」
「へい、押しつぶれた里長の屋敷です」
「やはり、そうか・・・」
そう言うと男は1本の杖を顕現させました。
恐ろしいほどの魔力を放つ漆黒の杖には、小さな穴が二つ空いていました。
その片方に手に持った白い宝玉をはめ込むと、杖の魔力はさらに高まり、青白い輝きを放ち始めます。
やがて男は空高く舞い上がると、杖を頭上高く掲げて言いました。
「天地創造の杖よ!お前のもう一つの力の場所を示せ!」
男がそう叫ぶと、白い宝玉から一筋の光が闇に向かって一直線に放たれました。
その光の指す方角は、どうやらロファ王国のようです。
さらに男は、その光に自分の思念を巡らせました。
「むっ!見えたぞ!」
男の思念には薄暗い回廊が映っています。
長い回廊の両脇にはいくつもの大きな柱が立ち並び、その先には何やら巨大な生物が潜んでいるように見えました。
「そうか!やはりヤツにアレを守らせていたのか?!」
男は光に乗せた思念を解くと、ジッと目を閉じて何かを考えています。
その間に男の周りには、大勢の魔物がぞろぞろと集まって来ていました。
なかなか男が命令を下さないので、しびれを切らせた灰色のガーゴイルが、仲間を代表して尋ねました。
「ご主人様、次の探し物の場所が分かったのですか?」
「くっ、くっ、くっ・・・」
「あぁ、分かったとも!!」
「私が思っていた通りの場所だった」
「くっ、くっ、くっ・・・」
「前もっておぜん立てをしておいて正解だったな!」
「よし!出来るだけ大勢の兵を集めろ!」
「行き先はロファ王国の最北端、ヘルパスの地だ!!」
「「「「グオ~~~~ッツ」」」」
チ、チ、チ、チ・・・・
チュン、チュン・・・・
「う~~~~ん・・・・」
「いたたた・・・・」
「あれ、もう朝なの?」
「あっ!わたし落っこちて気を失っていたんだ・・・」
フレディアが落ちて気を失っている間に、とっくに夜が明けていました。
「こうしちゃいられないわ!」
ズキン!
「あいた!」
「うえ~ん!」
「痛くて翼をひろげられないよ~」
落下した時、幸い大きな木の上に落ちたため、地面への直撃は免れたのですが、どうやら翼を傷めてしまったらしく、しばらくの間は飛べそうにありません。
仕方なく翼を休めるために、フレディアは人間の姿に変身すると、トボトボと歩き始めました。




