表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/65

第四十六話 パステルの町の戦い(四)

太陽が西に傾き始めた頃、戦いは終結しました。

生き残った数隻の船が、ほうほうの体で逃げ帰って行きました。


パステル側は、けが人は多数出ましたが、幸いな事にオリビアとフレディアのおかげで、命を落とす者は一人もいなかったようです。


怪我をした人の処置も一段落ついた頃、ミントの町から急いでやって来たセレノス様が到着しました。


「ありゃ?もう終わったのか?!」


空から見ると、防壁は崩れ落ちているし、戦いがあった事は間違いありません。

しかし、どこにも戦っている様子はありませんでした。


「おっ、あれはフレディアではないか!?」

「何であいつがここにおるのじゃ?」


セレノス様はフレディアの所へ降りると、いつものネコの姿に変身しました。


「こりゃ、フレディア!なぜお前がここにおるのじゃ?」


「あっ、セレノス様!」

「助けに来てくれたのですか?」


「うむ、パステルから赤い狼煙が上がったからのぉ」

「急いで来てみたのじゃが、もう終わっておるではないか」


「キャハハ!そだよ!」

「みんな頑張ったからね!」


「それは良いのじゃが、お前たちはデプロス王国におったのではないのか?」


「あ、それね!」

「オリビアが教えに来てくれたのよ」


「なに?オリビアちゃんが?!」


「あれぇ~、セレノス様とちゃうのん!」

「お久しぶり~」


フレディアが誰かと話していたので、オリビアが様子を見に来ました。


「おぉ!オリビアちゃん!」

「なんでわしの所にも来てくれなかったのじゃ!」

「おかげで出遅れてしまったではないか!」


「ごめん、ごめん!」

「だって、セレノス様って、どこにいるのか分からへんから・・・」


(いや、たぶん、あのモモちゃんって子の店やろけど・・・)


「くう~!残念じゃのぉ~」


二人と一匹が話している所へ、ルナとポンポン、シルヴィーがやって来ました。


「あら!かわいいネコちゃんがいる!」


ネコ大好きのシルヴィーは、急いでセレノス様の所へやって来ました。


「ねぇ、このかわいいネコちゃんどうしたの?」


(な、なんじゃと?!)

(わしの事をかわいいじゃと?!)


!!!


(な、なんじゃと~!メチャクチャ綺麗な女の子ではないか?!)


声の主を見たセレノス様は、すごくうれしそうに、シッポをピンと立てています。

そしてすぐにシルヴィーのそばに寄って行きました。


「ニヤ~~ン!」


「まぁ、かわいい!!」


「あっ!!」


セレノス様の魂胆を素早く見破ったフレディアは、セレノス様を抱っこしようとしたシルヴィーを慌てて止めました。


「シルヴィー!ちょっとタンマ!!」


「えっ?」


「そのネコは実は神様なのよ!」

「だから、気安く触ったらダメなの!」


「まぁ、そうなの?」


シルヴィーは慌てて手を引っ込めました。


「ちっ!」


(おのれ、フレディアのやつ!)

(あと一歩という所で・・・)


セレノス様は、フレディアを苦々しい顔で見ていますが、ネコなので表情は良く分かりません。


フレディアの方は、してやったり!とばかりに、ペロッと舌を出して笑っています。

しかし、セレノス様はまだあきらめてはいませんでした。

何故なら、シルヴィーがまだ抱っこしたそうに、モジモジしているからです。


「あのフレディア様、神様に触ったら罰があたるのでしょうか?」


「!!!」


「うひゃ、ひゃ、ひゃ!」

「そんな事はニャーい!ニャンちゃって!」


セレノス様は、たまらず声に出して言ってしまいました。


「まぁ!しゃべった!本当に神様なのね?!」


「あぁ、でもかわいい~!」


シルヴィーは、セレノス様を見てキュンキュンしています。


(ネコ好きって、本当にどうしょうもないのね・・・)


フレディアは、シルヴィーとセレノス様を見て、ちょっとイラッとしましたが・・・。


(えっ、ちょっと待って!?)

