第四十八話 解放軍の戦い(二)
<主な登場人物>
久しぶりに登場した人物を紹介しておきます。
<セルジオス>護衛隊長 Aランクの剣士 黒い髪に茶色の瞳 髭の似合う大柄な男 武器はバスターソード
<マウロ>ムーンライトのリーダー Aランク剣士 金色の髪に青い瞳 20代後半のがっしりした体格 武器はムーンリットソード
<シラ>Bランク魔法使い 金色の髪に青い瞳の美人 年齢不詳で聞くとしばかれる 特技:炎系魔法『ファイア』『フレイム』
このロファ王国軍の戦闘の様子を、見張り台の上から解放軍のリーダーのライズと、参謀のセルジオスが見ていました。
「いや、ロファ王国は強者揃いだと聞いてはいましたが、このお二人は別格と言うか、メチャクチャですな!」
参謀のAランク冒険者のセルジオスが、呆れた顔で言いました。
「たった二人で魔物の群れを殲滅してしまいそうな、こんな恐ろしい強者のいる国へ自分から戦争を仕掛けるとは、オッサムはあきれたクソ野郎だな!」
ライズは語気に怒りを込めて言いました。
「それにしても、あのお二人は一体何者なのだろう?」
「まさしく、とても人とは思えませんな!」
「まさに戦神という言葉がふさわしい!」
そのライズとセルジオスの疑問に、答える者がいました。
「あの方々は、ロファ王国のSランク冒険者のお二人ですよ!」
「「えっ!」」
驚いて振り返った二人の前には、メアリーが笑顔で立っていました。
「あっ、あなたは昨日の!」
「はい、キャノンガールズ・・・」
「いえ、今はイレーネファイターズのメアリーと申します」
「あのムチを振るっている御方が、私の所属しているギルドのマスター」
「カレン様です」
「そして竜巻を作り出した御方は、カーナ様」
「カーナ様は、風の神様にお仕えする天使様ですわ!」
「な、なんと!その様な方々が、我らのために戦って下さるとは!?」
戦闘に長けたセルジオスは、二人の強さに納得した様子で答えました。
「それでは!そろそろ総攻撃の時間なので!」
「皆様のご武運を、お祈りいたします・・・」
そう言うとメアリーは、一瞬でその場から姿を消しました。
「いやはや、あのメアリーと言う御仁も、相当な手練れですな・・・」
セルジオスはあきれた様子で、消えたメアリーの姿を目で追いました。
「そうだね、本当に頼もしい方々が応援に来てくれたものだ!」
「我々も頑張って、その恩に報いなければ!」
そう言うと、二人は出撃のために見張り台を後にしました。
ちょうどその頃、カーナがマウロに声をかけました。
「そろそろ、頃合いかな?」
「そうですね、少しは敵を残しておかないと・・・」
「俺たちだけでヤッてしまったら、共同作戦の意味がないので」
「じゃぁ、よろしく!」
カーナの同意で、マウロはシラに合図を送るように指示しました。
「よ~し!行こうか!!」
シラのファイアの魔法で打ち上げられた火球を合図に、総攻撃が開始されました。
しかし、既に勝敗は決定づけられているようなもので、あくまで革命軍に協力するという体裁を繕うようなものでした。
総攻撃開始後1時間ほどで敵を殲滅して、決戦は終了しました。
ヘーベル歴251年7月。
イレーネファイターズの協力により、クロッサムの町の自由を取り戻しました。
クロッサムの町に入ったイレーネファイターズは、町の人たちから熱烈な歓迎を受け、その夜は少ない食料や酒を持ち寄って、ささやかな宴が催されました。
翌日イレーネファイターズと、暁の革命軍の会合が行われ、今後の計画を話し合いました。
そこでカレンの出した意見は、まず初めに魔物に占拠されている砂漠の町アルサンドラを奪還することです。
そして次にロファ王国の『リヴァーヘイムの町』と、クロッサムの町の間に武器や兵糧の輸送路を確保する事を提案しました。
とにかく、クロッサムの町の周辺の町や村は、魔物によって自由を奪われているので、食料や戦いに必要な物資を調達する事が難しいのです。
そしてこの物資調達の計画は、すでにロファ王国の方でも着々と準備を進めている事を明かしました。
リヴァーヘイムの町はロファ王国の最南端の町で、海辺の町なので漁業が盛んですが、周辺には山も森もある自然豊かな町のため、林業も農業も盛んで、物資が豊富にそろう活気にあふれた町でした。
リヴァーヘイムの町から国境のレンベルクリバーまでは、東に約80キロメートルの道のりです。
国境を守っていた虫魔王は全滅させたので、あとは国境沿いからデプロス王国の砂漠の町アルサンドラまでの、100キロメートルの間に小さな砦をいくつか築いて行けば、安定した物資の輸送路を築く事が出来るのです。
カレンはこれからの戦いには、この輸送路は必要不可欠である事を説明しました。
このロファ王国からの提案は、革命軍にとってはありがたい申し入れでした。
魔物に占拠されている町や村を解放する戦いは、一朝一夕にできるものではありません。
長期戦になる事は必然なので、最も大切な物は食料と武器、そして医療品などの確保なのです。
