第四話 パステルのギルド
二階の執務室から現れたのは齢30代前後の小柄な男で、ここの副ギルドマスターのサントスでした。
彼は一階の状況を見たとたん、大慌てで階段を駆け下りて来ました。
ド ド ド ド ド~~~~ッ!!!
まるで転げ落ちるような勢いでフロアに到着すると、ガバッとフレディアの両
手を握り締めました。
「フレディア様~!!!」
「お久しゅうございます~っ!!!」
サントスはこれ以上にないほどの満面の笑みを浮かべ、握り締めたフレディアの両手をブンブンと振っています。
「キャハハ!」
「サントス久しぶり~!」
「「「「えぇ~~~~?!!!」」」
「「「「だれなの?この娘」」」」
ある事情があって、フレディアの事を知っているベテランの冒険者たちはすべて出払っており、いま彼女の事を知っている冒険者はこの場には一人もいませんでした。
騒然とする冒険者たちに向かってサントスは、彼女こそがギルドマスターのカレンと共に、この国を救った四人のSランク冒険者の一人であることを告げました。
「え~~っ!この御方がカレン様の慕っておられた!?」
「す、すごい!まさに伝説級の冒険者様!!」
「た、大変な事になったぞ!!今夜は宴会だ~~!!」
「他の冒険者にも至急知らせろ!!」
こうしてサントスの話を聞いた冒険者たちは大いに興奮し、場内は大変な騒ぎとなりました。
そしてこの騒動の中心にいたもう一人の男レプロは、ポカンと口を開けて、その場にヘナヘナと座り込んでいます。
サントスはゆっくりとレプロの横へ行くと、小声で声をかけました。
「フレディア様は、何を隠そうカレン殿の師匠であらせられる」
「過去にフレディア様をバカにした冒険者が、カレン殿の怒りに触れてとんでもない事になったそうだぞ・・・」
「とにかく失礼のないようにせねば、お前・・・・」
「間違いなくカレン殿に始末されるからな!!!」
「ひ~~~~~っ!!!」
話を聞いたレプロは、ゴキブリのような速さでフレディアの足元まで這って行くと、何度も何度も頭を床に打ち付けながら詫びました。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン・・・・
「どうか、どうかお許しを~~~!!!」
(すごい、この人よっぽどカレンの事が怖いんだぁ~)
(うふっ、この事がカレンにバレなきゃいいけどね!)
「いいよ!」
「もう、変なこと考えちゃダメだよ!」
フレディアはレプロを許してやることにしました。
サントスはその様子を、ニヤニヤしながら見ています。
(くっ、くっ、くっ・・・)
(カレン殿が留守をいいことに、調子に乗っておったからな!)
(これでコイツも少しは懲りただろうて・・・)
執務室に移動したフレディアは、出されたお茶とお菓子を食べながら、サントスからこの町の近況を聞いていました。
「いや~!せめてもう少し早く来てくだされば良かったのに!」
「カレン殿は、事あるごとにフレディア様に会いたいとおっしゃっていましたよ!」
「え~っ!カレンは留守なの?」
「はい、ロファ国王からの呼び出しで、2カ月前に旅立たれました」
「国王からの呼び出しって、何かあったの?」
「はっ、実は・・・」
サントスは、この情報は一部のギルド上層部の者だけしか知らない、トップシークレットであると前置きし、フレディアに話してくれました。
「実は隣のデプロス王国が、我が国に戦争を仕掛けて来そうな雰囲気なのですよ」
「えっ!戦争?」
「はい、戦争です!」
「それで我が国では有事に備え、国境の警備を厳重にしておるのですが・・・」
「そんな折、最北端にあるヘルパス地方で、何やら不穏な動きがあると連絡が入りましてな」
「国境の警備で兵を出せない国王は、カレン殿をリーダーに、各ギルドの精鋭を集めて実態の調査に乗り出したという訳なのです」
「ふ~~ん、そっかぁ~」
「やっぱり、何かあるようなのね・・・」
「と言いますと?」
「うん、わたしも神様の命令で、地上の調査を任されたのよ」
「何と、そうでしたか?!」
「わかった!わたしも旅の準備が出来たら出発するね!」
「よろしくお願いします、フレディア様!」
「必要な物があれば、なんなりとお申し付けくだされ!」
その後パステルの町に5日間滞在したフレディアは、準備を整えてアルガの町に飛び立ちました。