(そうだ!セレノス様って風の神様だわ!)

(そしてシルヴィーは、風の魔法使いじゃない!)

(それなら・・・)


急にフレディアの雰囲気が変わった事に気付いたポンポンが、隣のルナに小声で話しかけました。


「ルナよ、フレディアが何か、悪い顔になっておるぞ・・・」


「うふふ・・・本当ね!」


ポンポンとルナは、お互い顔を見合わせてニヤッと笑いました。


それまでシルヴィーに、セレノス様と距離を置くように言っていたフレディアが、何故か急に手のひらを返したように、今度は容認する発言をしたのです。


「もぉ~、仕方がないなぁ~」

「セレノス様がいいって言うのなら・・・」


(な、なんじゃと!フレディアが触ってもよいじゃと?)


「きゃ~!ありがとうフレディア様~!」


そう言うと、シルヴィーはすぐにセレノス様をギュッと抱きしめました。


(どひゃ~~!!)

(て、て、て、天国じゃ~!!)


セレノス様の幸せそうな顔を見たフレディアは、ニヤッと笑って言いました。


「そうだ、セレノス様!」

「実はシルヴィーは、風の魔法使いなのよ~」

「だから、セレノス様の魔法を、シルヴィーに教えてあげてくんない?」


「ニャ、ニャンじゃと?!」


「しかし、それはだな、やってはいかん・・・」


「まぁ、セレノス様が私に!?」

「うれしぃ~!!」


ギュッ!


「はうっ!!」


セレノス様の理性がぶっ飛ぶのを確信したフレディアは、一気に畳みかけました。


「そうだ!カナちゃんの使う『おくびょう風』がいいわ!」

「これから、危ないダンジョンに入る事が増えるから!」


「シルヴィーからも、お願いしたら?」


「おねがい、セレノス様~」


ギュ~ッ!


「うひゃ~!ま、まかせるのじゃ~!」


ガクッ!


どうやらセレノス様は、理性がぶっ飛んだと同時に失神してしまったようです。


「死んだか?」


「それにしても、チョロい神様じゃのう」


ポンポンが近づいて確認しています。



シルヴィーがセレノス様から授けてもらった『おくびょう風』とは、ダンジョンや遺跡などの迷宮から地上へ脱出する、エスケープの魔法です。


神さま直伝の魔法なので、普通のエスケープとは違い、どのような状況でもほぼ確実に脱出する事が可能になる、とても優れた魔法でした。


「やったね!シルヴィー!」


「すごい魔法を頂いちゃった~!!」


フレディア達が大喜びしている横で、セレノス様はドヨドヨしていました。


(くう~!またやらかしてしまった・・・)

(この事がカーナに知られたら、わしの師匠としての立場が・・・)


「あの・・・フレディアよ」

「この事はカーナには内緒にしてくれぬか?」


「えっ、話してはダメなの?」


「う、うむ!ドラゴンのタマゴでも失敗しておるのでな・・・」

「ちょっと、不味いのじゃ」


「あっ!そうだ!」

「カレン達は、今頃どうしているのかしら?」


「そうねぇ、カーナの事も、ドラゴンのタマゴも気になりますわね~」


フレディアとルナも、カーナとカレン達の事が気になるようです。

またシルヴィーも、一緒にロファ王国へ助けを求めてやって来た仲間の事を思い出していました。


(フレディア様の仲間の人が、きっとお兄様たちを助けてくれるわよね!)

(だって、こんなにも強い人たちの仲間なのですもの!)


シルヴィーは目を閉じて、仲間の無事を祈りました。


その傍らでは、そんな事よりも、自分もシルヴィーみたいに魔法をもらおうと画策している子がいます・・・。


「これ、ネコの神様!」

「わしにも、何か授けてくれても良いのじゃぞ?」


「むちゃ言うでない!」


話を切り出すタイミングと、ポンポンにはまだ少し大人の魅力が足りなかったようで、そっけなく断られてしまいました。


ムスッ・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