今回、魔物による兵糧攻めにあった革命軍は、その重要性を身に染みて思い知りました。
「カレン殿の申し入れ、本当にありがたく存じます!」
「いま我々革命軍に必要な物は、すべてカレン殿の言う通りです」
「是非、我々にご助力を賜りますよう、お願い申し上げます」
リーダーのライズはカレンに対し、深々と頭を下げてお礼を言いました。
「いや、いや!そんな大げさな!」
「オレ達の共通の敵を、力を合わせてぶっ飛ばそうぜ!って言うだけなんだから!」
今回の会議では全面的にカレンの提案が取り入れられ、占領されていた砂漠の町アルサンドラを奪還し、ロファ王国のリヴァーヘイムの町との間に、武器や兵糧の補給路を確保して行く事が決定しました。
「さすがですカレン様!」
「解放軍の方々も、我々の意見に賛同してくれましたね!」
アリスは意見が全面的に受け入れられた事を、とても喜んでカレンに声をかけました。
「あぁ、後はガンガン攻めて、町や村を解放してくだけだぜ!」
カレン自身も、いまの自分なら誰にも負けない自負があり、自信に満ち溢れていました。
ところが、物事がすべて順調に進んで行くと思われた時、思わぬ事態が発生したのです。
「大変です!空が!!」
「空に巨大な光の渦が!!」
見張りの者の叫び声が会議室に響きました。
「「「「何ごとだ!!」」」」
会議室にいた面々は、急いで外に飛び出しました。
見ると上空に、眩い光の渦が発生しています。
「こ、これは?!」
「マラドガードの戦いの時と同じ現象じゃないか!!」
カレンが空を見上げて叫びました。
「大変!これはホワイトホールだわ!」
カーナも驚いて叫びました。
そして全員に注意を促しました。
「みんな気を付けて、この渦からは何が出てくるか分からないわ!」
「最悪の状態に備えて、戦闘の準備を!!」
バリ、バリ、バリ~~~~ッ!!!
ガ、ガ、ガ、ガ~~~~~ン!!!!
物凄い雷鳴が響き、黒い稲妻がカレン達の目の前に落ちました。
その時発生した爆風により、カレンとカーナ以外の者達は吹き飛ばされてしまいました。
シュ~~~ッ・・・・・
地面から黒い霧が立ち込め、やがてその中から純白のペガサスに乗った、何者かが姿を現しました。
漆黒の鎧を身にまとった、身長2メートルを優に超える堂々たる体格をした騎士です。
仮面により顔を見る事は出来ませんが、背中には鎧と同じ漆黒の翼が生えています。
漆黒の騎士は、すぐに何かをするではなく、ゆっくりと周りの状況をうかがっています。
いつものカレンなら、すぐに戦いを仕掛けようとするのですが、あまりの覇気に押されて手を出せずにいます。
カーナもなぜか、迂闊に手を出してはならない気がして、その場で防御態勢を取って見守っています。
しばらくすると、漆黒の騎士がポツリと呟きました。
「たった二人だけか・・・」
「しかも、その内の一人は風の天使だな・・・」
「しかし、この程度では話にならぬ」
「他を当たるとするか・・・」
そう言うと、漆黒の騎士はカレン達に背を向け、立ち去るそぶりを見せました。
「おい!ちょっと待て!!」
業を煮やしたカレンが、漆黒の騎士を呼び止めました。
「お前は何者だ?!」
「ザキュエルの手の者か?!」
カレンの問いに、漆黒の騎士は振り返って答えました。
「だとしたら、どうすると言うのだ?」
「だったら、このまま帰す訳にはいかねえな!」
ピシ~~ッ!!
カレンはムチをしならせて、攻撃態勢を取りました。
「面白い!お手並みを拝見するとしよう」
そう言うと、漆黒の騎士はペガサスから降り、スラリと長剣を抜きました。
「カーナ!みんなを安全な位置まで退避させてくれ!」
そう言うとカレンはムチに雷をまとわせ、激しい攻撃を開始しました。
青白い光を帯びたカレンのムチが、息をつく間もなく漆黒の騎士に振り下ろされます。
ピシ!ピシ!ピシ!・・・・
自在に長さを変化させたムチは、漆黒の騎士のあらゆる場所に攻撃を仕掛けますが、全て剣によって弾かれています。
しかもムチにまとわせた雷のダメージも、全く受けている様子はありません。
(おかしい!こいつには雷撃が効かないのか?)
(ならば、これでどうだ!)
カレンは漆黒の騎士の足元を集中して攻め、注意を下に引きつけておいて、特大の雷撃を頭上に放ちました。
バリ!バリ!バリ~!!
ガガガ~~~ン!!!
シュ~~~ッ・・・・・
地面からは焼け焦げた臭いと、激しい煙が立ち込めています。
「へ、へっ!さすがにこいつをまともに食らえば、ひとたまりも無いだろう」
カレンは、勝ちを確信していました。
なぜなら、今までこの雷撃を食らって無事だった者はいなかったからです。
ところが、巻き上がった煙が消えると、そこには何事も無かったように平然と騎士が立っていました。
「なっ!?」
「そ、そんな、バカな!!」
カレンは自分の目を疑いましたが、漆黒の騎士は平然とカレンに話しかけてきました。
「なるほど、インドラの魔法か・・・」
「だが、そのようなモノは私には効かぬぞ」
「さぁ、どうする?」
漆黒の騎士は楽しそうにカレンに問いかけました。




